世界税制改革の新潮流 公平から効率へ. 「公平」から「効率」重視の税制 改革へ 北欧二元的所得税 オランダーボックス・タックス ドイツ税制改革 ブッシュ税制改革諮問委員会提言 副題は「簡素・公平・経済成長促進」 正確には、より公平な税制を求めての効率課税へ 背景には、経済成長志向の税制として、「所得課税」から.

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第8章 貯蓄,投資と金融システ ム 1.アメリカ経済における金融機関と市場 ( ↑ 日本経済でもほぼ同じ) 金融システムは、ある人の貯蓄と別の人の投資 を結びつける。投資の例として、 起業のための設備投資 住宅を購入する 金融システムは、金融市場と金融仲介機関の2 つのカテゴリーに分けられる 1 8.
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10章第4節. 法人の形態をとる企業は、その課税所得に対して 法人税、住民税、事業税という 3 種類の税金が課 される。 課税所得の金額は損益計算書の当期純利益を基礎 とし、税法特有の調整項目を加算・減算したもの。 決算日から2カ月以内に課税所得と税額の計算を 記載した確定申告書を税務署長あてに提出し、税.
所得に対する課税 財政学(財政学B) 第 3 回 畑農鋭矢 1. 所得とは? ヘイグ=サイモンズの所得の定義 所得=消費+資産の純増(貯蓄) 所得に含まれるべきもの 自家消費:農家の農産物消費、 専業主婦の家事 帰属家賃:持ち家のサービス(自分への家 賃) キャピタル・ゲイン:資産の値上がり分.
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所得に対する課税 財政学B(財政学) 第 3 回 畑農鋭矢 1. 所得とは? ヘイグ=サイモンズの所得の定義 所得=消費+資産の純増(貯蓄) 所得に含まれるべきもの 自家消費:農家の農産物消費、 専業主婦の家事 帰属家賃:持ち家のサービス(自分への家 賃) キャピタル・ゲイン:資産の値上がり分.
1 財政-第 9 講 4. 租税理論と税制改革 (3) 2008 年 5 月 13 日 第 1 限.
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『非製造業を中心とした生産性向上促進施策』 ~労働力不足の時代を迎えて~
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京都・神戸のみならず国内外拠点との差別化が難しい
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現代の経済学B 橘木俊詔「ライフサイクルの経済学」第3回 第5章 消費と貯蓄 第6章 引退後の生活 京大 経済学研究科 依田高典.
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法人に対する課税 財政学B(財政学) 第4回 畑農鋭矢.
入門B・ミクロ基礎 (第7回) 第4章続き 2014年12月1日 2014/12/01.
東京財団上席研究員 中央大学法科大学院教授 森信茂樹
法人税引き下げの是非 否定派 工藤・山下・神谷・蔵内.
貯蓄税導入の是非 ~否定派~ 松村・田邉・川村・藤山.
生産性向上設備投資促進税制の対象(全体像)
企業年金を取り巻く企業・労働者の行動と公共政策のあり方
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租税の基礎理論 財政学B(財政学) 第2回 畑農鋭矢.
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新聞記事・雑誌記事 AERA 2016年1月18日版   「シンガポールの「和僑」たち」.
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財政-第12講 4.租税理論と税制改革(6) 2008年5月20日 第2限
財政-第10講 4.租税理論と税制改革(4) 2008年5月13日 第2限
NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク 理事長代理 税理士 脇坂誠也
経済学-第3回 租税体系 2008年4月25日.
事業法人分析 九州大学ビジネススクール 村藤 功 2014年10月22日.
ミクロ経済学I 13 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2017年7月5日
ミクロ経済学I 11 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2018年7月4日
公共経済学 23. 法人所得課税.
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世界税制改革の新潮流 公平から効率へ

「公平」から「効率」重視の税制 改革へ 北欧二元的所得税 オランダーボックス・タックス ドイツ税制改革 ブッシュ税制改革諮問委員会提言 副題は「簡素・公平・経済成長促進」 正確には、より公平な税制を求めての効率課税へ 背景には、経済成長志向の税制として、「所得課税」から 「消費課税」へという流れがある

先進国の税制の新潮流 北欧二元的所得税 資本所得と勤労所得を分けて別の税体系で課 税 オランダーボックス・タックス 同上(みなし利益率4%に30%課税) ドイツ税制改革 利子・配当・キャピタル・ゲインは25%の 源泉分離課税(2009年より) ブッシュ税制改革諮問委員会提言 第1案ー配当非課税、キャピタル・ゲイン4 分の1課 税、利子総合課税 第2案ー配当・キャピタル・ゲイン・利子1 5%課税 ロシア・東欧諸国の税制改革

二元的所得税 ー S.Cnossen,”Dual Income Tax”(1997) に基づく概念図ー 比例税率適用 =勤労所得の最低税率 =法人税率 累進税率 適用 資本所得 勤労所得 すべての所得を2種に区分 利子、配当、株・土地等 のキャピタルゲイン、家 賃、事業収益(投資収益 的部分)等 賃金、給与、フリンジベネ フィット社会保障給付、事業収 益(賃金 報酬的部分)等 (政府税制調査会資料を加 工) 税率

OECD, ”Tax and the Economy: A Comparative Assessment of OECD Countries” (200 1) (抜粋) 二元的所得税は、一方で公平への配慮と歳入の必要性、また他方で効率性と 中立性のバランスをることを意図している。資本所得はより上位の所得ブラ ケットに集中する傾向があるため、二元的所得税は、水平的公平と垂直的公 平の双方の目的と相容れないかもしれない。しかし、利払い(例: モーゲー ジローン利息)は、包括的所得税においては、通常、最高限界税率に対して 控除されるが、二元的所得税においては、(低い)資本所得税率に対して控 除される。結果として、実質的には、二元的所得税は、包括的所得税と同様 に公平であるかもしれない。また、資本は国際的により流動的で、その供給 はより弾力的であり、実質収益はインフレにより敏感であることから、労働 と異なり資本により低い税率を適用することは効率性にも資する。さらに、 比例税率は、特に課税が重い場合には、包括的所得税につきものの現在と将 来の消費の選択に関する歪みを減少させ、また、異なる源泉の資本所得間の 課税の中立性を高める。二元的所得税の効率性の主な欠点は、(自営業と小 規模法人事業の場合に最もその傾向があるが)勤労所得を資本所得に転換す るインセンティブを生み出すことである。北欧諸国は、二元的所得税のもと で比較的うまくやっているようである。・・二元的所得税は、税制の全体的 な歪みを減少させながら、純粋な包括的所得税と消費支出課税との間の現実 的な中間的方策として機能してきた。

ドイツの税制改革 政府税制調査会資料

ドイツの税制改革 政府税制調査会資料

ドイツの税制改革 政府税制調査会資料

オランダの税制改革 政府税制調査会資料

米国税制改革案の比較 第1案ー簡素な所得税制案第2案ー成長及び投資税制案 家計 税率15、25、30、33%15,25,30% 受取り配当非課税15%で課税 株式譲渡益4分の1だけ総合課税15%で課税 受取利子総合課税15%で課税 (注)1案も2案も、税率構造を簡素化、代替ミニマム税を廃止、住宅ローン利子控除、慈善寄附金控除 等の各種項目別控除については、整理・縮減。人的控除(基礎控除、扶養控除に類似)、概算控除、勤労 所得税額控除、子女税額控除等の各種控除を家族税額控除と就労税額控除の2制度に統合。 法人 税率 事業体への課税 31.5% 大規模企業は、組織形態に関 わらず法人課税 30% あらゆる事業体について同等に 課税 投資簡素な加速度償却即時損金算入 支払利子現行どおり金融機関以外控除できず 受取利子現行どおり金融機関以外非課税 国際課税外国所得非課税仕向け地課税(国境調整)

背景 包括的所得税の問題点が浮き彫りになってきた こと(課税ベースの狭さ、税制の複雑さ、足の 速い所得の問題等) とりわけ二重課税の問題が、貯蓄・資本不足の もとでクローズアップされてきたこと(イン ピュテーションの脱落等) 代わりの税制として、消費課税の分野において、 選択肢が出てきたこと フラットタックス、 X タックス、二元的所得 税(金融・資本所得を分離して軽課)、小売売 上税、 VAT 、 IRA

消費課税 消費(C) (1) = [ 所得(Y)-貯蓄(S) ] (2) = [ 賃金(W)+利子(R)+利潤(P) +減価償却(D)-設備投資(I) ] (3) (1) VAT・消費税 (2) 支出税 ( 直接税) (3) 加算型付加価値税、フラットタックス I の控除を認めず D のみの場合には所得型にな るー CBIT 、 BOX ・ TAX 、変形二元的所得税

所得課税から消費課税への流れ 消極的理由ー 顕在化する包括的所得税の問題点 -優遇措置による課税ベースの縮小 -税制の複雑化 ー利子控除と償却をセットにした租税回避 ー二重課税による経済のゆがみ ーキャピタルゲインへの課税の難しさ(実現・認識) ー間接金融と直接金融との非中立のもたらす諸問題 積極的理由ー簡素化と経済効率 ー税制の簡素化(納税者利便と執行面での簡素性) ー貯蓄インセンティブの向上(ただし、所得効果と代替効果) ー二重課税の排除 ( 利子所得、配当所得) ー間接金融と直接金融との中立 ( 借入金利子控除の問題がなくなる) ー投資の即時損金算入による投資促進効果 ー償却と利子控除を組み合わせた租税回避の排除 ーライフサイクルにおける負担の平準化