経済予測入門Ⅰ 第1回 2006年4月15日 内容 (1)経済予測とは? (2)経済予測の目的、意義 (3)経済予測の具体例
(1)経済予測とは? ・ そもそも予測(FORECASTING)とは? 予想、予言、予報、・・・・・・ 予想、予言、予報、・・・・・・ foresee, foretell, prophesy, predict,……. ・ 将来に関する言明。 将来に関する質問に対する回答。しかし、例えば、 「2007年8月25日は土曜日である。」は、 予測か?
(1)経済予測とは(続き) ・ ビジネスや経済に関する予測の具体例 (1)新製品の売れ行きは? (企業) ・ ビジネスや経済に関する予測の具体例 (1)新製品の売れ行きは? (企業) (2)ライバル企業の戦略は?(企業) (3)この会社の株価は上がるのか?(投資家) (4)新たに建設する有料道路の利用者は? (道路公団) (5)どれだけ消費税を上げれば、財政破綻は 防げるのか?(政府)
(1)経済予測とは(続き) 予測の種類 (1)将来の出来事(ほぼ確実に起きること)の結果について? 生まれてくる子は女の子?男の子? 生まれてくる子は女の子?男の子? 9月に決まる次の自民党総裁は? 経済予測入門Ⅰの自分の成績は? (2)ある出来事が将来起きるとして、それはいつか? 南関東大地震はいつ発生するのか? 次の衆議院選挙はいつか? (3)時間とともに変化していく値(時系列データ)の将来の値? 経済予測の多くはこの種類の予測
(1)経済予測とは(続き) ・ 予測はすべて前提条件付予測である。 ・ 予測はすべて前提条件付予測である。 将来人口推計の場合、前提は合計特殊出生率。(低位推計、中位推計、高位推計) ・ 予測する対象によって、予測精度は異なる。 一般には遠い将来の予測ほど難しい。 ただし、 難:1ヵ月後の株価 易:1年後の人口
将来人口推計(国立社会保障・人口問題研究所)
日経平均株価(日本経済新聞社)
(1)経済予測とは(続き) 予測の公表が、人々の行動に影響を与えて、予測を公表しない場合との状況の違いが生じることがある。これは、自然現象には当てはまらない。 ・雨が降るという予測→傘をもって外出、それで雨が降る確率が変わるわけではない。 ・ある会社の株価上がるという予測→みんながその株を買う→実際に株価が上がる。 (自己実現的予測) ・選挙のときのアナウンスメント効果
(1)経済予測とは(続き) 予測の公表が、人々の行動に影響を与えて、予測を公表しない場合との状況の違いが生じることがある。これは、自然現象には当てはまらない。 ・雨が降るという予測→傘をもって外出、それで雨が降る確率が変わるわけではない。 ・ある会社の株価上がるという予測→みんながその株を買う→実際に株価が上がる。 (自己実現的予測) ・選挙のときのアナウンスメント効果
(2)予測の意義・目的 ・ 意思決定のための判断材料を提供すること。 自分で予測して、自分で利用 -企業の需要予測 ・ 意思決定のための判断材料を提供すること。 自分で予測して、自分で利用 -企業の需要予測 他の人(機関)の予測を利用 -天気予報(降水確率をみて傘を もっていくかどうか決める) 無料の場合も有料の場合もある。
民間調査機関2006年度経済見通し ・ 経済成長率 平均 2.6% 最大 3.3% 最小 2.0% ・ 消費者物価上昇率 ・ 経済成長率 平均 2.6% 最大 3.3% 最小 2.0% ・ 消費者物価上昇率 平均 0.4% 最大 0.9% 最小 0.1% ・ 対ドル円レート 平均112.7円、最大123円、最小100円 (日本経済研究センター会報2006年4月号)
同じデータを使ってもなぜ予測が異なるのか? ・ 手法の違い マクロ計量経済モデル、時系列モデル、 アンケート調査、ヒアリング ・ 前提条件の違い 海外経済の動向、政府の政策などに関する 見方が異なる。
需要予測が正確に行われないと? 一般有料道路 収入計画(億円) 実績(億円) 京滋バイパス 393 67 新湘南バイパス 98 22 収入計画(億円) 実績(億円) 京滋バイパス 393 67 新湘南バイパス 98 22 湖西道路 109 25 西九州自動車道路 78 23 富津館山道路 16 5 新利根川橋 36 11 京奈阪自動車道路 126 41 東京湾アクアライン 不明 143 「一般有料道料金収入8割が計画倒れ」日本経済新聞2002年8月16日
財政再建:フォワード・ルッキングモデルによるシミュレーション分析 (3)経済予測の具体例 財政再建:フォワード・ルッキングモデルによるシミュレーション分析 明治大学商学部 千田亮吉 目的(1):財政再建のために必要な消費税率 引き上げ幅 目的(2):インフレ率の影響
予測の手法、前提条件など マクロ計量経済モデル(方程式数135本) 予測期間 1998年-2025年 主な前提条件 予測期間 1998年-2025年 主な前提条件 1 人口変数については厚生労働省・人口問題研究所の中位推計を そのまま用いた。 2 1人当たり実質政府消費は1999年から2006年まではそれ以前の 伸び率で延長し、2007年以降は年率1%で減少させた。1人当たり 公的資本形成は2003年までは実績値、その後は一定とした。 3 年金保険料は厚生労働省による1999年の年金再計算の値を用 いた。 4 法人税、事業税、法人住民税の税率は1998年以降一定とした。 5 個人所得税の税率は1998年以降一定とした。 6 マネーサプライ成長率は2006年までは0%、その後は1.0%とした。
経済財政諮問会議の論点 名目成長率を高めに誘導することで国民の負担増を軽減することはできるのか。 名目成長率と名目利子率の関係について、どのような想定を置くべきか。
前提条件:政府消費(左)と政府投資(右)
実質GDP(GDP90)と潜在GDP(GDP90P)(左) 名目成長率(GDP)と名目利子率(IRT)
消費税率(TRATECON)とプライマリーバランス(-TADD)
シミュレーション:マネーサプライ増加率の引き上げ インフレ率の変化と必要な消費税率の変化
シミュレーション:マネーサプライ増加率の引き上げ 政府支出の変化(左:政府消費、右:政府投資)
シミュレーション:マネーサプライ増加率の引き上げ 税収の変化(左:直接税、右:間接税)
シミュレーション:マネーサプライ増加率の引き上げ 政府の社会保障給付(左)と家計の社会保障負担(右)の変化
シミュレーション結果 名目成長率を高めることで、プライマリーバランスの赤字解消に必要な消費税率を引き下げることができる。 名目成長率を高めることで、プライマリーバランスの赤字解消に必要な消費税率を引き下げることができる。 インフレ率1%上昇で消費税率1%低下。