物理学会大会の物性領域発表に関する改革 2006年秋の大会(千葉大)でのアンケート結果をめぐって 鹿児島誠一(東大・総合)
アンケート調査の目的:領域制が発足以来7年の間,本質的な見直しはなされていないので,物性関係の領域制を中心として大会開催法に関する会員の意見を聞くこと。 回答数:953 年齢構成:71%は年齢40歳代までの人 結果を一言で言えば:まずまず満足度が高い。注目すべきは50歳代の回答であり,他の年齢層に比べて満足度が低い。
回答者の年齢構成と領域分布
(1) 大会の開催方式に満足していますか? ア. 満足している。 イ. 満足していない。 ウ. どちらとも言えない 全体 50歳代
(2) 現在の開催方式に改善すべき点があるでしょうか(複数回答可) ア.領域の数および切り分け方を見直すべきである。 イ. 現行の分野名称,キーワードでは自分に適した領域を見つけがたい。あるいは,同じテーマの講演が複数の領域に分散して不都合である。 ウ. 年次大会と春季・秋季大会の違いを出すべきである。 エ. 分野をまたがるシンポジウム等を積極的に採り入れるべきである。 オ. 一般講演の場を確保するためにシンポジウム等を極力減らすべきである。 カ.必要を感じていない。. キ. その他 全体 50歳代
(3) 現在,物性関係の領域は番号で分類されていますが,そのことについてどう思われますか ア. これでよい。 イ. 適切な名前をつけるのが望ましいが,その中に複数の分野が含まれているので仕方がない。 ウ. 実態に即した名称をつけるべきである。 全体 50歳代
(5) 全領域が参加できるレビューセッションについてどう思われますか。 ア.よいと思う イ.結構だと思うが全分野の聴衆が入れる会場がない。 ウ.このような企画を行うことで一般セッションにしわ寄せが来る。 エ.領域の数だけ講演数を確保するのは難しいので,講演しない領域がでてくる。 オ.領域の面子をかけた講演になるので講演者に負担になる。 全体 20歳代
(7) 他の学会ではオーガナイズドセッションを多数設けています。 物理学会について、オーガナイズドセッションが必要かどうかについて伺います。 (7) 他の学会ではオーガナイズドセッションを多数設けています。 物理学会について、オーガナイズドセッションが必要かどうかについて伺います。 ア.オーガナイズドセッションを積極的に取り入れるべきである。 イ.シンポジウムがオーガナイズドセッションに対応しているから現状でいい ウ.オーガナイズドセッションはオーガナイザーの負担が大きく,よくない制度である。それをせずとも講演が集まる物理学会はすばらしい。 エ.オーガナイズドセッションが多くなると一般講演の質が低下し,一般の会員の発表意欲も減退するのでよくない。 全体 20歳台 50歳台
まとめ (1)シンポジウムについて:シンポジウムは肯定的に捉えられているが,個別意見としては,テーマ決定が安易であることに対する批判もある。 (2)領域制について:50歳代の反応は目立っており,現状の番号制ではなく適当な名称をつけることを希望する意見が多い。数としては多くはないが,キーワード設定,重複などに関する不満は挙げられている。 (3)領域合同運営について:概ね合同運営に肯定的である。また合同シンポジウム等を通して実際に合同運営ができているという回答も多い。しかし,実際に運営上の難しさを認識している人も少なからずいる。50歳代はここでも反応が違う。肯定的意見が少なくなり,領域制の趣旨に反するという意見が増加している。 (4)領域レビューセッションについて:概ね好意的に受け取られている。同時に会場の問題を挙げている人が少なからずいる。この設問では20歳代の期待感の高さが目立つ。 (5)オーガナイズドセッションについて:これが何であるかが理解されなかったようである。肯定的意見はあるが,同時にシンポジウムがそれに対応しているから現状でよい,一般講演の質が下がるという懸念の指摘もある。
補足 今回のアンケートの結果、概ね現状の学会に満足している保守的な参加者像が浮かび上がってくる。しかし,50歳代の反応は特異的であり,学会参加者の平均的意見と異なっている。現実の多数派参加者の希望を満たすことと,先導性,指導性を発揮することとのバランス感覚が求められよう。 従来から,成果発表会が多すぎるという感想の一方で,大学院生の訓練の場であり,インセンティブを高めるためにも必要という意見もある。 従来型大会を年1回とし,もう1回は大胆に変更すべきという意見も以前からあるが,具体的動きにはなっていない。 理事会主導というよりは,研究者グループ主導が望ましい。