歳出歳入一体改革の課題 ~財政責任法とCFO法の導入~ 2006年4月 行財政構造改革フォーラム
財政政策の立案・実施・結果 1.90年代の財政政策 OECD主要国 VS. 日本 財政ルール・目標の導入と 景気対策と財政再建の間 予算マネジメントの改革が 進展し、財政健全化 景気対策と財政再建の間 を揺れ動いた G7諸国中、最良の財政 から最悪の財政へ
2.2000年代前半における明暗 一般政府/財政収支 (% of GDP) OECD(2003)”Economic Outlook”No.74
財政赤字 3.財政赤字の政治経済学 ○財務大臣と支出大臣の関係が 「階層的」ではなく「並列的」 ○予算編成の制約条件がない 90年代に入り、予算編成プロセスと財政赤字の関係を明らかにする 実証的な研究が進展 ~ von Hagen(1992), Alesina and Perotti(1996) etc ○財務大臣と支出大臣の関係が 「階層的」ではなく「並列的」 ○予算編成の制約条件がない ○予算編成の透明性が低い ○議会で予算修正が可能 ○単独政権よりは連立政権 ・ 財政赤字
×増分(減分)主義 ×インプット・コントロール 4.予算のアウトカム <予算を巡る環境の変化> ×増分(減分)主義 ×インプット・コントロール 1.総額(特に歳出)のコントロール → 共有資源問題、財政錯覚 → ? 2.戦略的な資源配分 → 情報の非対称性、高い取引コスト→ ? 3.政府サービスの効率的な供給 → 情報の非対称性、インセンティブの不一致→?
※予算のアウトカムはAllen Schick(1997)より引用 5.予算プロセスの改革 ①中期財政フレーム (複数年度予算) ②財政ルール・目標 ③意思決定の集権化 総額のコントロール ①戦略計画 ②中期財政フレーム (複数年度予算) ③政策評価・業績予算 戦略的な資源配分 ①購入者と供給者の分離 ②予算統制の弾力化 ③民間類似の財務・会計 政府サービスの効率的な供給 ※予算のアウトカムはAllen Schick(1997)より引用
(参考1)スウェーデンのフレーム予算 歳出 総額 27の 主要歳出分野 496の議決予算 第1段階(春) 第2段階(秋) シーリング ①財務省が3ヶ年のフレーム予算案作成 トップダウン 歳出 総額 ②閣議で歳出総額、27主要歳出分野の 上限額決定(3ヶ年分) (3ヶ年分) ③議会で財政政策を審議し歳出総額議決 ターゲット 27の 主要歳出分野 第2段階(秋) (3ヶ年分) ④省庁は②を踏まえ議決予算案作成 外交、医療、雇用 等 ⑤閣議で翌年度の主要歳出分野上限額、 議決予算を盛り込んだ最終予算案決定 496の議決予算 (単年分) ⑥予算委員会で上限額を審議し議決 省庁・エージェンシーの運営費 移転支出、資本支出 等 ⑦各委員会で議決予算を審議し議決
(参考2)NZの財政責任法(1994) 責任ある財政運営の5原則 透明性、説明責任の向上 1.政府債務を賢明な水準に引き下げること 透明性、説明責任の向上 1.政府債務を賢明な水準に引き下げること 2.1が達成された後は、一定期間を通じて 平均的に歳出が歳入を超えないようにし、 政府債務を賢明な水準に維持すること 3.将来の不測の事態に対するバッファーと なるように政府の純資産を維持すること 4.政府の財務に関するリスクを慎重に管理 すること 5.税率の水準と安定性について十分に予測 可能であるように政策を立案・遂行すること 1.予算政策書 ・予算案提出の3ヶ月前に発表 ・予算案審議に先立って議会は財政政策の基本方針 を審議 ・向こう3年間の財政運営のねらいと長期的な財政目標 ・予算案の戦略的な優先事項 2.財政戦略レポート ・予算案と同時に発表 ・向こう10年間の歳入歳出、収支、債務等 3.経済・財政見通し ・予算案提出時、年央、選挙前に発表 ・向こう3年間の主要経済指標、財務諸表 ※時の政府は、5原則を踏まえ、財政運営の具体的な目標を設定しなければならない(「予算政策書」で) ※政府が原則から乖離した政策を一時的にとる場合、財務大臣は、そうした政策をとる理由、原則に戻るた めの方法とそれに要する時間を明らかにしなければならない
(参考3)オーストラリアの予算編成プロセス 11月 翌年度予算の大枠と重点の決定(上級大臣会合) 1~2月 省庁の予算要求 ①12月の経済財政見通しの年央改定(最新の情報) ②新規要求の将来見通し(4年)への影響分析 (新規要求は原則スクラップ・アンド・ビルド) ③予算省によるスクリーニング 3月 閣内の歳出検討委員会で省庁の要求査定 4月~ 政府予算案を閣議決定し、議会での審議へ 7月 新年度開始
(参考4)大臣とCEの関係(NPMモデル) 大 臣 事前目標 事後検証 ①達成すべき目標の 明確化 (中期・年次計画書) アカウンタビリティ ④業績・成果の報告 (政策評価・財務諸表等) ②予算、人事等のインプ ットに関する裁量 (運営費一括予算、 繰越・前借可能等) 省庁・エージェンシーのCE ③インセンティブ (報酬等) ○公募採用 ○任期制(5年程度)
(参考5)外部委託に関するガイドライン 1.幹部の積極的リーダーシップと組織のリエンジニアリングが必要である 2.職員との相談や意思疎通が必要である 3.アウトカム又はアウトプットによって必要なサービスを定義する (受託者にとっての運用の弾力性を確保、インセンティブを付与) 4.パフォーマンスをモニターし、協調関係を維持する 5.正当な比較を行う(コスト、アウトカム、アウトプット、質、リスク等) 6.政府による直接供給も選択肢の1つとして正しく評価する (コストは第3者機関に評価させる必要) 7.競争的な市場の育成を図る(契約の範囲と期間が重要な要素) 8.政府職員の技能を高める 出典:OECD PUMA(1997) “Best Practice Guidelines for Contracting Out Government Services”
1.権限が分散化した意志決定システム 2.予算の一般会計、当初、単年度主義 6.我が国の予算マネジメントの問題 ①補正予算の多用 ②不明瞭な財政政策のマクロ経済上のスタンス ③後年度への負担転嫁や会計上の操作 ④シーリング方式の限界 ⑤施策の事後評価の不足 ⑥財務・会計の軽視
7.改革の処方箋 1.マクロ財政の問題(アウトカム①②) 財政責任法 2.ミクロ財政の問題(アウトカム②③) CFO法
8.財政責任法のポイント 1.政府のコミットメント(財政目標の設定) 2.議会・国民へのアカウンタビリティ 3.一般政府or政府部門のカバレッジ 4.中長期の財政見通し(予測BS) 5.財政ルール・目標の遵守状況の検証
9.CFO法のポイント 1.省庁・独法等の最高財務責任者 2.トップ及び現場への財務会計上の助言 3.広範な財務会計業務(業績管理、財務 諸表、コスト管理、調達・契約、内部監査、 内部統制、予算管理、現金管理 等) 4.年次計画書・年次報告書への署名
予算マネジメントの改革によって 政府のガバナンスを確立 10.全体のまとめ 少子高齢化への対応 ①持続的な経済成長 、生産性向上 少子高齢化への対応 ①持続的な経済成長 、生産性向上 ②財政の持続可能性 ③世代間の負担の公平性 予算マネジメントの改革によって 政府のガバナンスを確立