アンケートの対象設定・実施・データの分析について 大学院 「研究方法論」 特別講義 2007年1月3日 (水・星期3) 論文の作成と手順 アンケートの対象設定・実施・データの分析について 神作晋一 kansaku shin’ichi
本発表の構成 1 発表決定・構想 2 調査・アンケート収集 3 集計・分析・考察 4 発表論文作成 5 発表時のプレゼンテーション 1 発表決定・構想 2 調査・アンケート収集 3 集計・分析・考察 4 発表論文作成 5 発表時のプレゼンテーション 6 フィードバックと反省と
1.発表決定・構想
論文発表までの経緯 2005年9月、南台科技大學應用日語系助理教授として着任。 直後、系主任から2005年シンポジウムでの論文発表を打診される。 この時点では(発表に堪えるものを作る)見通しはあったが、具体的には方針が決まっていなかった。
論文発表までの経緯 開催は12月初旬 ⇒ 3ヶ月 論文原稿提出 ⇒ 2~2ヶ月半 短期間で仕上げる必要性がある。
テーマとしてなにを選ぶか これまで自分がやってきたテーマの応用 ⇒「送り仮名」表記について 内閣告示「送り仮名の付け方」の解説 今回のシンポジウムのテーマに合い、台湾のaudience(聴衆)に受け入れやすいもの。 ⇒(日本語)学習者に分かりやすい送り仮名の指導法を伝達・導入すること
テーマの決定 一応、決まった 「送り仮名」表記の問題点と指導法 内閣告示「送り仮名の付け方」を説明 (発表)時間が限られているので、通則の1と2だけ。 一応、決まった
①通則1と2を概説するだけでは、重鎮の先生による講演と変わらない。 しかし、問題がある ①通則1と2を概説するだけでは、重鎮の先生による講演と変わらない。 ⇒若年の研究者がやることではない ②現実に現場で起こっている問題との関連が見えにくい。
問題点を解消するには 実際に学習者にアンケートを取ることで (教える側にも)問題点を実感してもらう 学生の送り仮名意識の実態調査を行い
先行研究の整理 とにかく時間がない。今回は今まで取り組んできたテーマであったので、あえて特定のものを選択することにした。 先行研究選択の基準 「送り仮名の付け方」を解説したもの。 送り仮名の法則にもとづき、実際の調査をしたもの。(日本語教育では見当たらず、国語教育の分野でいくつかあった。)
2.調査・アンケート収集
アンケートの実施 1.調査対象の決定 今回は、台湾の学習者に対する送り仮名の指導法を模索するので、対象は「台湾の学習者」、そして現実に今直面している現場で教えている学習者を対象とする。 (おそらく聴衆も同じ大学生を対象に日本語を教えている教員あるいは予備軍とおもわれるため。) また、時間の関係で、神作が担当する授業の学生のみに絞ることにした。
アンケートの実施 しかし、一口に学習者といってもバックボーンbackboneはさまざま。 今回は、①学習年数と、②日本語能力検定試験の合格級を設定した。 (なお、対象を担当する授業の学生のみに絞ったため、①と②の属性はすでに調査済みであった。)
アンケートの実施 2.調査項目の決定 今回は、「付け方」の通則1と2にある語を中心に、よく問題となるであろうと考えるものを選んだ。時間的制約や学生の負担等も考え、調査項目はあらかじめ絞っておいた。 もうひとつ理由がある。
アンケートの実施 実は、この調査に先行すること3ヶ月ほど前、日本人相手に調査を行っていた。 ①日本國學院大學文学部文学科3~4年生 22名 ①日本國學院大學文学部文学科3~4年生 22名 ②日本明海大学外国語学部1~4年生(留学生含む)31名
アンケートの実施 先行する調査項目を同じにすることで、「日本人学生と台湾人学習者の比較」が可能になる。 調査項目の決定 これはたとえば、先行論文と同じ調査項目を行うことで調査結果の比較・考察がしやすい、ということにもなる。
アンケートの実施 調査Ⅰについて 調査Ⅰでは5つの項目について調査・考察した。 1.おこなう(行)2.おそろしい(恐)3.うけつけ(受付)4.うごかす(動)5.あたる(当)
調査Ⅰ
アンケートの実施 しかし、最初の調査は「抜き打ち」になってしまうため、学習者が調査の趣旨を十分に理解しないまま終わる可能性もある。 また、学習者がどのように考えて、(送り仮名を)習得していくかを考察するには不十分。 調査Ⅱを実行
アンケートの実施 調査Ⅱについて 調査Ⅰでは5つの項目について調査・考察したが、これを踏まえ、調査Ⅱではまったく同じ項目は避け、「動詞て形」「い形容詞―い」の形を入れて、「うごかして」と「うごいて」、「あてる」と「あたる」のように、書き分けが要求される対応する語を二つ並べることで行った。
調査Ⅱ
調査グループの決定 ①日本國學院大學文学部文学科3~4年生 2005年5月25日(Ⅰのみ)22名 ①日本國學院大學文学部文学科3~4年生 2005年5月25日(Ⅰのみ)22名 ②日本明海大学外国語学部1~4年生(留学生含む) 2005年5月23日(Ⅰのみ)31名 ③台湾南台科技大學應用日語系1年生Cクラス 2005年10月6日(31名)・13日(24名) ④台湾南台科技大學應用日語系2年生Bクラス 2005年10月7日(27名)・14日(26名) ⑤台湾南台科技大學應用日語系2年生Cクラス 2005年10月7日(31名)・14日(31名)
3 集計・分析・考察
まずは、データをパソコンに入力 数値の結果ではなくデータそのものを打ち込むことにした。 なぜか?
まずは、データをパソコンに入力 調査項目ごとの集計だけでなく、ある被験者が何を答えたか相関も分かる。 応用が利きやすい
多面的な考察が可能となる。 表の集計 ピボットテーブル等を使う。 ここでは対象となるグループごとの表を作ったが、検定試験の級ごとの結果など、いろいろな表を作ることが可能となる。 多面的な考察が可能となる。
表2 緑色が本則・通則通り
個人の意識の変化
4.発表論文作成
発表論文作成 まずは大雑把に構成を考える。 ○目的・先行研究 ○調査結果・考察 ○まとめ 書きながら最終的に次のように決定。
発表論文作成 1.はじめに 2.「送り仮名の付け方」の法則と性格 3.調査の概要 3.1 調査対象 3.2 調査項目 4.調査結果 3.1 調査対象 3.2 調査項目 4.調査結果 4.1 調査Ⅰ 4.2 調査Ⅱ 5.おわりに 以上のように決定
発表論文作成 あとは、調査結果を元に文章化するだけ。 細かい点は一度書いたあと、読みながら修正を加える。
6.反省とfeedback
反省点 もう少し、調査対象の数を増やしたかった。 例文は、文章の中に「はめ込む」形式を検討してみることも必要。 「語彙・文法が分かることと、文字が書けることは別である」ということの証明が必要。