6: 失業とインフレーション/デフレーション

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1 「マクロ経済学Ⅰ」 蓮見 亮
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資本市場論 (9) 債券投資分析 - 金利の期間構造 - 三隅隆司 1. 短期金利と長期金利の関係 1990 年 12 月 1994 年 6 月 1992 年 4 月 1993 年 2 月 1996 年 6 月 1999 年 1 月 1994 年 1 月 日本銀行 HP のデータより作成 2 はじめに.
マクロ経済学 I 第 2 章 久松佳彰. GDP をどちらから見るか GDP は一国の総生産額(付加価値の合 計)でした。 – 生産(=供給)側から見る見方と – 需要側から見る見方がある。 二つの見方はともに大事。 三面等価の原則から言うと、「生産=付 加価値」の見方と、「支出=需要」の見 方。
2014 年 9 月 22 日初級ミクロ経済学 1 初級ミクロ経済学 -需要・供給曲線- 2014 年 9 月 22 日 古川徹也.
需要と供給. 需要と供給の概念 需要:ある財の価格の下で、消費者が買 いたい(消費したい)と思う量。 (注意:実際に買った量だとは限らない) 供給:ある財の価格の下で、企業が売り たいと思う量。 (注意:実際に売った量だとは限らない)
『マクロ金融特論』 ( 2 ) 一橋大学大学院商学研究科 小川英治 マクロ金融特論
短期均衡 (2) IS-LM モデル 財市場 IS 曲線 – 財市場の均衡 – 政府支出の増加,減税 貨幣市場 LM 曲線 – 貨幣需要,貨幣市場の均衡 – マネーサプライの増加 IS-LM モデル – 財政政策の効果,金融政策の効果 – 流動性の罠 – 実質利子率と名目利子率の区別 貨幣供給.
IS-LM 分析 マクロ経済分析 畑農鋭矢. 貨幣の範囲 通貨対象 M1M2M3 広義流動性 現金通貨(日銀券 +補助通貨) 預金通貨 (普通預金・当座 預金など) 主要銀行・信 用金庫など ゆうちょ銀 行・信用組合 など 準通貨 (定期預金など) 主要銀行・信 金など ゆうちょ銀 行・信用組合 など.
陰関数定理と比較静学 モデルの連立方程式体系で表されるとき パラメータが変化したとき 如何に変数が変化するか 至るところに出てくる.
6: 失業とインフレーション/デフレーション
第6章 閉鎖経済における短期のマクロ経済理論
初級ミクロ経済学 -消費者行動理論- 2014年9月29日 古川徹也 2014年9月29日 初級ミクロ経済学.
労働市場マクロ班.
第1章 国民所得勘定.
第11回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス.
第16章 総需要に対する 金融・財政政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がりである 資産効果 利子率効果 為替相場効果
5: オープン・エコノミーのマクロ経済学 オープン・エコノミーのIS/LMモデル
<キーワード> 景気循環 総需要・総供給モデル
購買力平価 一橋大学商学部 小川英治 マクロ金融論2016.
マクロ経済学 I 第3章 久松佳彰.
第2回講義 文、法 経済学.
<キーワード> 生産関数、労働、資本 限界生産物
入門B・ミクロ基礎 (第7回) 第4章続き 2014年12月1日 2014/12/01.
第2回 均衡の安定性.
第8回講義 文、法 経済学 白井義昌.
IS-LM分析 経済学B 第10回 畑農鋭矢.
7: 新古典派マクロ経済学 合理的期待学派とリアル・ビジネス・サイクル理論
マクロ経済学 II 第9章 久松佳彰.
第7章 どのように為替レートを 安定化させるのか
6: 失業とインフレーション/デフレーション
(景気が良くなり)ハンバーガーの需要が拡大すると
第4章 IS-LMモデル 労働市場との関係 IS・LMの交点(Y0, i0)は財市場と貨幣市場において,それぞれ需給均衡が達成しているが,労働市場において需給均衡を保証していない。 例えば,賃金の硬直性などの理由により,非自発的失業者が存在する可能性は十分にある。 完全雇用GDPがYFであるとすると,この経済にはY0YFに相当する所得不足が存在することになる。この不足は有効需要の不足によって発生したものである。
短期均衡モデル(3) AD-ASモデル ケインジアン・モデルにおける物価水準の決定 AD曲線 AS曲線 AD-ASモデル
第10章 失業と自然失業率 失業率はマクロ経済学においてGDP(5章)、インフレ率(6章)と並び重要な指標 各国の失業率(2012年、%)
第8章 開放マクロ経済学.
マクロ経済学 II 第5章 久松佳彰.
硬直価格マネタリー・アプローチ MBA国際金融2016.
伸縮価格マネタリー・アプローチ MBA国際金融2016.
<キーワード> 景気循環 総需要・総供給モデル
マクロ経済学 II 第10章 久松佳彰.
第4章 投資関数.
生産要素への需要と生産要素価格: 労働市場・資本市場・土地の市場
マクロ経済学初級I 第7回講義.
丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2006年6月8日
市場経済 商品を買 いたい人 商品を売 りたい人 市場 (いちば) 外国と交易し, 商品範囲を広げる 商人は 利得を拡大 客の要望 が増大.
動学的一般均衡モデルについて 2012年11月9日 蓮見 亮.
デフレ・スパイラル 2009年以降の事例から 長谷川 正
ミクロ経済学II 4 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2017年10月25日
経済原論IA 第5回 西村「ミクロ経済学入門」 第5章 消費者需要理論の応用と拡張 京都大学経済学部 依田高典.
第10回講義 文、法 経済学 白井義昌.
V. 開放経済のマクロ経済学.
VI 短期の経済変動.
V. 開放経済のマクロ経済学.
第8回講義 マクロ経済学初級I .
第5回講義 マクロ経済学初級I  白井義昌.
固定相場制のもとでの財政・金融政策の効果
マクロ経済学体系のフローチャート 財 市 場 (IS曲線) IS・LM モデル 総需要 曲 線 所 得 と 物価水準 の 決 定 インフレと
固定相場制下の財政・金融政策 田中 靖人.
© Yukiko Abe 2014 All rights reserved
7: 新古典派マクロ経済学 生産要素の完全雇用 ケインズ経済学の中心的な考え方(需要サイド,4章と5章のIS/LMモデル) ↑ ↓
循環構造 民間部門経済循環の流れ circular flow 家 計 企 業 (価格メカニズム) 市場機構 が働く p p 消費財市場 y
第6章 IS-LMモデル.
© Yukiko Abe 2014 All rights reserved
マクロ経済学初級I タイプIIクラス 白井義昌
古典派モデル(1) 基本モデル 生産要素市場の均衡(労働市場,資本市場) 生産関数 消費関数,投資関数 財市場の均衡 政策の効果
第9回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス.
経済学(第7週) 前回のおさらい 前回学習したこと(テキストp.16,19) ◆ マクロ経済学における短期と長期 ◆ 完全雇用とはなにか ◆ 短期のマクロ経済モデルの背後にある考え方 (不況の経済学/有効需要原理) ◆ 民間部門はどのように消費や投資を決定するか ◆ ケインズ型消費関数とはなにか ◆
第6回講義 文、法 経済学 白井義昌.
マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌
マクロ経済学初級I 第12回 今学期のまとめ.
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6: 失業とインフレーション/デフレーション フィリップス曲線 賃金の上昇率 > 労働生産性の上昇率 ⇒ インフレーションが発生する w > gL ⇒ p > 0 フィリップス曲線(the Philips curve): 賃金上昇率 w と失業率 u の間の関係を表す曲線である。 u↑ → w↓ u↓ → w↑ 失業率uは経済成長率が高い好況期に低くなるから,そうした時期に賃金上昇率wは高くなる。インフレーション p も好況期に高くなる傾向がある(逆は逆)。 日本のフィリップス曲線(1966~2003) 資料: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査報告」 等 マクロ経済学(Ⅱ)

6: 失業とインフレーション/デフレーション フィリップス曲線 賃金の上昇率 > 労働生産性の上昇率 ⇒ インフレーションが発生する w > gL ⇒ p > 0 フィリップス曲線(the Philips curve): 賃金上昇率 w と失業率 u の間の関係を表す曲線である。 u↑ → w↓ u↓ → w↑ 失業率uは経済成長率が高い好況期に低くなるから,そうした時期に賃金上昇率wは高くなる。インフレーション p も好況期に高くなる傾向がある(逆は逆)。 日本のフィリップス曲線(1966~2003) 資料: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査報告」 等 すでにインフレーションが発生している場合には,失業率とは独立に,過去のインフレーション(あるいは将来のインフレーションに対する予想)も今期の賃金上昇率に影響を与えるであろう。この場合, p↑→ w↑ → p↑ のような「悪循環」が生まれる可能性がある。 (この点については,第7章で説明する。) マクロ経済学(Ⅱ)

6: 失業とインフレーション/デフレーション フィリップス曲線 賃金の上昇率 > 労働生産性の上昇率 ⇒ インフレーションが発生する w > gL ⇒ p > 0 CPIとWPIとの間の格差について 賃金の上昇率 w が労働生産性の上昇率 gL を上回らなければ,インフレーションは生じない。 電気機械産業における技術進歩と美容院のサービスを比べてみれば分かるように,製造業の労働生産性 gL製造業 は非製造業の労働生産性 gL非製造業 よりもはるかに高い。しかし両産業の賃金上昇率 w はほとんど大きな格差がない。 高度成長期に: w ≒ gL製造業 → WPI はほとんどインフレーションが生じなかった w > gL非製造業 → CPI は持続的なインフレーションが生じた 消費者物価CPIのこうしたインフレーションは「生産性格差インフレーション」と呼ばれる。

6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 インフレーションを決定する第2の要因は,原材料価格ePR*の変化である。 「購買力平価」: 「価格」の変化→「為替レート」の変化 という因果関係 現実の経済では短期的に: 「為替レート」の変化→「国内価格」という因果関係 具体例: 1985-86年,為替レート221円/ドルから160円/ドルへと28%円高したによって,WPIが10%ほど下落した。( 「為替レート」の変化→「国内価格」の変化) 1973年1月に2.6ドル/バーレルの原油価格は,74年1月に4倍の11.7ドル/バーレルまで急上昇した。さらに1978-80年,再び14ドル/バーレルから35ドル/バーレルまで急上昇した。いずれの場合も,為替レートが大きく変動していないが,WPIが急上昇した。(「原材料価格」の変化→「国内価格」の変化) スタグフレーション(stagflation) インフレーションが加速化の同時に生産水準(実質GDP)も低下することについて,「不況」(スタグネーション)と「インフレーション」を合わせた「スタグフレーション」と呼ぶ。 マクロ経済学(Ⅱ)

6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 物価Pの変化を考慮に入れて,貨幣市場の均衡を表わすLM式 M/P=L(i, Y) マネーサプライMと政府支出Gが一定の下で P↓ → M/P↑ → LM曲線は右下へシフトする P↑ → M/P↓ → LM曲線は左上へシフトする Y0 < Y1 i L i Y M/P M/P LM i1 i1 i1 i0 L=L(Y1, i, W) i0 i0 L=L(Y0, i, W) マクロ経済学(Ⅱ) Y0 Y1

6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 物価Pの変化を考慮に入れて,貨幣市場の均衡を表わすLM式 M/P=L(i, Y) マネーサプライMと政府支出Gが一定の下で P↓ → M/P↑ → LM曲線は右下へシフトする P↑ → M/P↓ → LM曲線は左上へシフトする IS/LMモデルにおいて P↓ → LM曲線は右下へシフトする → Y↑ 総需要曲線ADは右下がりとなる。 P Y P0 P1 AD IS i Y LM マクロ経済学(Ⅱ) Y0 Y1

6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 物価Pの変化を考慮に入れて,貨幣市場の均衡を表わすLM式 M/P=L(i, Y) マネーサプライMと政府支出Gが一定の下で P↓ → M/P↑ → LM曲線は右下へシフトする P↑ → M/P↓ → LM曲線は左上へシフトする IS/LMモデルにおいて P↓ → LM曲線は右下へシフトする → Y↑ 総需要曲線ADは右下がりとなる。 「需要ショック」 M,Gあるいは投資の期待利潤率reが変化した 場合,IS曲線はシフトする。 G↑→IS曲線右へシフトする → 総需要曲線AD右へシフトする P Y P0 P1 AD' IS' AD IS i Y LM マクロ経済学(Ⅱ) Y0 Y1

6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 マクロ経済のサプライ・サイド 生産関数: Y=f(R) 産出量Yは投入する原材料Rの増加関数 企業利潤最大化の条件 Rの限界生産力価値=Rの価格 (DY/DR)・P=PR (Df(R)/DR)・P=PR Df(R)/DR=PR/P Df(R)/DR R Y R Y=f(R) マクロ経済学(Ⅱ) R0 R1

6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 マクロ経済のサプライ・サイド 生産関数: Y=f(R) 産出量Yは投入する原材料Rの増加関数 企業利潤最大化の条件 Rの限界生産力価値=Rの価格 (DY/DR)・P=PR (Df(R)/DR)・P=PR Df(R)/DR=PR/P 原材料価格PRを外生としたとき P↑→ PR/P↓→R↑→Y↑ 国内製品価格Pが上昇すると,企業にとって 原材料が「実質的に割安」となるので,より多く のRを投入し,生産量Yは上昇する。 Df(R)/DR R PR/P0 PR/P1 Y R Y1 Y=f(R) Y0 マクロ経済学(Ⅱ) R0 R1

6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 マクロ経済のサプライ・サイド 生産関数: Y=f(R) 産出量Yは投入する原材料Rの増加関数 企業利潤最大化の条件 Rの限界生産力価値=Rの価格 (DY/DR)・P=PR (Df(R)/DR)・P=PR Df(R)/DR=PR/P 原材料価格PRを外生としたとき P↑→ PR/P↓→R↑→Y↑ 国内製品価格Pが上昇すると,企業にとって 原材料が「実質的に割安」となるので,より多く のRを投入し,生産量Yは上昇する。 総供給曲線ASは右上がりである。 P Y AS P1 Y1 P0 Y0

6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 総供給曲線ASは右上がりである。 総需要曲線ADは右下がりである。 需要・供給の両方を考慮したときのマクロ経済の均衡はAD,ASの交点で表される。(Y*,P*) 「需要ショック」によって経済の変動が生じるときに,総需要曲線ADはシフトする。 例えば,M,Gあるいはreが上昇すると,AD曲線は右上へシフトする。 → Y↑,P↑ これは「フィリップス曲線」に表れているように,好況のときに, u↓,w↑P↑,不況のときにu↑,w↓P↓。 P Y AS P*' AD' P* AD Y* Y*'

6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 総供給曲線ASは右上がりである。 総需要曲線ADは右下がりである。 需要・供給の両方を考慮したときのマクロ経済の均衡はAD,ASの交点で表される。(Y*,P*) 「供給ショック」によって経済の変動が生じるときに,総供給曲線ASはシフトする。 例えば,PRが上昇すると,Pが変わらなくてもPR/Pは上昇する。AS曲線は左上へシフトする。 → Y↓,P↑ 「スタグフレーション」が発生する。 「スタグフレーション」は「需要ショック」ではなく,「サプライ・ショック」によって引き起こされる現象である。 AS' P Y AS P*' P* AD Y*' Y*

6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 まとめ 「緩やか」なインフレーションの原因のすべてを「過大なマネーサプライ」に帰することはできない。 インフレーションによりPが上昇したときに,Mが同率で増大しなければ「実質マネーサプライM/P」は減少する。AD曲線は左へシフトし,Yが下落する。 こうして経済活動水準が抑えられると,やがてフィリップス曲線を通して,実質賃金w/Pの上昇を抑制される。 Mがインフレーションを「追認」しない限り,インフレーションは「不況」を通して自らを治癒する作用を持つ。 AS' AS LM曲線左へシフト P Y IS/LMモデル Y↓ u↑ フィリップス曲線 gL, w↑ ↑ サプライショック 金融政策 インフレーション M/P↓ PR,gR↑ AD M↑ P↑ ↑ PR*↑, e↑ AD'