ビデオ録画による心理療法 マスターセラピストから学ぶ 自我心理学的立場から

Slides:



Advertisements
Similar presentations
J.Kominato 個別ケアプラン作成の留意点 個別ケアプラン作成の留意点 J.Kominato.
Advertisements

学習目標 1 .セルフマネジメントモデル,学習援助型教育とは何か を理解する. 2 .セルフマネジメント支援のために必要な構成要素につ いて理解する. 3 .セルフマネジメントにおいて看護職に求められる能力 と責任について理解する. SAMPLE.
第4章 何のための評価? 道案内 (4) 何のための評価? ♢なぜ教育心理学を勉強するか? (0) イントロダクション ♢効果的な授業をするために (1) 記憶のしくみを知る (2) 学習のしくみを知る (3) 「やる気」の心理学 ♢生徒を正しく評価するために ♢生徒の心を理解するために (5)
カウンセリングナースの 実践 と評価 不知火病院 カウンセリングナース 不知火病院 カウンセリングナース 国崎孝子 国崎孝子.
カウンセリングナースによる 新しい治療システム -ストレスケア病棟での治療体験と カウンセリングナースの導入- 福岡県大牟田市 不知火病院 院長 徳永雄一郎.
SNS によるストレスの研 究 鴫原 康太. 本研究の目的 今回私がこの研究を行おうと思ったきっかけは、 SNS によるストレスを自分も少なからず感じるこ とがしばしばあったということが今回の研究を 行ったきっかけである。 「既読無視」「バカッター」など SNS のあり方、 使い方を誤って使ったり、
広義の自閉症と考えてよい。 知的障害のある「自閉症」「非定型自閉症」と、知的障害のない「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」などがある。
発達障害と統合失調の類似性 原因を求めれば発達障害が増える
「ストレスに起因する成長」に関する文献的検討
1.「時間感覚」のズレを直す 2.「他者の承認」の仕組みを生かす
mukogawa-u.ac.jp/~kitaguti/
8 人間関係の中で育つ −社会性の発達−.
第3章 「やる気」の心理学.
心理学 底知れない複雑な分野 12年3組3番  原 優子.
      特別支援学校 高等部学習指導要領 聴覚障害教育について.
自律学習と動機づけ 教育心理学の観点から 2011/2/19 上淵 寿 (東京学芸大学).
がんと就労 資料1 山内班計画 がん診療連携拠点病院等 【課題】 【課題】 就労や職場の現状、法律に関する知識なし
患者さんとご家族のための 双極性障害ABC
「存在の肯定」を規範的視座とした作業療法理論の批判的検討と 作業療法・リハビリテーションの時代的意義 田島明子
1 受講方法の変更について 講義への直接参加 (オフライン) Youtubeでの視聴 (オンライン) 今まで通りの方法で進める
対人コミュニケーション 人間 人間 二者間あるいは少人数間の 情報交換の過程 深田 1998.
第9章 自己意識と発達課題.
本章の学習目標 1.精神に障害のある対象者への援助を進めるにあたり,援助の特徴と,なぜそのようにするのかがわかったうえで,具体的な方法を考えられること. 2.精神に障害のある対象者は,病的な体験のために部分的に日常生活に支障を来たす場合が少なくない.生活を通じて,自己のあり方や生活スキルの見直しが求められる.日常の生活が治療的な環境として大きな意味をもち,またそこで援助を行う看護師も治療的な環境の一つであることを理解する.
クイズ 「インターネットを使う前に」 ネチケット(情報モラル)について学ぼう.
私たちはどうして虐待をしてしまうのか? 誰もが利用者の生活が豊かになることや社会参加を願って福祉の仕事に就いていると 思います。初めから虐待しようなんて思って仕事に就いている人はいないはずです。 ○愛情というエネルギーはとても大きい →自分の思うようにいかないと怒りになります。 ○自己欲・支配欲のエネルギーはとても大きい.
対人援助に活かすコーチングとセルフケア 平成26年11月19日(水)14:00~ 日本アンガーマネジメント協会       石 原 誠 吾.
こころの健康出前講座プロジェクト提供資料
子どもたちが発達段階に応じて獲得することが望ましい事柄
平成27年度 埼玉県障害者 虐待防止・権利擁護研修
第6章 子どもを愛すること ー感情と愛着の発達ー
Ⅲ.精神医学的アプローチの提案 精神科医 片山知哉 療育研究大会全体会シンポジウム 家族背景の要因で「難支援」に至るケースへの対応
女子大学生におけるHIV感染症のイメージと偏見の構造
神戸大学医学部附属病院 リエゾン精神専門看護師 古城門 靖子
独立行政法人国立病院機構 舞鶴医療センター認知症疾患医療センター 川島 佳苗
介護予防サービス・支援計画表 記入のポイント.
患者とかかわる際に 行うこと・行わないことの指針
 クリティカルケア領域に             おける家族看護     ICU入室中の患者家族の      ニードに対する積極的介入について              先端侵襲緩和ケア看護学                    古賀 雄二 
2007年10月14日 精神腫瘍学都道府県指導者研修会 家族ケア・遺族ケア 埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科 大西秀樹.
まずはじめに、入社20年目の43歳男性の面接指導の具体例を見ていきます。
治療構造論.
てんかんという病気に 向かい合うために ・家族内力動について
作業療法の効果を目指す アセスメントと治療操作の考え方
薬物乱用と健康 あなたはNOとはっきりいえますか・・・  .
第11~12回 福祉対象者への相談援助 ~面接技術~
第3回 患者・利用者との対話.
日常生活から社会へ~社会学理論とジェンダー 1
リーダーの役割 総合政策学部3年 鋤先麻美 環境情報学部3年 生田目啓
受講日:   月  日 暗黙知の見える化ワーク 第1回 コミュニケーションとは.
SAMPLE 1.個々のアセスメント項目に関して,その方法と得られたデータの評価ができ,記録できる.
子育て支援だより 大人の期待 子どもの出来ること 嫩幼稚園 ①子どもの成長の過程を知ること 平成28年8月23日
小学部児童が友だちに要求を 受け入れられなかったときに自傷をせず 言葉で伝えることができるための支援
役割課題への対処方法 参考資料.
フロイト あるいは自我心理学を通して 妙木 浩之
【研究題目】 視線不安からの脱却に 影響を与える要因について
医学生の患者視点 〜先行研究をあたって〜 東京大学医学部M1 李 真煕.
子どもの性格は生まれつき? ー性格の決定因と発達ー
「21世紀型コミュニケーション力の育成」研修モジュール A1 概要解説モジュール
実践評価の方法 グループ討議 東京学芸大学 高良 麻子 基礎研修Ⅱ 実践評価・実践研究系科目
中間管理職向け研修のご提案 部下達の能力をX倍化する 株式会社プレジャーポケット.
南魚沼市民病院 リハビリテーション科 大西康史
第13回(通算29回) 福祉対象者への相談援助 合意形成
力動フォーミュレーション.
派遣先企業の皆様へ ご協力のお願い 聴くチカラ 伝えるチカラ 遂げるチカラ 律するチカラ
図15-1 教師になる人が学ぶべき知識 子どもについての知識 教授方法についての知識 教材内容についての知識.
文脈 テクノロジに関する知識 教科内容に関する知識 教育学 的知識
福岡県教育センター ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 研修担当の先生へ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ビデオレビューによる 外来教育 北海道家庭医療学センター 草場鉄周.
プレゼン資料(進行者用・研修者用)   校内研修会 教師自身の望ましい自己表現.
浜松医科大学附属病院・磐田市立総合病院 チャイルド・ライフ・スペシャリスト 山田 絵莉子
2010応用行動分析(3) 対人援助の方法としての応用行動分析
Presentation transcript:

ビデオ録画による心理療法 マスターセラピストから学ぶ 自我心理学的立場から 千駄ヶ谷心理センター        大妻女子大学                   深津千賀子

 診断 と アセスメント 医学的診断 除外診断 症状・検査→病因の特定 治療方法・方針 心理アセスメント 心の働きの健康な側面と 病態化した側面について

  アセスメント面接の目的 危機介入の必要性 ex. 自殺、激しい行動化等の可能性 心理療法の適合性 探索的か支持的か クライエントの年令や病態に応じて 家族との関わりの必要性 他機関との連携の必要性 投薬、その他治療チームを組む必要性 心理療法が不向きな場合 ex. 話しを聞くこと → 悪性の退行を起こす可能性

自我心理学 精神力動的考え方の特徴 連続性の原理: 常態心理にも病態心理にも一貫した連続性を もって働く心理過程を仮定して、人間の精神 現象を理解する観点

・ 人間の言動の背景には無意識的動機づけ ・ 無意識的な動機や意図は互いに葛藤し、 力学的抗争(精神内界、内界と外界、対人 関係など)を引き起こしている ・ 人間の言動は、この葛藤の妥協形成の結果

パーソナリティの主体としての自我 心理過程の中心として機能する自我 内的には心と身体のバランスを取りな がら、外界に対しても心理・社会的に 適応を図っている自我の諸機能が働 ている

精神力動的アセスメント 自我の諸機能 : 退行の水準と回復力 現実検討力 → 病態水準 適応のパターン: 主たる防衛・適応機制 → パーソナリティ 反復強迫 現在の問題・症状: 防衛や適応のバランスが崩れたり 破綻したきっかけは? (精神内界・ 外界との関係・両方?) どのような葛藤の妥協形成か?

力動的アセスメント 症状や問題行動を 自我の妥協形成の表れとするなら どのような無意識的な動機づけや意図 があり、その葛藤、力学的な抗争の内容 はどのようなことか? どのような援助が適切かつ現実的に必要か?

アセスメント面接 面接者の立場、時間、部屋、情報の扱い等 ・ 自身について語ってもらう 訴え、経過、過去の受診歴など        アセスメント面接 ・ アセスメント面接の構造の説明    面接者の立場、時間、部屋、情報の扱い等 ・ 自身について語ってもらう     訴え、経過、過去の受診歴など     今の問題の発症時期について 生育歴や家族について     質問はopen から closed へ

面接者 クライエント 場所・時間など構造の管理 自分について語る 役に立ちたい 面接への不安・恐怖 病態水準は? セラピストはどんな人? なぜ、今?? この機会への依存・期待 自信/ 不安 理想化/幻滅

面接者の姿勢・態度 話の文脈を追いながら、時に明確化などの介入 語られている通りにか、語られていることの背景も   共感的、受け身的、中立的   話の文脈を追いながら、時に明確化などの介入   語られている通りにか、語られていることの背景も   語られないこと(回避していること)への注意  言葉の後ろに隠されている“何か”を理解し、介入する (クライエントが受け入れられる水準、病態などを考慮)    → 理解したことを伝え返す

クライエントの葛藤と自我の状態 カウンセリングのイメージは? 支持はされるが、指示はされない 面接者からの介入で妥協形成が揺らぐ( ⇒ 退行) 自己の内面(葛藤)に 向き合う力 ⇔ 抵抗する力 より生の情動・感情の顕在化⇔それを意識化する ことへの不快感、不安感、罪悪感、羞恥心など 介入により <今・ここで>の葛藤 症状は辛い ⇔ 解放されて楽になりたい(⇒ 進展) 面接者は鋭い(怖い?) ⇔ 私をわかってくれる(安心) (会う前に構造転移もあり、より対象転移関係が・・・・)

面接者とクライエントの相互関係 面接者が 専門家としての見方を伝え返すと、 クライエントは 理解された、あるいは一般社会場面と違う見方をするところで理解されそうだ という手応えを体験し、心理療法に期待 (クライエントの健康な自我機能)

アセスメント面接の結果を伝える 力動的定式化: 症状や問題の背景について 果たして、前・無意識的な葛藤は? どのような妥協形成をしているか? 反復強迫は? 病態水準やパーソナリティの発達やライフサイクル も視野にいれ、心と身体、心理社会的側面から、 問題全体を精神力動的に理解し、仮説を立てる クライエントの健康な自我に働きかけ面接契約へ

   作業同盟と心理療法の契約 解釈面接から契約そして心理療法へ 面接者の理解をクライエントに伝え、クライエントが同 意したら、心理療法の契約 ↓ 作業同盟 :双方の健康な自我が同盟を結び、セラピ ストの退行した部分を使ってクライエントの病理的 な部分に共感、理解し、交流する。 この過程から体験の内在化、観察自我の発達

本事例について Cl.の訴え <視線恐怖> 双方の自己紹介⇒ Th.面接の目的⇒Cl.経過を語る (自分の問題への姿勢/病識)視線恐怖「見たら悪い」 心療内科を受診“カウンセリングの提案” (Cl.15-17) Th.18<心の中の問題が・・> Cl.18 ⇒両親との関係がこじれておりまして・・無縁ではないのかと Th.19 <きっかけはない?>(Cl.18の両親との関係ー無縁ではないのか、はとりあげない) Cl.19⇒仕事は忙しい( Cl.も両親の話を回避)

Cl.20 「感覚が普通じゃない」「敏感」「相手が気を悪くする」「多分いけないこと」「見たくないものを見ちゃう」「相手が嫌な気分になる」(Cl.の内的体験) Cl.34 ⇒「見たことを言葉にしてしまう」(「見たこと・視線」という内的体験から、「言葉にする」他者との現実的関係へ) Cl.35.36.友達と険悪な関係、攻撃しようと思ってない Th.38「つい思った通りに言ってしまうという」 Cl.41-Cl.46 「ほかの人も同じ」(「つい」意識しないで出てしまい関係を悪くする言葉)⇒ 「自分は正しい、誰でもそうでしょう」(超自我の強さと攻撃衝動の葛藤、合理づけ防衛をしながら)

Th.49 「厳しくて人に怖がられたり、嫌われたりと?」 Cl.49 「そうですね。親との関係がこじれたのも・・・」 (と向き合う) Cl.50ー52 「私がきついので」と親との葛藤のを語りだす (両親に受け入れられないことへの怒りを語りながら退行 Cl.55-59 自分の攻撃性⇔受け入れられない疎外感 葛藤 ➡ かかわりを回避 Th.60 「あきらめたら寂しいんじゃないかしら」(情緒をとりあげる) Cl.60 「寂しいですね。・・・考えても良いことがない、つらいばかり。振り返るのは嫌なんです」(と、問題を回避、Th.に対しては自己主張)

Th.62 人に厳しいという思い方 → 目つきが鋭くなる恐れ と症状とつなげて解釈 Cl.62 、63 「そうですね、そうなのかな どうしたらいいでしょうか 」「昔のこと考えない道はないんでしょうか?」 (と、再度、回避願望) この後、Th.との攻防戦が続き Cl.74 「涙が出たので驚きました」(普段の自分とここでの自分の違いに目を向ける。) Cl.79 「何回か通ってきめてもよいですか?」(向き合いたくないー向き合うしかないのか という葛藤の妥協形成) Th.81 受け入れる

力動的理解 「 家族との関係が職場の対人関係でも再現 怒りを感じる他者との関係を回避するという妥協形成 をしながらも、孤立する不安感が増大 両親との葛藤も刺激されて ➡ 症状形成 症状の意味:視線恐怖は他者の視線恐怖でなく、自分の視線が他者を傷つける不安 他者への攻撃衝動が顕在化することへの恐怖 相手への不満・怒りの視線(言葉)がコントロールしきれず 出てしまう恐怖

それは相手に悪い ⇔ でも私は正しい ⇔ 嫌われるかも ⇔ 嫌われたくない ⇔ 主張すると孤立するかもしれない  親とのことは考えないで済ませたいが、症状は苦しい、  身動きが取れない状態で受診 Th.62-81の介入にCl.は「昔のことを考えないといけ いんでしょうか」と抵抗感をもちながら、「涙が出た」ここで の体験を振り返り、数回の面接を受けることで妥協!!