バブル崩壊後の日本経済の 貯蓄率低下について -家計調査によるパネルデータ分析― 高橋ゼミ 共同研究 中島 雄平 斎藤 隆明 高見澤 裕太 発表者 高見澤 裕太
なぜ家計の貯蓄行動を分析するのか? 家計国民貯蓄率の現状 これによって生じる問題 将来的に海外資金に頼らなくてはならなくなってくる。 アメリカや他の国々と比較 これによって生じる問題 国内での資金不足(成長率の低下) 財政赤字の負担 将来的に海外資金に頼らなくてはならなくなってくる。
「家計調査」と「国民経済計算」における家計貯蓄率動向の乖離 ・90年ー97年に「家計調査」の貯蓄率と「国民貯蓄率」の動きが大きく乖離している。 ミクロ的家計行動とマクロ的家計行動の乖離の発生
なぜ貯蓄率が下がるのか? 景気要因 構造的要因 貯蓄率の低下 雇用所得の減少 高齢化の進行 将来不安 不景気による所得の減少 65歳以上の人口の増加により貯蓄が減っていく(ライフサイクル仮説)。 貯蓄率の低下 景気要因 雇用所得の減少 不景気による所得の減少 貯蓄の低下 将来不安 先行き不透明な将来に不安を感じ予備的動機による貯蓄 貯蓄の増加
本分析の結論 小泉・竹中経済政策路線(供給サイド) 「構造改革なくして、成長なし!」 誤った政策? 本研究の結論(需要サイド) 「消費需要回復なくして成長なし!」
モデルの説明 簡単なケインズ的消費関数 Cit = αi+ βiYdit これより Sit = Ydit – Cit =Ydit – (αi+ βiYdit) = -αi+(1ーβi)Ydit αi ; 基礎消費 βi ; 限界貯蓄性向
推計データの特徴 推計の為のデータ (「家計調査」総務省) Sit ; 家計貯蓄 Ydit ; 家計可処分所得 データの加工 世代別 時系列 推計の為のデータ (「家計調査」総務省) Sit ; 家計貯蓄 Ydit ; 家計可処分所得 データの加工 世代別 時系列 世代 第1世代 24歳以下 第2世代 25~29歳 第3世代 30~34歳 第4世代 35~39歳 第5世代 40~44歳 第6世代 45~49歳 第7世代 50~54歳 第8世代 55~59歳 第9世代 60~64歳 第10世代 65歳以上 年次 1 1967年 2 1972年 3 1977年 4 1982年 5 1987年 6 1992年 7 1997年 8 2002年
パネルデータの特徴 パネルの利点 パネルは世代要因と時系列要因をそれぞれ推計できる 世代要因 構造的要因の分析 時系列要因 景気要因の分析 年次 S Y 1 1967 S11967 Y11967 1972 S11972 Y11972 1977 S11977 Y11977 1982 S11982 Y11982 1987 S11987 Y11987 1992 S11992 Y11992 1997 S11997 Y11997 2002 S12002 Y12002 : 10 S101967 Y101967 S101972 Y101972 S101977 Y101977 S101982 Y101987 S101987 S101992 Y101992 S101997 Y101997 S102002 Y102002 パネルの利点 パネルは世代要因と時系列要因をそれぞれ推計できる 世代要因 構造的要因の分析 時系列要因 景気要因の分析
パネル分析 統計モデル Sit = αi + βiYid + εit ただし εit= λi + ηt + ξit とする 固定効果モデル ⇒ Cov(λi , Yid) ≠0 ランダム効果モデル ⇒ Cov(λi , Yid) =0 ② ηt ; 時系列による誤差 固定効果モデル ⇒ Cov(ηt ,Yid) ≠0 ランダム効果モデル ⇒ Cov(ηt ,Yid) =0 *)検定 ここではどちらのケースもランダム効果モデルを採択
推計結果 構造要因によるランダムエフェクトモデル Sib=-542310.8+0.3451Ydi 時系列要因によるランダムエフェクトモデル (-5.145339) (16.56242) 時系列要因によるランダムエフェクトモデル Sit=-447746.5+0.3244Ydi (-4.10859) (14.6289) 世代効果 世代 貯蓄への効果 1 24歳以下 -13590 2 25~29歳 91396 3 30~34歳 156070 4 35~39歳 128913 5 40~44歳 82325 6 45~49歳 -100719 7 50~54歳 -51275 8 55~59歳 -19492 9 60~64歳 -210763 10 65歳以上 -62866 景気効果 年次 貯蓄への効果 景気 1 1967 9188 2 1972 -12500 3 1977 -4662 4 1982 -137152 5 1987 -78493 6 1992 26881 7 1997 109306 8 2002 87430
結果の解釈 景気要因 予備的貯蓄の増加 構造要因 1992年以降 ライフサイクル仮説が成立 景気悪化になる。 第二世代~第五世代;貯蓄をする 景気悪化になる。 予備的貯蓄の増加 構造要因 第二世代~第五世代;貯蓄をする 第六世代~第十世代;消費する ライフサイクル仮説が成立 (注)第六世代~第七世代⇒世帯人数の効果が考慮されていない ため、固定効果モデルとなっていないと考えられる。
総合効果 1997年と2002年のマクロ的な貯蓄行動 (世代効果 + 景気効果)の総合効果 世代効果 < 景気効果 どの世代も貯蓄増加 (世代効果 + 景気効果)の総合効果 世代効果 < 景気効果 どの世代も貯蓄増加 世代別 世代効果 1997年の景気効果 総合効果 24歳以下 -13589.97 109306.4 95716.43 25~29 91395.78 200702.18 30~34 156069.5 265375.9 35~39 128913 238219.4 40~44 82325.28 191631.68 45~49 -100718.8 8587.6 50~54 -51274.38 58032.02 55~59 -19491.54 89814.86 60~64 -210763.2 -101456.8 65歳以上 -62865.71 46440.69 世代別 世代効果 2002年の景気効果 総合効果 24歳以下 -13589.97 87430.3 73840.33 25~29 91395.78 178826.08 30~34 156069.5 243499.8 35~39 128913 216343.3 40~44 82325.28 169755.58 45~49 -100718.8 -13288.5 50~54 -51274.38 36155.92 55~59 -19491.54 67938.76 60~64 -210763.2 -123332.9 65歳以上 -62865.71 24564.59
分析結果 あらゆる世代で予備的貯蓄動機が大きくはたらき、ライフサイクル仮説から導かれる貯蓄行動を凌駕してしまっている <導かれる含意> あらゆる世代で予備的貯蓄動機が大きくはたらき、ライフサイクル仮説から導かれる貯蓄行動を凌駕してしまっている <導かれる含意> ① ケインズの「貯蓄パラドックス」に陥っている ② 財政政策が効かない
再度! 高橋ゼミ 需要政策なくして 景気回復なし 小泉政権 構造改革なくして 景気回復なし