通訳の実務 エンターテインメントの通訳 獨協大学国際教養学部 言語文化学科 永田小絵 通訳翻訳論 通訳の実務 エンターテインメントの通訳 獨協大学国際教養学部 言語文化学科 永田小絵
芸能・スポーツの通訳 芸能通訳 スポーツの通訳 来日したアーティストの記者会見、インタビュー、テレビ 出演およびその打ち合わせ、日常生活の世話、スケジュー ル管理、芝居の稽古やリハーサルの通訳など多岐にわたる 実例 戸田奈津子さん https://www.youtube.com/watch?v=Rs98PZ27KSI スポーツの通訳 国内外で開催されるスポーツ大会などイベントでの通訳 (選手団付き、事務局付き、VIP付き、プレス、イン フォメーション、連絡など) プロスポーツ(野球、サッカー、格闘技など)の選手付き、 インタビュー、練習、スタッフ、他の選手とのコミュニ ケーション、生活全般の世話 実例 ハリルジャパンを強くする、"超優秀な"日本語通訳 https://www.youtube.com/watch?v=4Wp4gObGI_s
芸能・スポーツ通訳者の資質 通訳を行うジャンルに関する幅広く深い知 識 舞台度胸 ホスピタリティー 映画、演劇、音楽などに関する知識 スポーツのルール、周辺的情報(選手、記録、 チームの勝敗などなど) 舞台度胸 テレビ出演や記者会見など人前に出て通訳する ホスピタリティー アーティストやスポーツ選手と長時間ともに行 動するため、世話好きな性格が望ましい
通訳の原理 理解→転換→表出のプロセスについて
用語の説明:言語の種別 SL:起点言語 source language TL:目標言語 target language 話し手の言語、翻訳、通訳の原語 TL:目標言語 target language 聞き手の言語、翻訳、通訳の訳出語 通訳者はSLからTLへの通訳を行う A言語:通訳者にとっての母語 B言語:通訳者にとっての第二言語 パッシブ能力:聞く、読む能力 アクティブ能力:話す、書く能力
用語の説明:通訳の形式 逐次通訳 同時通訳 以上の他にも時差通訳などがあ る。 センテンス(単文、短文)通訳 長文逐次通訳 通訳装置を使用した同時通訳 ウィスパリング同時通訳 以上の他にも時差通訳などがあ る。
通訳者の理解を支える知識 世界知識:一般常識、雑学的知 識 状況知識:参加者、目的、場所 など 言語知識:語彙、語法、語用 専門知識:用語、枠組み、考え 方
通訳者の言語理解の特徴 言語の線状性・意味単位のオンライン処理 逐次通訳:記憶保持の補助手段としてノー トをとる。 音韻形式の分析によって切り分けをおこなう。 切り分けた意味単位で暫定的に意味表象に投射 する。 投射された意味表象は暫定的にTLに変換され る。 ある程度のサイズに統合しTLの修正を行う。 逐次通訳:記憶保持の補助手段としてノー トをとる。 同時通訳:訳出可能な単位ごとにアウト プットする。 以上のように通訳者は理解と転換を常に同 時進行で行っている。
SLからTLへの転換 意味のまとまりごとに理解しつつ、 分析と統合を繰り返しながら、話 し手のメッセージをとらえる。 深層構造の意味からTLの表層構 造に投射する。 SLのメッセージ(M1)に含ま れるコンテンツおよびその関連性 はTLのM2においても保持され る(等価の原則)。
非言語・パラ言語的要因 非言語(ノン・バーバル)要因 パラ言語(音声表現)要因 身体言語と通訳者 服装、持ち物、表情、物腰、話し方、相手 との距離 言語そのものによる伝達は30%といわれ る パラ言語(音声表現)要因 発音、発声、音量、声の高低・大小、速度、 抑揚… → 聞きやすさ、わかりやすさ 身体言語と通訳者 身振り手振りをどう訳すか
通訳能力の三次元モデル 通訳は言語能力・知識・技術の三つがそ ろって初めて可能になる。どれか一つが ゼロなら全体もゼロ。 ・ 外国語が全くわからない。 ・ そのことを全く知らない。 ・ 情報処理ができない。 ・ 音声表現ができない …etc. このような場合には、左図の体積は ゼロとなる。すなわち、通訳の役割を果たせないことになる。
通訳のプロセス ーまとめー 通訳者は長期記憶として保持されている 各種の知識を総合的に運用しながら話し 手のメッセージをとらえる。 通訳のプロセス ーまとめー 通訳者は長期記憶として保持されている 各種の知識を総合的に運用しながら話し 手のメッセージをとらえる。 TL転換の際には通訳スキルを駆使して 意味単位ごとのオンライン処理をおこな い、言語使用域にもとづき適切な表現方 法を選択する。 通訳者は明瞭な発音、発声、豊かな音量 と安定した声のトーン、聴き手の情報処 理を容易にする速度と間の取り方を工夫 し魅力的なパフォーマンスでアウトプッ トする。