工業力学 補足スライド ● 配布物:授業ノート 3枚 (p.37~48), スライド 2枚, 解答用紙 1枚

Slides:



Advertisements
Similar presentations
Absolute Orientation. Absolute Orientation の問題 二つの座標系の間における剛体 (rigid body) 変換を復元す る問題である。 例えば: 2 台のステレオカメラから得られた3次元情報の間の関 係を推定する問題。 2 台のステレオカメラから得られた3次元情報の間の関.
Advertisements

1 べき関数の微分 微分の定義は 問題 微分の定義を使って、次の関数の微分を求めよ。 a) b) c) d) e) n は自然数 数2の復習.
第2回:力・つりあい 知能システム工学科 井上 康介 日立キャンパス E2 棟 801 号室 工業力学 補足スライド Industrial Mechanics.
わかりやすい力学と 機械強度設計法 (独)海上技術安全研究所 平田 宏一. 講義内容 わかりやすい力学と機械強度設計法 第1章 力学の基礎 第2章 材料強度の基礎 第3章 機械強度設計の実際 第4章 機械設計の高度化 ● 機械設計をこれから学ぼうとしている方を対象 ● 力学や材料強度の基礎から実務的な機械強度設計まで.
1 設計基礎コース もう一度学ぶ材料力学の基礎 座屈 ( Buckling ) 長軸に軸方向圧縮力を作用させると、ある荷 重で急に軸が曲がる。 この急に曲がる荷重条件を探る。 X の位置での曲げモーメントは たわみの微分方程式は.
神戸大・理 2009 年度 地球および惑星大気科学実習 (2009/07/17) 資料をもとに作成.
1 運動方程式の例2:重力. 2 x 軸、 y 軸、 z 軸方向の単位ベクトル(長さ1)。 x y z O 基本ベクトルの復習 もし軸が動かない場合は、座標で書くと、 参考:動く電車の中で基本ベクトルを考える場合は、 基本ベクトルは時間の関数になるので、 時間で微分して0にならない場合がある。
第1回 確率変数、確率分布 確率・統計Ⅰ ここです! 確率変数と確率分布 確率変数の同時分布、独立性 確率変数の平均 確率変数の分散
電磁気学C Electromagnetics C 7/27講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
・力のモーメント ・角運動量 ・力のモーメントと角運動量の関係
伝達事項 皆さんに数学と物理の全国統一テストを受けても らいましたが、この時の試験をまた受けていただ きます。
コリオリ力の復習資料 見延 庄士郎(海洋気候物理学研究室)
中間試験 1.日時: 12月19日(木) 4,5限 2.場所: 1331番教室 3.試験範囲:講義・演習・宿題・教科書の8章までに学んだ範囲
3次関数・4次関数の極値に 関する高専1年生の発見
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 宇宙物理研究室 B 木村悠哉
天秤の釣り合い 棒と糸の重さは無視できるものとし,(ア)から(カ)に はたく重さを求めよ。.
次に 円筒座標系で、 速度ベクトルと加速度ベクトルを 求める.
5.アンテナの基礎 線状アンテナからの電波の放射 アンテナの諸定数
工業力学 補足・復習スライド 第13回:偏心衝突,仕事 Industrial Mechanics.
1.Atwoodの器械による重力加速度測定 2.速度の2乗に比例する抵抗がある場合の終端速度 3.減衰振動、強制振動の電気回路モデル
線形代数学 4.行列式 吉村 裕一.
伝達事項 試験は6/6 (土) 1限目の予定です。.
主成分分析                     結城  隆   .
電磁気学C Electromagnetics C 7/13講義分 電磁波の電気双極子放射 山田 博仁.
透視投影(中心射影)とは  ○ 3次元空間上の点を2次元平面へ投影する方法の一つ  ○ 投影方法   1.投影中心を定義する   2.投影平面を定義する
慣性モーメントを求めてみよう.
重力レンズ効果を想定した回転する ブラックホールの周りの粒子の軌道
ストークスの定理と、 渦度・循環の関係を 直感で理解する方法
電気回路Ⅱ 演習 特別編(数学) 三角関数 オイラーの公式 微分積分 微分方程式 付録 三角関数関連の公式
動力学(Dynamics) 運動方程式のまとめ 2008.6.17
梁の曲げ 1.外力としてのSFDとBMDおよびそれらの関係 2.梁の曲げ応力 (外力により発生する内力) 3.梁のたわみの求め方
Lorenz modelにおける 挙動とそのカオス性
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
物理学セミナー 2004 May20 林田 清 ・ 常深 博.
Computer Graphics 第3回 座標変換 芝浦工業大学情報工学科 青木 義満
電気電子工学科E2 物理学基礎・物理学基礎演習 中間テスト問題
独立成分分析 5 アルゴリズムの安定性と効率 2007/10/24   名雪 勲.
カオス水車のシミュレーションと その現象解析
有効座席(出席と認められる座席) 左 列 中列 右列.
メンバー 梶川知宏 加藤直人 ロッケンバッハ怜 指導教員 藤田俊明
電磁気学C Electromagnetics C 7/17講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
物理学Ⅰ - 第 11 回 - 前回のまとめ 回転軸の方向が変化しない運動 回転運動のエネルギーとその応用 剛体の回転運動の方程式
構造力学の構造 構造力学Ⅰ復習.
5.2 半波長アンテナ 5.2.1半波長アンテナ 同一方向に置かれた長さλ/4の2つの導体で構成される。
物理学Ⅰ - 第 9 回 -.
物理学Ⅰ - 第 8 回 - アナウンス 中間試験 次回講義(XX/XX)終了前30分間 第7回講義(運動量)までの内容 期末試験
有効座席(出席と認められる座席) 左 列 中列 右列.
動力学(Dynamics) 力と運動方程式 2008.6.10
変換されても変換されない頑固ベクトル どうしたら頑固になれるか 頑固なベクトルは何に使える?
応力(stress, s, t ) 自由物体図(free-body diagram)において、外力として負荷荷重P が作用したとき、任意の切断面で力の釣り合いを考慮すると、面における単位面積あたりの内力が存在する、それを応力といい、単位は、Pa(N/m2) で表す。面に垂直に働く垂直応力、s と平行に働くせん断応力、
9.通信路符号化手法1 (誤り検出と誤り訂正の原理)
第2回課題 配布した通り.氏名・学生番号を忘れないこと.
平面波 ・・・ 平面状に一様な電磁界が一群となって伝搬する波
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/11講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
速度ポテンシャルと 流線関数を ベクトルで理解する方法
期末テスト 1.日時: 1月26日(木) 4,5限 試験時間:90分程度 2.場所: 1331番教室
第3回 基礎作図 基本的な作図法をしっかりと学ぶ! 本日の課題.
逆運動学:手首自由度 運動学:速度、ャコビアン 2008.5.27
中間試験 1.日時: 12月15日(木) 4,5限 2.場所: 1331番教室 3.試験範囲:講義・演習・宿題・教科書の9章までに学んだ範囲
ニュートン力学(高校レベル) バージョン.2 担当教員:綴木 馴.
度数分布表における平均・分散 (第1章 記述統計の復習 補足)
宿題を提出し,宿題用解答用紙を 1人2枚まで必要に応じてとってください 配布物:ノート 2枚 (p.85~89), 小テスト用解答用紙 1枚
第22回講義の要点 断面諸量 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
電気回路学Ⅱ 通信工学コース 5セメ 山田 博仁.
ここでは、歪エネルギーを考察することにより、エネルギー原理を理解する。
力覚インタラクションのための 物理ベースモデリング
宿題を提出してください. 配布物:ノート 3枚 (p.49~60), 中間アンケート, 解答用紙 3枚 (1枚は小テスト,2枚は宿題用)
電磁気学C Electromagnetics C 7/10講義分 電気双極子による電磁波の放射 山田 博仁.
3 一次関数 1章 一次関数とグラフ §4 方程式とグラフ         (3時間).
Presentation transcript:

工業力学 補足スライド ● 配布物:授業ノート 3枚 (p.37~48), スライド 2枚, 解答用紙 1枚 第6回:慣性モーメント Industrial Mechanics ● 配布物:授業ノート 3枚 (p.37~48),       スライド 2枚, 解答用紙 1枚       (※ 6枚 1組になっています) 知能システム工学科 井上 康介 日立キャンパス E2棟801号室

注意事項 今回出題する宿題以降,学籍番号を 1枚目の左上に表記してください (アシスタント学生のソート作業の緩和のため) 確認:用紙サイズは A4版,複数枚に渡る場合は左上をホチキス留めすること. 18T○○○○ 提出日:○月○日 氏名:○○ ○○

回転体と重心 (パップス・ギュルダンの定理)  

回転体と重心 (パップス・ギュルダンの定理)  

パップス・ギュルダンの定理のまとめ 曲線を特定の軸周りに回転させてできる回転体の表面積は,曲線全体の長さを L,曲線の重心と軸との距離を d とすると,S = 2pdL である.これは,重心が軸の周りを1周する軌道の長さと曲線長の積 である. 平面上の領域を特定の軸周りに回転させてできる回転体の体積は,領域全体の面積を S,領域の重心と軸との距離を d とすると,V = 2pdS である.これは,重心が軸の周りを1周する軌道の長さと面積の積 である. L S G d d G 2pd 2pd

物体のすわり 物体のすわりがよいとか悪いとかいうとき,これは 物体の安定性 を言っている. ある状態に置かれた物体が安定であるか否かは,物体に微小な傾きを与えた時,物体がそのまま倒れるか,元の状態に戻ろうとするか によって,まずは判定できる. 微小に傾いたときに,物体が「戻ろうとする」か「もっと倒れようとする」かは,その時 発生しているモーメントが復元モーメントか転倒モーメントか によって決まる. そしてそのいずれが生じるかの条件は… 重心がもとの位置より上がる  復元モーメント (安定) 重心がもとの位置より下がる  転倒モーメント (不安定) 重心高さが不変  モーメントは発生しない (中立)

安定なすわり (stable) 物体を少し傾けると重心が上がる場合 重心にかかる重力 W と地面からの反力 R がつくる力のモーメントは,傾きを回復する方向の復元モーメント  戻ろうとする (安定)

不安定なすわり (unstable) 物体を少し傾けると重心が下る場合 重心にかかる重力 W と地面からの反力 R がつくる力のモーメントは,より傾ける方向の転倒モーメント  もっと倒れようとする (不安定)

中立なすわり (neutral) 物体を少し傾けても重心高さが変わらない場合 重心にかかる重力 W と地面からの反力 R の作用線が一致し,モーメントが生じない  倒れようとも戻ろうともしない (中立)

慣性モーメント

剛体の運動を解析するには これまで扱ってきた質点の力学では, 質点の 並進運動 だけを考えれば良かった. 剛体の力学では, 物体が大きさを持つので 並進運動 だけでなく 回転運動 も含めて考慮する必要がある. 一般には,剛体は並進しつつ回転する.  並進運動の式 と 回転運動の式 を併用して解析する. 並進運動 (translation) 回転運動 (rotation)

回転運動の法則性:角運動方程式 並進運動を数理的に解析する上での基本式:Newtonの運動方程式 f = ma これにより「物体に作用する力 f 」と「物体の加速度 a 」との関係が分かるので,物体が受けている力が分かれば運動が予測できる. 回転運動に対して同様の法則性を記述するとすればどうなるか?  角運動方程式 (Eulerの運動方程式) このように,「物体が受けているトルク N」と「物体の角加速度  」との関係 が回転運動の法則性.

慣性モーメント Newtonの運動方程式をよく見れば,以下のことが言える. f = ma 力に比例して加速度は大きくなる. 質量に反比例して加速度は小さくなる. 質量とは「物体の動きにくさ (慣性)」を意味している. では,回転の運動方程式 (角運動方程式) ではどうか? 質量に対応しているのは I であり,角加速度 (回転の加速度) は,I に反比例している.つまり,I は「物体の回りにくさ (回転に関する慣性)」であり,これを 慣性モーメント (moment of inertia) と呼ぶ.

慣性モーメントに関する定性的考察 慣性モーメント I とは,回転に関する慣性 (回りにくさ) であった. では,どういうとき物体は回りにくいか? まず,形状が同じとすれば 質量が大きい とき回りにくいであろうことは直感的に分かる. また,以下の2つの物体が同じ質量だとしたとき… 回転軸近傍に質量が集まっている方が回しやすいっぽい  回転軸と質量との距離が大きい と回しにくい

慣性モーメントを定量的に求める 1 再び角運動方程式を見ると… 「物体全体の回転を角加速度  で加速させるのに 必要なトルク は   である」と解釈できる. 物体を,微小部分 i (質量 mi,回転軸からの距離 ri) の集合体と考えると,全体の回転を  で加速させるトルクは,各部分の回転を  で加速させるトルクの合計である.  部分 i の軸まわりの回転を で加 速させるのに必要なトルク Ni を 求めて,これを合算した全体の 必要トルク N を  で割った値が 慣性モーメント I である! mi ri

慣性モーメントを定量的に求める 2 部分 i の軸周りの回転を で加速するのに必要なトルク Ni を求める. 角加速度が であることから,部分 i の加速度は である.部分 i にこの加速度を与えるのに必要な力の大きさ fi は, である. fi は回転軸から部分 i までのベクトルに直交しているので,部分 i にこの力を与えるのに必要なトルクは         である. よって,物体全体の回転を で 加速させるのに必要なトルク N はその総和であり, である. fi mi ri 慣性モーメント

(部分の質量)・(部分と軸との距離)2 慣性モーメントを定量的に求める 3 より, .              より,      . 微小部分のサイズ (質量) をゼロに持って行く極限を取ると,連続体に対する慣性モーメントの式が求められる. 連続体の慣性モーメントは,物体の微小部分を考え,その微小質量 dm と軸からの距離 r を求めて積分して求める. 慣性モーメント (物体の回りにくさ=回転の慣性) とは, (部分の質量)・(部分と軸との距離)2 を物体全体にわたって合算した値である

慣性モーメントを定量的に求める 4 例) 下記の細い (太さの無視できる) 長さ l,質量 m の棒を軸 L まわりで回転させるときの慣性モーメントを求める.ただし,線密度 (長さあたりの質量) を r とする (m = rl ). 軸 L から距離 x の位置に微小部分 (長さ dx ) をとると,その質量は dm = r dx である.先ほどの式に代入すれば,

慣性モーメントを定量的に求める 5 結合体の慣性モーメントはどうなるだろうか? 結合体の全体を  で回すのに必要な トルクを N とする ( ). 右図のように,それぞれの部分を回す のに必要なトルクは以下の通りとする. 全体を回すトルクはそれらの和である.

慣性モーメントを定量的に求める 6 N = N1+N2 より,I = I1+I2. すなわち, 同様の議論から,慣性モーメント IB の物体から慣性モーメント IP の部分を抜いた後の慣性モーメントは,抜く前の慣性モーメントから抜いた部分の慣性モーメントを引いた値となる.

有用な定理 1:平行軸の定理 下図の物体 (質量 m ) を重心 G を通る軸周りで回す時の慣性モーメントを IG とするとき,G から距離 d だけ離れた点O を通る平行な軸周りで回す慣性モーメントはどうなるか.

有用な定理 1:平行軸の定理 回転軸が z 軸方向となるように以下のように G を原点として座標軸をとり,物体上の微小部分 (質量 dm ) を考える.微小部分の座標を (x, y)T とする.微小部分と G との距離を r,O との距離を r ’ とする.

有用な定理 1:平行軸の定理 点 O 周りの慣性モーメントは以下の通りとなる. r2

有用な定理 1:平行軸の定理 ここが差分! = 0 G 周りの慣性 モーメント IG 物体の全質量 = m 重心の x 座標と 有用な定理 1:平行軸の定理 G 周りの慣性 モーメント IG 物体の全質量 = m 重心の x 座標と 全質量の積 = 0 ここが差分! = 0

平行軸の定理 (parallel axis theorem) 有用な定理 1:平行軸の定理 平行軸の定理 (parallel axis theorem) 物体の慣性モーメントは 重心を通る軸周りが一番小さく, そこから離れるにしたがって d 2m だけ増加する. 重心を通るある軸周りの慣性モーメントが分かっていれば,この定理を使って,その軸に平行な任意の軸周りの慣性モーメントを簡単に求められる. 質量 m の物体の重心 G を通る軸周りの物体の慣性モーメントを IG とするとき,その軸から距離 d だけ離れた平行軸周りの慣性モーメントは,IG に d 2m を足した量となる.

有用な定理 2:直交軸の定理 厚みの無視できる平面板に下図のように座標軸を取り,この板を x 軸,y 軸,z 軸周りで回すときの慣性モーメントをそれぞれ,Ix,Iy,Iz とする.

有用な定理 2:直交軸の定理 微小質量 dm を座標 (x, y, 0)T に取るとき,z 軸周りの慣性モーメントは となる. = Iy = Ix

有用な定理 2:直交軸の定理 直交軸の定理 (perpendicular axis theorem) 有用な定理 2:直交軸の定理 直交軸の定理 (perpendicular axis theorem) 平面板上の任意の点 O を通り,板に垂直な軸周りの慣性モーメントは,平面内の O を通り直交する2軸周りの慣性モーメントの和に等しい.

特定物体の慣性モーメントを求める 以上の考え方を使って特定物体の慣性 モーメントを求められる. 例) 右図の物体の軸 L 周りの慣性モーメ ントを求める. 円柱や直方体の 重心周り の慣性モー メントは,積分の計算 により求まる. この計算の中で 直交軸の定理 を活用. ( 結果が教科書の表 6・1 に出ている) 平行軸の定理 を使えば,右図の 軸 L 周り の部分ごとの慣性モーメントが分かる. さらに,「全体の慣性モーメント=部分の慣性モーメントの和」であるから,求まった 部分ごとの慣性モーメントの合算 により全体の慣性モーメントが求まる. L