理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
キー・コンピテンシーと生きる 力 キー・コンピテンシー – 社会・文化的,技術的道具を相互作用的に活用する力 – 自律的に行動する力 – 社会的に異質な集団で交流する力 生きる力 – 基礎・基本を確実に身に付け,いかに社会が変化しようと, 自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え, 主体的に判断 し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力.
Advertisements

日本の高校における英語の授業は 英語でがベストか? A13LA161 文学部2年 米山里香子 英語で授業を行うべきではない.
社会システム論 第 1 回 システムとは何か 大野正英 経済学部准教授. この授業のねらい 現代社会をシステムという視点から捉 える。 社会の複雑さをシステムというツール を用いることによって、理解する。
インドネシアの高等教育における 日本語教育の現状と問題 Wawan Danasasmita インドネシア教育大学( UPI )
言語教師としての 役割と認知 平成 21 年度教員免許状更新講習 3 共立女子大学 02/08/2009 笹島茂 1.
教育と発達. 能力とは何か(まとめ) 能力=何かできること 教育との関連での条件 – 価値ある能力であること – 訓練で発達可能であること – 教えることが可能であること ふたつの階層性 – 価値的な階層 – 発達の規定性としての階層.
日本語教授法 & 日本語教育とは  外国語としての日本語、 第二言語としての日本語 についての教育の総称である。
日語課程設計與研究 (大学院) 2月15日(水・三)~  担当 神作晋一.
言語教育論演習プレゼン課題 A11LA042 鴨井みのり
日本語教育学臨地研究 香港大学 派遣期間:2006年9月15日~29日
情報モラル.
日本語教育における 発音指導の到達目標を考える
8 人間関係の中で育つ −社会性の発達−.
      特別支援学校 高等部学習指導要領 聴覚障害教育について.
自律学習と動機づけ 教育心理学の観点から 2011/2/19 上淵 寿 (東京学芸大学).
三重大学教育学部 附属教育実践総合センター 須曽野 仁志
11章 家族ストレス論的アプローチ 家族ストレス論:災害研究、医学・精神医学の家族研究、家族危機に関わる社会学研究から始まる
明示的知識とコミュニケーション能力: 文法指導の意義と位置づけに関する提案
日本の高校における英語の授業は英語でがベストか?
情報は人の行為に どのような影響を与えるか
校内研修会 自己への気付きを基にした 児童生徒理解の方法
プレゼン資料(進行者用・研修者用) 校内研修会 学級の人間関係づくり② ~ SSTとアサーショントレーニング ~
比較文化A(2) 異文化間コミュニケーション
日本の高校における英語の授業を 英語で行うべきか
通訳の原理 理解→転換→表出のプロセスについて.
日本における多文化共生社会の可能性 「国際理解教育」の取り組み
日本語教育は 多言語化した日本語を教えられるのか
論文名 海外で活動する日本人日本語教師に望まれる資質 -グラウンデッド・セォリーによる分析から- 著者 平畑 奈美 書誌情報
細川 英雄 早稲田大学大学院日本語教育研究科
第3回 説得コミュニケーション& プロパガンダほか ( ) 担当:野原仁
教師教育を担うのは誰か? 日本教育学会第70回大会ラウンドテーブル 2011年8月24日 千葉大学 2108教室
日本学術会議の新しいビジョンと課題 学アカデミア信頼の確立: 21世紀のパラダイム
『談話研究と日本語教育の有機的統合のための
~私たちはことばを使って何をしているか~ 学びLIVE2006/6/18 東洋大学 三宅和子
言葉を用いた革命の試み 東北学院大学 小宮友根.
細川 英雄 (言語文化教育研究所・代表/早稲田大学名誉教授)
複言語・複文化状況における日本語教育 -ことばの教室で私たちがめざすもの
平成12・13・14年度 文部科学省教育研究開発学校指定
1.情報文化の枠組み 情報と文化 情報 文化 情報文化.
日本言語政策学会第7回大会 2005年11月19日(京都大学) 西山教行(京都大学)
校内研修プログラム 研修1 ~外国語教育についての理解を深める~
経済学部 岸本寿生 社会科学への誘い 経済学部 岸本寿生
小中連携を進めるために! 外国語教育における 三つのステップと大切にしたいこと 岐阜県教育委員会 学校支援課
考えるための日本語 考えていることをことばにする 2
ソーシャルワークの価値と倫理 ~国際ソーシャルワーカー連盟の議論を踏まえて~
『談話研究と日本語教育の有機的統合のための
特別企画:「水谷修先生等を偲ぶ」 「水谷修先生・土岐哲先生・平井勝利先生と日本言語文化専攻」
基礎科学としての海外日本語教育学確立に向けて
3言語×3視座: 外国語学部とグローバル教育センターが 目指す人材育成
「日本語教育プログラム論」 構築に向けての提案
心理科学・保健医療行動科学の視点に基づく
多文化共生社会への取り組み: 多文化共生教育の現状 2
『組織の限界』 第1章 個人的合理性と社会的合理性 前半
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
情報文化の枠組み 情報と文化 情報 文化 情報文化.
教育と発達.
呂 雷寧 RO, Rainei (上海財経大学 外語学院・ 常勤講師)
広報・PR論入門 -岐阜大学をケーススタディに-
イノベーションと 異文化マネジメント 法学部国際ビジネス法学科          08ed037m 佐藤 雅史.
韓国人日本語学習者による多義動詞の習得における母語の影響 ―典型性と転移可能性の観点から―
図15-1 教師になる人が学ぶべき知識 子どもについての知識 教授方法についての知識 教材内容についての知識.
文脈 テクノロジに関する知識 教科内容に関する知識 教育学 的知識
感覚運動期(誕生~2歳) 第1段階 反射の修正(出生~約1ヶ月) 第2段階 第1次循環反応(約1ヶ月~4ヶ月)
英語音声学 前期・木1・CALL1 担当:福田 薫
考えるための日本語 インターアクションとは何か 2
学習指導要領の改訂 全国連合小学校長会 会長 大橋 明.
Presentation transcript:

理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄

講義スケジュール ことばとは何か-思考・表現・コミュニケーション 文化とは何か-社会・文化・場面 ことばと文化の関係-文化リテラシーとしての言語習得 総合活動型日本語教育のめざすもの ことばと文化はなぜ統合されなければならないのか 言語教育のめざすもの

2.文化とは何か 社会 ・ 文化 ・ 場面

4. 「異文化」という名のステレオタイプ 例(+):日本人は親切である 例(-):日本人はいじわるである 集団の類型化とステレオタイプ(ST) 一人一人の個人が見えなくなる

認識によるレッテル貼りの宿命からは 逃げられない STの原型:○○さんは,親切/いじわるだ。 ST脱却の方法 集団類型化への自覚 1対1対応のコミュニケーションの重要性 人と人との信頼 自らの責任と立場の形成

STと「文化論」との関係 人は「文化」を「文化論」としてしか記述できない。 教室場面でどう考えるか

5. 「個の文化」の形成過程 他者からの刺激(外言+非言語的働きかけ) 個の文化の形成 場面認識+感覚・感情の調整 語彙の選択+内在コード(文法)の発動 言語的領域 文化的領域 外言化

6. 教育パラダイムの転換へ 不可能 「社会」(集団)における物質(モノ)・行動(コト)・精神(サマ)はどのようにして取り出せるのか? (ユリイカ!〈私が見つけた〉という 感覚以外にありえない)

コミュニケーションにおける「場面としての他者存在認識」,としての文化 人は,「社会」を,具体的な場面の中での他者存在として把握する。 「社会」の「文化論」として捉えられた,架空の「社会」としてではない。 人が具体的な他者と出会うのは,コミュニケーション という行為においてのみ。

モノ・コト・サマを集団で括って把握する発想そのものへの反省 「社会」の「文化論」とは,集団社会のモノ・コト・サマ情報解釈である。 集団に属すモノ・コト・サマ情報解釈からは何も生まれない。 集団類型化の危険性。

社会情報解釈としての文化論 〈社会情報解釈としての文化論〉を堅持する限り, 母社会成員の優位性・標準性は,絶対となる。 母語話者・非母語話者という対立関係認識も同じ 結果を生む 「正しい日本語」への反省 「社会」への同化・適応を強制

教育パラダイムの転換へ 「文化」を「社会情報」としてではなく,コミュニケーションにおける「場面としての他者存在認識」と捉えることから,「文化認識」の主体を学習者自身とする視点が確立する。 学習者は,「場面としての他者存在」をどのように認識しているか,そして,その認識をどのように他者へ向けて説得的に外言化するか,ということが学習の中心的課題となる。

関連文献 河野理恵「“戦略”的「日本文化」非存在説-「日本事情」教育における「文化」の捉え方をめぐって」(『21世紀の「日本事情」』2号,2000) 細川英雄「日本語教育と国語教育-母語と第二言語の連携と課題」(「日本語教育」100号,1999) 細川英雄「新しい個の表現をめざして-早稲田大学日本語研究教育センターにおける『総合』の試み」(「講座日本語教育」36分冊,2000) 吉田研作『外国人とわかりあう英語-異文化の壁を超えて』筑摩書房,1995