電解質を添加したときの溶解度モデル – モル分率とモル濃度

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FUT 原 道寛 名列___ 氏名_______
4・6 相境界の位置 ◎ 2相が平衡: 化学ポテンシャルが等しい     ⇒ 2相が共存できる圧力と温度を精密に規定     ・相 α と β が平衡
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
1.ボイルの法則・シャルルの法則 2.ボイル・シャルルの法則 3.気体の状態方程式・実在気体
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◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
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相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
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FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
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◎ 本章  化学ポテンシャルの概念の拡張           ⇒ 化学反応の平衡組成の説明に応用   ・平衡組成       ギブズエネルギーを反応進行度に対してプロットしたときの極小に対応      この極小の位置の確定         ⇒ 平衡定数と標準反応ギブズエネルギーとの関係   ・熱力学的な式による記述.
今後の予定 (日程変更あり!) 5日目 10月21日(木) 小テスト 4日目までの内容 小テスト答え合わせ 質問への回答・前回の復習
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福井工業大学 原 道寛 学籍番号____ 氏名________
(解答) 式(6.12)  Δp = (ΔH / ΔV )×ln (Tf / Ti)
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相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
課題 1 ⇒ V = VW nW + VE nE 溶液の体積を 1000 cm3 とすると、 溶液の質量は?                        水、エタノールの物質量は?
§3.圧力を変えると.
V = VW nW + VE nE ヒント P142 自習問題5・1 溶液の体積を 1000 cm3 とすると、 溶液の質量は?
外部条件に対する平衡の応答 ◎ 平衡 圧力、温度、反応物と生成物の濃度に応じて変化する
K2 = [ln K] = ln K2 – ln K1 = K1.
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
固体→液体 液体→固体 ヒント P131  クラペイロンの式 左辺の微分式を有限値で近似すると?
ヒント (a) P. 861 表22・3 積分型速度式 のどれに当てはまるか? (b) 半減期の定義は?  
ヒント.
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電解質を添加したときの溶解度モデル – モル分率とモル濃度 法政大学名誉教授 西海 英雄 2014.5.14 日本大学工学部

VLE- Px図 相図で最もポピュラー なのはP-x図である ρL[g/L] ○: C4mimTFSA1) VLE- Px図 相図で最もポピュラー なのはP-x図である ρL[g/L] ○: C4mimTFSA1) ●, ▲: DiglymeーC4mimTFSA Diglyme: 49.0 wt% (75.0 mol%) Diglyme: 74.2 wt% (90.0 mol%) ◇, △: Diglyme 2) *: CO2

1. フロン(1)のアルコール(2)-NaOH(3)への溶解度 CO2(1)の溶媒(2)-電解質(IL)(3) のCO2溶解度は? 電解質添加が溶解度に与える影響:次式の変数分離形で表されることを実験的に見つけた        (1) h12は温度依存性の無い固有な定数と考えられる Nishiumi, Kodama, FPE, 362(2014) 187-191

Solvation model 1.塩(IL:3)は不揮発性で蒸発しない 2.溶媒(2)は,IL(3)に配位する 3. 溶解度は1(CO2)とフリー溶媒(1) [会合したものを除く]でのみ決まる. そのため溶解度が減少する.

配位数 Solvation number Ns よって  一方実験式(1)をMaclaurin展開し、(4)式と比較すると すなわち

2. DiglymeーIL溶液へのCO2溶解 (xiベース) IL(3)を添加していくと 溶解度は減少していく

DiglymeーIL溶液へのCO2溶解 (Ciベース) IL(3)を添加していくと 溶解度(c1)は減少していく Ciベースでも xiベースでも 傾向は同じである 実線: pCO20   ◇:pure Diglyme (溶媒2)  ●:xIL =0.035 (仕込濃度)  ●:xIL = 0.10  ●:xIL = 0.25  ●: xIL = 0.50  ○:pure IL(3)

CO2(1)-Digylme(2)-電解質(IL)(3) h12は圧力依存性の無い固有な定数と考えられる 1.CIL がわかれば任意圧力における無次元溶解度 C 1/C10がわかる 2. C2=0.5~2 mol/Lなので Ns= 0.1~0.5 程度 ◆: experimental

3. CH3OHーIL溶液へのCO2溶解 (xiベース)

CH3OHーIL溶液へのCO2溶解 (Ciベース) IL(3)を添加していく と溶解度は減少する。 同圧ではCH3OH中よりも IL中溶解度が小 (逆の結果)

溶媒の分子量の影響 ガスを液で吸収する吸収剤の評価基準: 溶液単位体積当たり[mol/L]、あるいは単位質量[mol/L]あたりの気体吸収量 (溶解度)が大きい吸収剤が望ましい。 CO2が溶媒に溶けるとき   例えば 溶媒がジグライム あるいはCH3OHのように分子量(∝分子のサイズ)が極端に異なるとxi ベースとCi では異なる傾向を示すようになる。

CO2(1)-CH3OH(2)-電解質(IL)(3) 溶媒がDiglymeのように 大きな分子でも CH3OHのように小さな 分子でもh12の値は ほぼ同じでモルベースでは 塩析効果は同様であった。

4.x1-C1(ジグライムーIL溶液へのCO2溶解)

CH3OHーIL溶液へのCO2溶解(x1-C1)

5.実験の測定パラメータ P-x ガスクロマトグラフ → x1、x2、x3・・・ P-x  ガスクロマトグラフ → x1、x2、x3・・・ 密度測定(例:振動法)  物質収支と組み合わせて C1, C2, C3・・・・ 実用的に溶解度[mol/L],あるいは[g/L]が重要なので溶液濃度Ciが重要

6.h12はなぜ系固有の定数か

7. 気相の組成 ILの気相組成は無視できるので 自由度=2 → P, T を固定するとほかの物性は定まる (2成分系と同じ扱い) 気相の組成は?  1.Diglyme系はほとんど気相はCO2 気相にDiglyme,ILが存在しなければ自由度=1 2.CH3OH系はそうはいかないだろう。気相はCO2、     CH3OHがあるはず。自由度=2. 気相組成は?

8.BWR-EOSからのアクセス IL のEOS表示は少し先の問題とする. ★CO2-CH3OH系のmijについて検討する必要があるが多分ある結論を得るであろう ★当面 Diglyme-CO2系VLEの表記について探求 DiglymeのEOS 臨界値(Tc,Pc,Vc)の推算-> 拡張Joback法 一般化蒸気圧式(Tc,Pc,Tb→ω)Tbの実測値 CO2-DIglyme系の気液平衡データ → mij

結論 CO2の溶媒DiglymeあるいはCH3OHへのILC4mimTFSA (1-butyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)amide)への添加は塩効果を及ぼし溶解度は減少する。溶媒のILへの配位モデルで解析でき、ほぼ同じ値の塩効果定数h12で表すことができた。 3成分系以上での溶解度はモル分率ではなく、濃度Ci[mol/L], [g/L]で表すべきである。 そのためには溶液密度の測定が不可欠である。

ご清聴を感謝いたします