第37回ハイリスク児フォローアップ研究会 極低出生体重児の学童期以降の予後 生活習慣病のリスク

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7. 消化器系と代謝. 肝炎 ウイルス性肝炎 A 型肝炎 - 経口感染 B 型肝炎 - 垂直感染( 子宮内感染 ) 、性行為感染 C 型肝炎 - 医原性(輸血、血液製剤等) D 型肝炎 E 型肝炎 - 経口感染 G 型肝炎 TT 型肝炎 肝炎ウイルス以外のウイルスによる肝炎: EB ウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルスなど.
11-2 知っておくと役立つ、 糖尿病治療の関連用語 一次予防、二次予防、三次予 防 1.1. インスリン依存状態 インスリン非依存状態 2.2. インスリン分泌 3.3. 境界型 4.4. グルカゴン 5.5. ケトアシドーシス、ケトン体 6.6. 膵島、ランゲルハンス島 7.7. 糖代謝 8.8.
BODPODの使い方.
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クイズ: 嘘! 本当? Q1:高齢化による筋力低下は、生物学的老化現象であるので、防ぐことが出来ない。 □:嘘! □:本当! Q2:脳の中にある神経細胞の数は20歳ぐらいから一定のペースで直線的に減り続けていき、増えることはないので、如何なる努力によっても脳の老化を防ぐことは出来ない。 Q3:ウオーキングやラジオ体操は低下した体力を回復する効果的な方法である。
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新生児医療の現状   全国と滋賀県 1997年7月25日、県立小児保健医療センターで行われた乳幼児健診従事者研修会での講演に使用したスライドです。 (滋賀医科大学小児科 青谷裕文 作成) ? 新生児は減っているのか? 未熟児は増えているのか? 未熟児はどれくらい助かるのか? (全国では?滋賀県では?)
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春から始める運動習慣!! こんなにあった運動の効果 運動せずには いられない! ①脳活性化効果(認知症予防)
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日本人在胎期間別出生時体格基準値の作成 昭和大学小児科 板橋 家頭夫 分担研究者 研究協力者
骨格筋のインスリン抵抗性が肥満の引き金 1 参考 最近、エール大学のグループは、骨格筋のインスリン抵抗性がメタボリック症候群を引き起こす最初のステップであることを報告した。BMIが22-24の男性をインスリン感受性度で2グループに分け、食事(55%炭水化物、10%蛋白質、35%脂肪)を摂取してから、筋肉のグリコーゲン量をMRI(核磁気共鳴画像法)で調べたところ、インスリン感受性群に比べて、抵抗性群ではグリコーゲン生成が61%減少していた。肝臓のグリコーゲン量は2群間で有意差はみられなかった。しかし、肝臓の
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輸血の生理学 大阪大学輸血部 倉田義之.
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目的  成人喫煙率は、男性喫煙率が30%台となるなど、全体に減少傾向にはあるが、若い女性や未成年者の喫煙対策が課題となっている。特に、妊婦の喫煙は、胎児や乳児に深刻な影響を与え、有効な対策が急務である。  本日は昨年に引き続き洲本市における妊婦喫煙の状況と、加えて、出生体重に対する妊婦喫煙や受動喫煙の影響について報告する。
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メタボリックシンドロームはなぜ重要か A-5 不健康な生活習慣 内臓脂肪の蓄積 高血糖 脂質異常 高血圧 血管変化の進行 動脈硬化
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独立行政法人国立健康・栄養研究所 健康増進研究部 宮地 元彦
福島県立医科大学 医学部4年 実習●班 〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇
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3DSセラピー + すずかけの木新聞 7月号 口腔内除菌療法 保健指導 当院では
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目的  成人喫煙率は、男性喫煙率が30%台となるなど、全体に減少傾向にはあるが、若い女性や未成年者の喫煙対策が問題となっている。特に、妊婦の喫煙は、胎児や乳児に深刻な影響を与え、有効な対策が急務である。  本日は洲本市における妊婦喫煙率や喫煙の害についての知識、受動喫煙の状況、それらに対する対策と効果を報告する。
A-3 女性用 健診結果から今の自分の体を知る 内臓脂肪の蓄積 ~今の段階と将来の見通し~ 氏名 ( )歳 摂取エネルギーの収支
配偶者選択による グッピー(Poecilia reticulata)の カラーパターンの進化 :野外集団を用いた研究
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1. 糖尿病による腎臓の病気 =糖尿病腎症 2. 腎症が進むと、生命維持のために 透析療法が必要になります 3. 糖尿病腎症の予防法・治療法
   健康な体型 1-5-7 大木 桜花.
バイオインフォマティクスII 遺伝子発現データの AdaBoostによる判別
自分のメタボ度を調べてみよう 1.肥満度として、Body Mass Index (BMI)を計算しましょう。 = =
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第37回ハイリスク児フォローアップ研究会 極低出生体重児の学童期以降の予後 生活習慣病のリスク 第37回ハイリスク児フォローアップ研究会 極低出生体重児の学童期以降の予後 生活習慣病のリスク 昭和大学医学部小児科学講座  中野有也

極低出生体重児の成長の特徴 極低出生体重児における成長の制限 極低出生体重児における成長の質の変化 ・極低出生体重児は小柄になりやすい ・肥満や過体重のリスクはむしろ低い (ただし肥満の定義が世界的に一定でないため混乱  隠れ肥満、中心性肥満、隠れメタボは多い?) 極低出生体重児における成長の質の変化 ・Lean body massの減少や、体脂肪蓄積が生じやすい ・内臓脂肪増加や異所性脂肪沈着が生じやすい?

「脂肪組織拡張能」仮説 極低出生体重児 脂肪細胞数減少? 脂肪組織拡張能の低下 インスリン抵抗性が惹起されやすい De Zegher F, et al. Trends Endocrinol Metab 2009; 20(9): 418-23

成人期の脂肪細胞の多少は乳幼児期までにある程度決定される ①肥満は脂肪組織の増大により生じる ②脂肪組織の増大は脂肪細胞数の増加と脂肪細胞の肥大によって生じる ③肥満成人の脂肪細胞の数は痩せ型成人より多い。 ④肥満成人にみられる脂肪細胞数の増加傾向は、乳幼児期にはすでに生じている。 ⑤いったん増えた脂肪細胞の数は減量によっても減らない ⑥減量によって変わるのは脂肪細胞のサイズのみである。 ⑦生後早期までの脂肪組織の発達は将来の脂肪細胞数に影響を与えているかもしれない(乳幼児期までの脂肪細胞数増加は将来の肥満と関連するかもしれない)。 Spalding KL, et al, Nature 2008

予定日までの脂肪蓄積は 主に脂肪細胞数の増加による? 予定日までの皮下脂肪蓄積はアディポネクチン分泌増加に 寄与する → 小型の脂肪細胞数増加に伴う変化? 修正12か月までの脂肪蓄積ではこのような関係は認められない Nakano Y, et al, Early Hum Dev 2014

脂肪細胞数疾病リスク関連仮説(私見) 肥満のリスクは低いが 隠れメタボのリスクは高い (病態は脂肪萎縮性糖尿病と同じ) 子宮外発育不全型 (数十年前の多くの症例) 脂肪細胞数が少ない場合 肥満のリスクは高い メタボのリスクは相対的に低い 子宮外発育不全回避型 (EAN型?) 脂肪細胞数が多い場合 (脂肪蓄積あり) EANが真の成長のポテンシャルを改善させうるのか?    (体組成の改善に寄与できるのか?)

Early Aggressive Nutritionは体組成を是正する? 若年成人期の 極低出生体重児の生後3週間において 蛋白摂取量が 1g/kg/day 増えるとごとに・・・ Lean body massが 11.1% 増加 安静時エネルギー消費量が 8.5% 高い (Matinolli HM, et al. J Nutrition 2015; 145: 2084-91 から引用し作図) 早産極低出生体重児におけるNICU退院時までの縦断的な体組成評価     Lean body massの増加 → 修正12か月の発達指数改善     体脂肪量の増加 → 修正12か月の発達指数と有意な関係なし 生後最初の1週間の蛋白摂取量およびエネルギー摂取量 → Lean body masの増加と正の相関(体脂肪量とは関連しない) (Ramsel SE, et al. J Pediatrics 2016; 173: 108-115)