Ver.4 平成29年4月 資産評価と減価償却    全国土地改良事業団体連合会.

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ver.4 平成29年4月 資産評価と減価償却    全国土地改良事業団体連合会

資 産 評 価

資産評価とは 資産の金銭価額を算定すること 有形固定資産 無形固定資産 所有土地改良施設等 土地改良区事務所建物・敷地 事務機器 公用車 建物・土地、車両、工具・器具等 揚水機場・敷地 水路などの土地改良施設  資産とは、現金や建物、土地、土地改良施設など一般的に財産と呼ばれる物をいいます。土地改良区の所有物は大切な資産です。  なお、国県から土地改良施設の管理を受託した場合、無形固定資産たる「受託土地改良施設使用収益権」を得たものとして資産と扱われます。土地改良区が所有権を有している施設ではありませんが、土地改良区が管理権に基づき第3者に他目的使用許可をした場合、土地改良区は第三者が支払う使用料を収入することができます。収入を生むものは土地改良区にとって資産です。  そして資産評価とは、これら資産の金銭価額を算定することです。 ・受託土地改良施設使用収益権 国及び都道府県等からの管理受託施設に係るもの ・ソフトウェア ・地上権 無形固定資産

資産評価の必要性 平成23年4月1日以降 単式簿記方式 複式簿記方式採用 土地改良区が所有権を有する資産額を計上するものとする。  土地改良区が管理する土地改良 施設については、通常、処分対象となるものでないことから、 「土地改良資産として扱われず」 「財産目録から除かれて」 いた。  土地改良区が所有権を有する資産額を計上するものとする。 ◆ 土地改良施設の資産評価の必要性  これまでは、土地改良区が管理する土地改良施設については、通常、処分対象となるものでないことから、財産目録に登載される資産とは観念されず財産目録への登載対象からは除かれていました。  しかし、これでは、本来の土地改良区の財産が幾らあるのか、見当がつきません。およそ財産のあるところにあっては、こうした土地改良資産を見積もった財産目録を作らなければならないと思います。  土地改良区会計基準においては、土地改良区が所有権を有しているものだけでなく、国や県から管理を受託している資産も「受託土地改良施設使用収益権」として貸借対照表に記載することを基本としています。  土地改良区が、維持管理計画書に基づき管理している土地改良施設について、その減価償却による資産額推移を把握することが、土地改良区運営において重要な事柄であるためです。  これからの土地改良施設の管理においては、資産額の推移に留意しつつ、突発的な事故に備えて、また、施設の機能を保全するため、また、将来に必要となる修繕費や更新費を的確に把握して、組合員の合意により所要額を毎年積み立てるなど、土地改良区の運営に反映させることが重要となってきています。  突発的な事故に備えて、また施設の機能を保全するため、将来に必要となる修繕費や更新費を的確に把握して、所要額を毎年積み立てる根拠となる。

複式簿記と資産評価 単式簿記方式 複式簿記方式 1.現金主義による 1.発生主義による 2.減価償却費、固定資産 2.所有土地改良施設等を資 2.減価償却費、固定資産   の減損及び有価証券評価  損のような資金の収支(現  金の収支)に影響を及ぼさ ない費用については、そも  そも記帳対象とならない。 単式簿記方式 1.発生主義による 2.所有土地改良施設等を資  産として計上、管理権である  「受託土地改良施設使用収   益権」も資産として計上 3.資金の収支に影響を及ぼ   さない減価償却費や固定資   産の減損分についても毎期  費用として計上する仕組み 4.資金管理とともに資産管理  も同時に行うことができる 5.土地改良区のもつ財産の  増減状況を的確に把握でき  る。 複式簿記方式  単式簿記方式による会計においては、現金主義であることから減価償却費、固定資産の減損及び有価証券評価損のような現金の収支に影響を及ぼさない費用については支出として計上されませんでした。このように純損益が整理できない仕組みを持っていることからも、不完全な会計といえます。  一方、複式簿記方式による会計においては、所有土地改良施設等についても資産として計上し、減価償却費や固定資産の減損分についても毎期費用として計上する仕組みとしており、資金管理とともに資産管理を一体的に行うことができ、土地改良区のもつ財産の増減状況を的確に把握することができます。  「なお、土地改良区が管理する土地改良施設の適正な維持管理を行うためには、組合員の合意により、将来の更新時期に備えた更新事業費又は更新事業負担金等の事前積立を行っておくことは大切です。複式簿記方式による会計において、固定資産については毎年度減価償却を行い費用として計上することと併せた取り組みとして、将来の更新事業負担金について事前積立の取り組みを行うことが推奨されています。 複式簿記方式であれば資産の評価額とともに減価償却額も明らかであり、組合員に対して減価償却費の範囲内において将来の更新時期に備えた積立てをすることの必要性を説明することが容易になります。」

国通知(土地改良区会計基準)における 資産評価方法-1 土地改良施設台帳等の登載価額に基づき評価 国営造成施設 国から土地改良区への譲与財産 土地改良施設台帳等の登載価額に基づき評価 県営造成施設 県から土地改良区への譲与財産  土地改良区会計基準の別紙2の2に「土地改良施設の評価方法」が規定されています。  土地改良区が所有する施設のうち、国営及び都道府県営造成土地改良施設については、原則として土地改良施設台帳等に登載された価額に基づき評価します。  土地改良区が造成した施設については、関係の台帳に価額の登載がある施設はそれに基づき評価します。  価額の登載がない施設にあっては、土地改良区において重要と判断する施設について評価します。 「古い時代の造成」とありますが、あまりに古く、20年以上経っているような土水路など、耐用年数を経過した施設の評価額は、備忘価額である1円となります。  なお、土地改良区が補助金等を受けて造成した土地改良施設の評価方法においては、造成価額または、取得価額のうち補助金等を除く土地改良区の純負担額をもって計上することとし、補助金等の情報は、「財務諸表に対する注記」において補助金相当額を掲示することにしています。このことにより、財務諸表の閲覧関係者は、土地改良施設の全体額を把握することが可能となります。 土地改良施設台帳等の登載価額に基づき評価 区営造成施設 台帳に価額登載があるもの 土地改良区が重要と判断する施設について評価 区営造成施設 古い時代の造成等で価額登載がないもの

造成主体別土地改良施設と価額評価  この表は、貸借対照表に計上する、評価額の「登載価額原則」について、国の通知に示された評価ルールを一覧に整理したものです。国県の補助対象とならない土地改良施設の評価については、土地改良区が重要と判断するものについて価額評価することが認められています。なお「重要と判断するもの」とは、土地改良区が今後とも定期的な整備補修等を必要と判断する基幹的な施設とされています。  なお、土地改良区において「重要でないもの」については、資産評価対象としないことも土地改良区の判断とされており、資産評価は広く土地改良区の裁量に委ねられています。

国通知(土地改良区会計基準)における 資産評価方法-2 土地改良区会 計 基 準 第3の5 資産の貸借対照表価額 有形固定資産 ・現在価額は、取得原価から減価償却累計額を控除した価額をもって貸借対照表価額とする。 ・有形固定資産の取得原価には、原則として当該資産の取引費用等の付随費用を含める。 ・償却済の有形固定資産は、除却されるまでその備忘価額で記載する。 無形固定資産 ・無形固定資産については、当該資産の取得のために支出した金額から減価償却累計額を控除した価額をもって貸借対照表価額とする。  土地改良区会計基準の第3の5「資産の貸借対照表価額」の(4)~(6)に固定資産の評価について記載されています。  有形固定資産、無形固定資産、無償取得資産について基本的な取扱いを定めています。 無償取得資産 ・贈与その他無償で取得した資産については、公正な評価額をもって取得原価とする。

国通知(土地改良区会計基準)における 資産評価方法-3 造成価額 (取得価額) 土地改良区の負担割合    減価償却累計額 評価額 施設評価額の算定原則 土地改良区が重要施設と考える、 価額の登載がない施設 再調達価額、近傍類似の価額判明施設からの類推等による ※古い時代の造成物は資産評価の対象としない判断もある 資産の評価額  資産の評価は、原則として造成価額又は取得価額から減価償却累計額を控除し、土地改良区が負担した割合を乗じた価額(土地改良区負担額)を評価額とします。  国営及び都道府県営造成事業によるもの以外で取得した資産については、これらの価額が不明な場合が考えられます。そこで、関係の台帳に価額の登載がある施設はそれに基づき、価額の登載がない施設には、土地改良区が今後も定期的な整備補修等を必要と判断する基幹的な施設について資産評価をします。但し、その施設が造成から耐用年数を経過している場合などは、備忘価額の1円となります。  この評価とは、会計上の評価額であり、施設そのものの価値とは違います。 1.土地については近傍又は近隣の固定資産税課税標準額や近傍類似の土地評価額により類推する方法、 2.構造物については再調達価格における把握や近隣類似の施設における造成価額をもとに比較評価する方法、 3.あるいは、造成時期を勘案し、耐用年数を経過した施設として、資産評価の対象としない 等がありますので、土地改良区で使いやすい方法で評価してください。  また、寄付によって受け入れた資産の評価については、原則として寄付時点において評価するものとしますが、重要性が乏しい場合にあっては、寄付者からの申告価額に基づく評価により処理することができます。 寄付による施設 寄付時点の価額把握に基づき算定原則により算定するか、寄付者からの申告により処理する方法

資産評価の実際 ~土地改良施設及び土地改良施設用地等の評価作業例~ 参考とした書簿等 ・土地改良事業計画書(維持管理計画書) ・事業成績書  資産評価の実際 ~土地改良施設及び土地改良施設用地等の評価作業例~ 参考とした書簿等   ・土地改良事業計画書(維持管理計画書)   ・事業成績書   ・施設管理再編整備計画書   ・小用排水路工事契約書     ・固定資産税課税評価額(土地評価の参考)     ・路線価または標準宅地価格     ・取得価額が不明の場合は、国の価額推計手法参考     ・類似施設価格を参考   岩手県のある土地改良区の評価作業の例を紹介します。  1年をかけて土地改良施設の名称、造成年度数量、造成価格を保管している資料から担当職員5名で拾い出しを行いました。  参考資料として、「土地改良事業計画書(維持管理計画書)」、「事業成績書」、「施設管理再編整備計画書」、「小用排水路工事契約書」でした。その他参考資料として、「固定資産税課税評価額」、「路線価または標準宅地価格」などがあります。 ◆評価手順は、  「所有土地改良施設」と「受託土地改良施設使用収益権」に分類  「土地改良区負担額」と「国庫補助金等相当額」に分類  そして「土地改良区負担額」について、施設の経過年数に応じた減価償却費計算を行って貸借対照表登載価額を求めました。 評価手順 ・所有土地改良施設と受託土地改良施設使用収益権を分ける。         →土地改良区負担額と国庫補助金等相当額を分ける。             →土地改良区負担額について、減価償却費計算を行う。

施設別の耐用年数 「土地改良区会計基準」別紙2の2の(3)減価償却の方法 によると <水路> <揚水機場>  「土地改良区会計基準」別紙2の2の(3)減価償却の方法 によると  耐用年数については、関係行政機関が示している耐用年数を参考として、施設の種類毎に土地改良区において決定することになります。  なお、耐用年数の決定に当たっては、個々の施設毎に決定する方法と施設グループ毎に決定する方法とがあります。   ここで示した耐用年数は、農林水産省の経済効果測定に係る通知「土地改良事業における経済効果の測定に必要な諸係数について(昭和60年7月1日付け60構改C第690号 農村振興局長通知)」で示された標準耐用年数を基にグラフにしたものです。この通知で示された施設別の標準耐用年数データが減価償却額の計算において用いられるものとなります。  なお国営事業の場合、当該事業により整備される施設並びに当該事業の受益地内で一体的に効用が発揮される施設においては、耐用年数を個々の施設毎個別に捉える手法でなく、一つの土地改良事業によって造成された土地改良施設群と捉え、当該事業の費用対効果の算出方法を踏まえ、耐用年数を「工事完了後40年」と設定することも一つの方法です。 農林水産省「土地改良事業における経済効果の測定に必要な諸係数について」に基づき編集

総合耐用年数の適用例 ある土地改良区連合で実際に採用している小水力発電所資産の耐用年数設定のケースを紹介します。  ある土地改良区連合で実際に採用している小水力発電所資産の耐用年数設定のケースを紹介します。  ここでは発電所を「発電専用建物」と「発電専用構造物」と「発電専用機械装置」の3つの勘定科目(資産に属する勘定科目)に分けて、さらに、その内容を構成する設備等に係る耐用年数により、それを、加重平均した結果求められた総合耐用年数を採用しています。なお、これらの計算により算出した年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。償却金額は1円未満切り捨てています。

取得費と付随費用 取得価額に含む ◆取得価額  当該建物等を取得して事業の用に供するために投下された資金の総額です。建物等を購入した場合の取得価額には、建物等自体(附属設備も含む)の対価のほか、消費税、購入手数料、測量・登記費用等、当該建物等の取得のために要した付随費用も含まれます。 なお、消費税について、税抜き会計を採用されている場合は、支払った消費税を仮払い消費税として扱い、取得価額には含まれません。

施設の改修と修繕の判断 (資本的支出と修繕費) 管路埋設工事 側溝補修、建物全面塗装工事 解体工事(庁舎、道路、水路等) アスベスト除去、法面補修工事、 落石防止工事、配水管移設工事 水路補修工事、池沼堤防修理工事 汚水処理施設部品取替  耐震補強工事、冷暖房等                                   道路舗装の全体やり直し 側溝新設、歩道新設、   バリアフリー工事 フェンス、外構物設置工事  トイレ洋式化工事 固定資産の増額あり 資本的支出(改良) 修 繕 費 国税庁の定義によると ◆ 資本的支出 その有する施設の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額を資本的支出といいます。  貸借対照表の「資産の部」に組み入れられます。 ◆ 修繕費  その有する施設の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又は、き損した施設につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額を修繕費といいます。 修繕費のキーワードは「通常の維持管理」「現状回復」、資本的支出のキーワードは「価値・耐久性を増す」。 つまり、固定資産の改善・改良というパワーアップのための支出が資本的支出で、別に今の機能や耐用年数が変わらないのであれば、修繕費ということになります。 固定資産の増額なし ※上記は、いわゆる社会資本一般に関する工事支出に関し、資本的支出に   当たるかどうかを、国税庁資料から例示したもの

財務諸表に対する注記 ◆土地改良区会計細則例第9条の備考の2 ◆ 土地改良区会計基準(抜すい) 様式7(抜すい) 第5 財務諸表に対する注記 ◆ 土地改良区会計基準(抜すい) 第5 財務諸表に対する注記 1 財務諸表には、次の事項を注記しなけ  ればならない。(注1-4) (1)資産の評価基準及び評価方法、固   定資産の減価償却方法、引当金の計   上基準等財務諸表の作成に関する重   要な会計方針 (2)重要な会計方針を変更したときは、そ   の旨、変更の理由及び当該変更による    影響額 (3)基本財産及び特定資産の増減額並   びにその残高。 (13)・・・・ ◆土地改良区会計細則例第9条の備考の2 様式7(抜すい)     財務諸表に対する注記 1 重要な会計方針 (1)資産の評価基準及び評価方法  (2)有価証券の評価基準及び評価方法 (3)棚卸資産の評価基準及び評価方法 (4)固定資産の減価償却の方法   ① 土地改良施設等の減価償却の方法   ② その他固定資産の減価償却の方法  土地改良区会計基準第5に「財務諸表に関する注記」の規定があります。  財務諸表等の様式については、土地改良区会計細則例第9条第2項で定められています。  資産の評価において土地改良区の判断で採用した特別な取扱いがある場合は、この注記にその旨を記すことが必要です。

財務諸表に対する注記(例:有形固定資産について) ◆ 対象となる固定資産の取得価額が判明し    ない場合  ① 「○○水路については、取得価額が不明   のため、国の価額推計手法によった。」  ② 「○○支線水路については、価額推計に    おいて情報不足(取得年度不明)のため、   当面、推計対象外とした。」          <数年後>  ② 「○○支線水路に付いては、取得年度が    判明したことから、価額推計において平成    元年取得資産として①同様に資産推計し    た。  注記例(抜すい) 様式7 1 重要な会計方針 (1)資産の評価基準及び評価方法   取得価格が不明な一部資産の評価に当  たっては次による。  ① 宅地及びその従物:平成24年度   固定資産税課税評価額を参考にする。  ② 所有土地改良施設:類似施設価格   による。  ③ 土地改良施設用地等:平成24年度固   定資産税課税評価額を参考にする。   または、路線価、または、標準宅地価格   ×地積×10% による。      (2)・・・・・ (3)・・・・・ (4)固定資産の減価償却の方法   新減価償却制度を採用し、定額法による減  価償却を平成25年度より実施している。過年   度分について経過期間に応じた減価償却累  計額を求めている。   なお、貸借対照表価額は直接法による。  会計細則例第9条別添2の様式7が「財務諸表に対する注記」となっています。  この中の、1の(1)が資産の評価基準及び評価方法について、(4)が固定資産の減価償却の方法について記載するものとなります。例示してみました。  右の例は、対象となる固定資産の取得価額が判明しない場合について例示しました。  数年後の時点で、評価を行ったときには、例示のように記載することになります。  このように、資産評価は、必ずしも対象となる施設全部が完了している必要はなく、確認できた施設から計上し、他の施設については、後年の判明時点で追加計上する手法があります。  「財務諸表に対する注記」にそうした取扱いを明記して、閲覧者に財務諸表に対する注意を促すものとなります。

減 価 償 却

減価償却の方法-1 算定手法は、右のいずれかによる 定額法 定率法 耐用年数 施設の種類に応じて土地改良区で決定する 個々の施設毎に決定する方法と管理グループ毎に決定する方法があるが、その採否も土地改良区の判断による  減価償却の算定方法は、定額法又は定率法のいずれかの方法によることとし、土地改良区の任意で選択できますが、いったん選択した償却方法については、継続的に適用しなければなりません。  定額法は、償却費の額が原則として毎年同額となります。  定率法は、償却費の額は、はじめの年ほど多く、年とともに減少していきます。ただし、定率法の償却率により計算した償却額が、償却補償額(減価償却額の最低基準)を下回った年からは、定額法になります。途中から定額法に変えないで定率法のまま計算していくと耐用年数内に償却しきれなくなるためです。  減価償却の仕訳と表示の手法には「直接法」と「間接法」の二つの方法がありますが、土地改良区会計基準では直接法を採用しています。  直接法の仕訳は、減価償却費を当該資産額から直接減額する方法です。 仕訳と表示の手法 直接法 間接法 土地改良区会計基準は、こちらを採用

減価償却の方法-2 一時の支出を、何年かに分けて費用化すること 4月1日 自動車300万円で購入、耐用年数6年 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 50万円 49.9999万円 自動車    4月1日 自動車300万円で購入、耐用年数6年 300万円 支 出 減価償却の方法:定額法、直接法  建物、土地改良施設、車両などの固定資産は、使用することによって年々価値が減っていきます。そこで、決算において会計期間中に生じた価値の減少分を見積り、その分だけ固定資産の帳簿価格を減少させるとともに、同額を費用として計上します。こうした手続きを減価償却といい、減価償却によって支出計上される金額を減価償却費といいます。  耐用年数は、土地改良施設に関しては、「土地改良事業における経済効果の測定に必要な諸係数について」という通知がありますので、これを参考とするほか、物品的なものについては国税庁が示している耐用年数表を参考としてください。  たとえば、一般の自動車の耐用年数は6年です。丁寧に使えば10年以上は使えますが、6年間で費用負担しなさい、と決められています。勝手に耐用年数を変えたら、自由に節税ができて、不公平が生じるため、国が一律に決めたわけです。あくまでも資産評価のための年数です。 <参考> 耐用年数表(国税庁) https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34353.php 購入時の仕訳  ×1年 4月1日  車両運搬具 3,000,000 / 現金預金 3,000,000 1年目減価償却時の仕訳               ×2年 3月31日 車両運搬具減価償却費 500,000                                        / 車両運搬具 500,000

減価償却の方法-3 取得原価、耐用年数、備忘価額 耐用年数 取得原価 備忘価額 1.取得原価:固定資産の購入に掛かった金額  減価償却とは何か、例えば、取得原価1億円で店舗ビルを買って商売を始めたとしましょう。そして今年の決算では1億円全部を支出に充てたので大赤字になってしまった。さて翌年はどうか・・・?  翌年はビルの支出は何もないから(維持費だけだ)、タダでビルを使って商売したことになります。だから収入(収益)がでやすくなる。・・・でも、誰だってこれは変だと思いませんか。 1.費用配分の側面  ビルは長年にわたって使うものであり、1年かぎりの消耗品ではありません。「使う年数に応じて少しずつ支出(費用)にすべきだ」、と考えます。その何年かに分割された支出(費用)のことを減価償却費と呼び、正味財産増減計算書に計上します。 わかりやすく言うと、減価償却とは買ったときに一度に支出と(費用に)しないで、毎年少しずつ費用に分ける、というごく自然な考え方です。これが減価償却における費用配分の側面であり、正味財産増減計算書に表れます。 2.資産評価の側面  さて、1年目が終わったときにもビルは現物として残っています。これは自社の所有物であり、資産です。年度末には、金額に評価して貸借対照表に載せなくてはなりません。  では何円と評価すればよいのか? ビルの1年後の価値はというと、ピカピカに手入れされていても購入時より価値は下がっています。その減った分とは幾らだろうか?それはどう見積もるのだろうか?難しく考える必要はありません。単純に耐用年数に応じ費用に計上した分だけ、と考えればいいのです。つまりビルの価値は毎年、減価償却費の分だけ減るのです。 『1億円-毎年の減価償却費の額 』として貸借対照表に計上します。これが減価償却の資産評価の側面です。 <参考:キャッシュフローを考慮した見方> 3.資金回収の側面  こうして見ると、結局、減価償却費と言っても初期の購入代金の後計上にすぎないのだから、減価償却費という現金が出ていくわけではありません。(実際現金は買ったときに100%支払い済みです。) 減価償却費という請求書はきません。  つまり現金の支出が伴わない費用を計上したわけです。  正味財産=収入-支出(中に減価償却費が入っている)、であるから、結局は毎年「収入+減価償却費」の分だけ資金回収されていることになります。つまり、減価償却という会計的手続により、過去の投資額を間接的ではありますが、毎年少しずつ回収している、というのが資金回収の側面です。 備忘価額 1.取得原価:固定資産の購入に掛かった金額 2.耐用年数:固定資産の経済的利用可能年数 3.備忘価額:その固定資産を耐用年数まで使用したときに残っている価値=1円 ※残存価額という語が会計関係の資料に散見されますが、これは平成19年の税制改正前の用語で、資産価額の10%相当は、減価償却対象とはされていなかった時代、未償却の部分を指す用語です。税制改正後の現在は、減価償却は1円(備忘価額という。)を残すまで償却が認められています。

減価償却費の計上-1 平成29年3月31日 平成28年度期末決算整理事項として○○幹線用水路(鉄筋コン 平成29年3月31日 平成28年度期末決算整理事項として○○幹線用水路(鉄筋コン クリート製)の今期分減価償却の考え方。  ・取得年月             平成4年4月1日  ・取得価格             31,600,000円  ・土地改良区負担割合     20%  ・土地改良区負担額      31,600,000円×20%=6,320,000円  ・耐用年数         40年  ・減価償却方法         定額法、直接法 ① 前年度までの経過年数   平成4年から平成27年まで=24年 ② 残耐用年数          40年-24年=16年 ③ 年減価償却額         6,320,000円÷40年=158,000円 ④ 前期までの減価償却額   158,000円×24年=3,792,000円 ⑤ 前期末の価額         6,320,000円-3,792,000円=2,528,000円 ⑥ 今期減価償却額        2,528,000円÷16年=158,000円 ⑦ 今期末の減価償却累計額    3,792,000円+158,000円=3,950,000円 ⑧ 今期末の価額         2,528,000円-158,000円=2,370,000円                               まず、取得年月と耐用年数を比較します。今回は平成4年度から27年度までの経過年数が24年の経過なので、あと、耐用年数は16年間あるのでまだ減価償却できます。   なお、耐用年数経過施設の場合は価額は「1円」となり、減価償却の対象とはしません。  次、年減価償却額を求めます。償却方法は、定額法で償却しています。  ・減価償却をする際の考え方の順番として   ⑤ 前期末の価額の確認   ⑥ 今期の減価償却費の算出   ⑦ 今期末の減価償却累計額の算出   ⑧ 今期末の価額が算出される   となります。  この例題では、③の年減価償却額を求める際、耐用年数の40年で除していますが、「水土里ネット会計」システムでは、国税庁が示す償却率を採用しているので、高めに出ることがあります。

減価償却費の計上-2 ~仕訳と精算表~ <仕訳> 3/31 所有土地改良施設減価償却費 158,000 / 所有土地改良施設 158,000 <仕訳>     3/31 所有土地改良施設減価償却費 158,000                               / 所有土地改良施設 158,000 精 算 表  土地改良区会計基準においては、土地改良資産価格から直接減額する直接法を採用していることから、このように仕訳され、直接、所有土地改良施設から減額しています。  次に、精算表への反映状況を見てみましょう。  項目が、試算表、修正記入欄があり、正味財産増減計算書、貸借対照表となっています。  所有土地改良施設の試算表の欄には、前期末の所有土地改良施設の価額を転記します。  次に、修正記入欄です。ここには、期末決算整理事項として3月31日付けで仕訳した今期分の減価償却として、「所有土地改良施設減価償却費」の行の借方に158,000円転記します。  一方、資産の減少であることから「所有土地改良施設」の行に同額の158,000円を転記します。  次に、正味財産増減計算書欄です。ここには、支出勘定である「所有土地改良施設減価償却費」158,000円が転記されます。  次に、貸借対照表欄です。減価償却は資産価値の減少ですので、試算表の借方に記載されている前期末の所有土地改良施設の価額から修正記入欄の貸方に記載されている当期の減価償却額を引きます。その価額を借方に記入します。  後は、各々該当する金額を、正味財産増減計算書と貸借対照表に転記するだけです。

~台帳価額未登載施設の資産価額推計方法~ 資産評価(取得価額の推計) ~台帳価額未登載施設の資産価額推計方法~ ◆用水路   ・取得価額    不明   ・造成年度   昭和56年度(1981)    (取得年月日  昭和57年4月1日)   ・構造規模    U型水路 W0.28×H0.29/m              水路延長 500m   ・耐用年数    40年   ・償却方法    定額法、直接法   ・負担割合    20%  台帳価額が不明な施設の取得価額の推計方法について説明します。  価額不明な施設は、主に水路だと考えられます。  台帳価額が不明である土地改良施設の価額推計については、施設の断面積から施工単価を求め、取得価額を推計することができます。  取得価額の推計方法と今期分の減価償却費の計上について説明します。 ただし、価格推計は、造成年度が平成20年度以前の水路のを対象としています。 ◆演習1-1:取得価額の推計方法 ◆演習1-2:平成28年度期末決算整理事項としての用水路の          今期分減価償却費の計上

~台帳価額未登載施設の資産価額推計方法~ 資産評価(取得価額の推計) ~台帳価額未登載施設の資産価額推計方法~  ・演習資料の施工単価表と換算係数か   ら推計します。   まず、分かっていることは、5点です。   ① 「U字フリューム」ということ    ② 内空断面積      W 0.28m×H 0.29m= 0.081㎡   ③ 造成年度  昭和 56年度   ④ 耐用年数  40年   ⑤ 水路延長  500m 円/m  ・資産評価演習資料-2から施工単価を推計     します。  ・内空断面積 0.081㎡から、約 11,000円/m  と読み取れます。  これは、台帳価格未登載による資産価額の推計です。  まず、分かっていることを整理します。  施設は、U字フリューム、内空断面積がx=0.081㎡、造成年度が平成56年度、延長が500m、耐用年数は40年、負担割合は、20%です。  そして、当該施設の取得価額が台帳未登載でした。  この場合、用水・排水の別、水路構造別に標準的な造成価額ラインを導きました。資産演習資料に掲載しています。  ・水路の構造はU字フリュームですから、演習資料の2を使います。  ・続いて内空断面積が0.081㎡ですから、1m当たりの施工単価は約11,000円と読み取れます。  計算で求める場合は、グラフに示されている計算式のとおりです。 鉄筋コンクリートフリュームの場合「施工単価=38,043×内空断面積^0.484」(xの0.484乗)で求めることもできます。  ㎡

~台帳価額未登載施設の資産価額推計方法~ 資産評価(取得価額の推計) ~台帳価額未登載施設の資産価額推計方法~ 演習資料-6 ・昭和 56年度(造成年度)の単価に換算します。   資産評価演習資料-6より 「1.343」で割り  戻します。    11,000円/1.343= 8,190円/m  となりました。 ・取得価額     水路延長 500m× 8,190円/m =4,095,000 円  ・演習資料の6をご覧ください。先に求めた1m当たりの施工単価は、平成21年度時点のものですから、この支出済費用換算係数の表を使い、昭和56年度の単価に換算します。  昭和56年度の支出済費用換算係数1.343で割戻します。これにより、平成56年度の施工単価が推計できました。

資産評価(取得価額の推計) ~決算整理仕訳~ (造成年度 昭和56年度) (造成年度 昭和56年度) ① 取得年月:昭和57年4月1日、 ② 取得価格:4,206,500円 ③ 土地改良区負担割合:20%、 ④ 土地改良区負担額:4,095,000円×20%=819,000円 ⑤ 耐用年数:40年、 ⑥ 前年度までの経過年数:昭和57年から平成27年まで=34年 ⑦ 残耐用年数:40年-34年=6年、 減価償却方法:定額法、直接法、 ⑧ 年減価償却額: 819,000円÷40年=20,475円 ⑨ 前期までの減価償却額: 20,475円×34年=696,150円 ⑩ 前期末の価額: 819,000円-696,150円=122,850円 ⑪ 今期減価償却額: 122,850円÷6年=20,475円 ⑫ 今期末の減価償却累計額: 696,150+20,475円=716,625円 ⑬ 今期末の価額: 122,850円-20,475円=102,375円                              <参考>  精算表  次は、平成28年度期末決算整理事項としての用水路の今期分減価償却費の計上です。  取得価額に土地改良区負担割合を乗じ土地改良区の負担額を求めます。  次に経過年数を求めます。  当該施設は、耐用年数が40年、前年度までの経過年数が34年なので、減価償却費20,475円を計上します。

資産評価演習資料 これは、資産評価演習の資料が添付してあります。

資産評価演習資料-1 遠心力鉄筋コンクリート管(ヒューム管)施行単価 円/m ・平成23年度農村振興局が農政局毎に指導基準、会計基準等の説明時に配布した資料を再編しています。 ・施工単価には、付帯施設(分水工、落差工、管理用道路、安全施設等)の施工、仮設、原型復旧、 工事用地の借地、補償費等に要する費用は含まれていません。

資産評価演習資料-2 鉄筋コンクリートフリューム(U字フリューム)施工単価 ・平成23年度農村振興局が農政局毎に指導基準、会計基準等の説明時に配布した資料を再編しています。 ・施工単価には、付帯施設(分水工、落差工、管理用道路、安全施設等)の施工、仮設、原型復旧、 工事用地の借地、補償費等に要する費用は含まれていません。

資産評価演習資料-3 鉄筋コンクリート排水フリューム、鉄筋コンクリート大型水路、 水路用鉄筋コンクリートL型ブロック施工単価 ・平成23年度農村振興局が農政局毎に指導基準、会計基準等の説明時に配布した資料を再編しています。 ・施工単価には、付帯施設(分水工、落差工、管理用道路、安全施設等)の施工、仮設、原型復旧、 工事用地の借地、補償費等に要する費用は含まれていません。

鉄筋コンクリート板柵渠(V型柵渠)施行単価 資産評価演習資料-4 鉄筋コンクリート板柵渠(V型柵渠)施行単価 ・平成23年度農村振興局が農政局毎に指導基準、会計基準等の説明時に配布した資料を再編しています。 ・施工単価には、付帯施設(分水工、落差工、管理用道路、安全施設等)の施工、仮設、原型復旧、 工事用地の借地、補償費等に要する費用は含まれていません。

資産評価演習資料-5 コンクリートブロック積施行単価 ・平成23年度農村振興局が農政局毎に指導基準、会計基準等の説明時に配布した資料を再編しています。 ・施工単価には、付帯施設(分水工、落差工、管理用道路、安全施設等)の施工、仮設、原型復旧、 工事用地の借地、補償費等に要する費用は含まれていません。

資産評価演習資料-6 ※「21年度基準換算」は、昭和50年度基準換算係数に昭和50年度の係数である1.911を乗じた値である。 平成23年度農村振興局が農政局毎に指導基準、会計基準等の説明時に配布した資料を再編しています。

資産評価演習資料-7 ~土地改良施設標準耐用年数表~

資産評価演習資料-7 ~土地改良施設標準耐用年数表~