土地改良区会計基準と特殊実務 附 「よくある疑問に対応した解説3編」 全国土地改良事業団体連合会 会計コース実践編 特殊実務 ver 4 土地改良区会計基準と特殊実務 附 「よくある疑問に対応した解説3編」 ○○県土連から参りました○○の○○です。よろしくお願いします。 これから、約○○分程度の時間を用いた「土地改良区会計基準と特殊実務」と題した説明を致します。 わかりやすいスライドを用いたものであり、皆様リラックスしてお聞き取りを願います。 全国土地改良事業団体連合会
A 価額不明資産の貸借対照額漸進的計上と「財務諸表に 対する注記」の表記について B 日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への 特殊実務テーマ 1 賦課金徴収に係る仕訳の変化 2 換地清算金に係る勘定科目の設定 3 維持管理適正化事業拠出金等の会計処理 4 会計細則規定と小口現金の処理手法 5 引当金と積立金の取崩し時の仕訳 6 指定正味財産の受け入れ仕訳等 7 所得税の源泉徴収と会計処理 8 消費税の記帳と納税 9 旅費の概算払いと精算 期末決算整理と書簿記帳 発電事業会計の剰余金の繰出と予算統制 よくある疑問に対応した解説3編 A 価額不明資産の貸借対照額漸進的計上と「財務諸表に 対する注記」の表記について B 日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への 反映の異同について C いわゆる赤字決算、負の正味財産の発生について 複式簿記方式による会計実務において、土地改良区会計の特色からくる特別な処理方式があります。 このテキストでは、それら特別な処理について11事項ほどを取り上げています。 これから各事項ごとにスライドで順次紹介していきます。 また、よくある疑問に対応した3編として、複式簿記会計を検討されている土地改良区さんなどからいただいたご質問に対応した際作成した資料も附属しております。 これらも時間の中で紹介してまいります。 (次頁を現す操作)
1-1 賦課徴収に係る仕訳の変化 会計期間 次年度会計期間 賦課金の賦課 納付期限 滞納処分手続 資産名の振替 資産名 ① ② ③ ④ ⑤ 1-1 賦課徴収に係る仕訳の変化 期首 会計期間 期末 次年度会計期間 賦課金の賦課 納付期限 滞納処分手続 延滞金の発生 検査指導基準において、貸借対照表上の科目として右の設定有り。 ①から⑦に至る各段階で、用いる勘定科目に変更が生ずる。会計細則において定めている勘定科目の定義に従う。 資産名の振替 資産名 「長期未収賦課金等」 「未収賦課金等」 まず紹介するのは賦課金にかかる会計処理についてです。 時間の経過、会計期間の移行により仕訳処理が必要となる事があります。 このスライドではその説明をするものとなります。 時間軸が左から右に流れています。 当期において、ある時期に、組合員に納付期限を設定した賦課金の賦課がされました。納付は、その納付期限の範囲内でされる以外に、納付期限を越えたもの、期末を超えてもまだ未納なもの、徴収権の時効が成立する5年に近づいても未納なもの、というように段階があります。 ①から⑦までの各段階の仕訳について見ていきましょう。 (次頁を現す操作) ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ この間の賦課、納付に係る仕訳について次頁に例を整理
納付額分の賦課金債権(未収賦課金等)が減少となる。 1-2 賦課徴収に係る仕訳の変化 ① 組合員に賦課金を賦課したとき 組合員に対する賦課金債権の発生を記帳する。 (借)未収賦課金等 1000 (貸)賦課金収入 1000 ② 納期限内に納付がされたとき 納付額分の賦課金債権(未収賦課金等)が減少となる。 (借)現金及び預金 400 (貸)未収賦課金等 400 ③ 納期限を超えて納付がされたとき 納期限を超えたペナルティとして定められた率で納入日までの延滞金が課される。 延滞金は雑収入となる。 (借)延滞金 5 (貸)雑収入 5 (借)現金及び預金 105 (貸)延滞金 5 このスライドでは①から④の段階までの仕訳を示しています。 まず①です。 組合員に賦課金を賦課したときの仕訳です。この時点で賦課金収入として1000を立てています。現実にはまだ1円も収入していない時点ですから、借方に「未収賦課金等」として、1000が未収状態であると仕訳します。土地改良区にとって賦課金債権の発生を認識するわけです。これが発生主義に基づく整理方法です。 次のスライドでみていただきます。 (次頁を現す操作) (1-2附スライドから戻り、ここから再開) 次に②です。賦課金の一部ですが納付がされました。貸方に「未収賦課金等」として、土地改良区の賦課金債権を納付額分だけ減額する仕訳となります。総勘定元帳、未収賦課金等の残高欄には、この一部納付があった時点でまだ残っている賦課金債権の残高が見て取れるわけです。 次の③です。設定されていた納期限を超えての納付があった場合です。ルールにより延滞金を併せての納付を受けます。 次の④です。まだ賦課金債権の残高が残っている、いまだ未納額があるところ、期末に至りました。ここで当期発生した賦課金債権が年度超えするという事態であり、 「未収賦課金等」から「長期未収賦課金等」に振り替えます。早期に、この勘定科目の残高を0としなければいけないという、管理意識の醸成に役立ちます。 (次次頁、1-3を現す操作) (貸)未収賦課金等 100 ④ 会計年度を超えたことによる資産名の振替 債権管理の便宜のため、「未収賦課金等」勘定から「長期未収賦課金等」に振替える。 (借)長期未収賦課金等 500 (貸)未収賦課金等 500
1-2附 土地改良区会計と企業会計における違い 土地改良区会計 企業会計 発生主義 土地改良区会計と企業会計における違い 土地改良区会計 企業会計 発生主義 賦課金収入の計上は、組合員に賦課をしたときとする(同時に、未収賦課金額を計上する) 実現主義 発生主義の枠内で、収益の認識を、それが確かに実現するものとなる時点まで遅らせる 企業会計においては、発生主義を厳格に貫くと、未実現利益まで計上される弊害が生ずる。 このため収益の計上は、費用の計上よりも慎重、厳格であるべきという保守主義の考え方であり、堅い取り扱いである実現主義がとられている。 土地改良区が組合員に対して行う経費の賦課処分は、法律に基づいたものであり、その未納という事態に対しては、強制徴収手法が制度的に担保されている。 組合員に賦課した時点で早くも「賦課金収入」を計上するというのは性急ではないか、と感じられる方がおられると思います。 これまでの単式簿記方式に基づく記帳は、賦課金納入がなされたその都度、納入済み額に積み増しをしていた。その時点の未納額についての把握は、かって賦課したときの総額を確認し,その額から差し引くことにより未納額を求めていたでしょうから。そうした現金主義のもとでは未納額の認識において不利であり、機動性に欠けるものとなっています。 ところが発生主義に基づいた記帳、賦課した時点で,収入額に掲げるとともに未収賦課金額を掲げる主義は、いわゆるアッパーを決めてかかり、賦課金の納入ごとに、順次、未納賦課金額の残高を減少させていくものであり、今現在の未納額残高の認識が直ちにできるものです。その得られた認識から、必要な対処をとる機動性を とりやすいものといえます。 ここで元のスライド 1-2に戻ります。 (前の頁、1-2を現す操作)
1-3 賦課徴収に係る仕訳の変化 ⑤ 次年度に賦課金の納入があったとき ⑥ 滞納処分を行い換価額を収入したとき 1-3 賦課徴収に係る仕訳の変化 ⑤ 次年度に賦課金の納入があったとき 納期限を超えたペナルティとして定められた率で納入日までの延滞金が課される。 延滞金は雑収入となる。③の処理と同じ。 (借)延滞金 5 (貸)雑収入 5 (貸)延滞金 5 (貸)長期未収賦課金等 100 (借)現金及び預金 105 ⑥ 滞納処分を行い換価額を収入したとき 未納者の資産を差し押さえ、換価して土地改良区の債権額を収入した。 (借)延滞金 50 (貸)雑収入 50 (借)現金及び預金 250 (貸)延滞金 50 (貸)長期未収賦課金等 200 ⑤についてです。 賦課年度を超えて未納にある賦課金債権で、勘定科目は既に「長期未収賦課金等」と振り替わっている状況です。それが某日納付された場合です。 「現金及び預金」で受けて、貸方には「長期未収賦課金等」を記します。土地改良区の債権残高を減少させる仕訳となります。 次の⑥です。 依然として賦課金の未納が解消とならない状況の中で、土地改良区としては時効の完成前に滞納処分手続に入りました。さまざまな形で徴収努力をしてきたわけですが、依然として納入がないため、強制的な債権回収措置に入ったわけです。 滞納者の保有する資産を差し押さえ、公売による換価措置、その公売価額から土地改良区の債権価額を収入したときの仕訳となります。 最後は⑦です。 いかにしても債権の回収が出来ず、万策尽きたというような状況の場合、「不納欠損」処理という重い決断、最終措置があり得ます。勘定科目「不納欠損」を借方として、貸方を「長期未収賦課金等」とし、土地改良区の債権額を残高0とする仕訳です。 賦課金に係る時効が完成した場合、その効力は時効の起算日にさかのぼってその効力を生ずるため、延滞金についても賦課金の時効とともに消滅しますので、この⑦において、(借)延滞金50/(貸)雑収入50 とする仕訳はおこしません。 (次頁を現す操作) ⑦ 賦課金に係る債権を「不納欠損」処理したとき 時効成立のため、やむなく賦課金債権について不納欠損処理とした。 (借)不納欠損 200 (貸)長期未収賦課金等 200
2-1 換地清算金に係る勘定科目の設定 (県営換地の場合) 県営事業 換地主体 ① ④ 土地改良区 ② ③ 換地地権者・組合員 2-1 換地清算金に係る勘定科目の設定 (県営換地の場合) 県営換地において地権者との換地清算金の徴収支払関係は、土地改良区を介して行われるため、必要な勘定科目が設定されている。 県営事業 換地主体 ① ④ 県と土地改良区の間には、未収、未払いの事態は想定できないことから、資産科目、負債科目の設定はしていない 換地清算金 交付金収入 換地清算金納付 金支出 土地改良区 県から収入 清算金の支払い 清算金の徴収、納付 ② ③ 負債勘定科目 換地清算金未払金 換地清算金仮受金 資産勘定科目 換地清算金 未収金 換地清算金支払金支出 換地清算金徴収金収入 県営換地清算金の例により、農水省通知の中で設定されている勘定の使用例を紹介していきます。 換地清算金は、土地改良区営の換地清算であれば、土地改良区と地権者との間の事でありシンプルですが、県営事業の場合の換地清算の場合は、県と土地改良区の関係が加わりますので少し複雑となります。 このスライドで描いているように、土地改良区を中心として県との関係、地権者との徴収支払い関係が想定されます。 ①~④までの収入支出について順次紹介していきます。 (次頁を現す操作) 換地地権者・組合員
2-2 換地清算金に係る勘定科目の設定 ① 県から換地清算金を収入したとき ②-1 清算期限に地権者に換地清算金を支払ったとき 2-2 換地清算金に係る勘定科目の設定 ① 県から換地清算金を収入したとき 県営換地においては、県は土地改良区を介して換地清算を行う仕組み。 (借)現金及び預金 1000 (貸)換地清算金交付金収入 1000 ②-1 清算期限に地権者に換地清算金を支払ったとき ①の清算金を用い、清算対象地権者に換地清算金を支払い。 (借)換地清算金支払金支出 1000 (貸)現金及び預金 1000 ②-2 地権者に支払ったが、清算期限に 一部の地権者へ支払いができないとき 何らかの理由で一部の者に換地清算金の支払いができないとき、支払い義務の生じている未払金として負債勘定に仕訳する。 (貸)現金及び預金 900 (借)換地清算金支払金支出 1000 (借)換地清算金未払金 100 (支払いができたとき) まず①についてです。 県営換地の換地清算においては、まず県が、関係土地改良区との間で換地清算金を交付します。それを受けた土地改良区は、関係地権者に対して換地清算金を交付するというように、土地改良区を換地清算に活用する、いわば清算の代行というべき関係があります。この①は、土地改良区に対し県が換地清算金を交付したときの仕訳となります。 土地改良区にとって収入に当たりますので,勘定科目「換地清算金交付金収入」を用いた仕訳になります。 次に②-1についてです。 土地改良区が関係地権者に換地清算金を支払うときの仕訳です。 「換地清算金支払金支出」を用います。 次に②-2についてです。 換地清算金の交付又は徴収は、定められた一定の時期までに行う決まりですが、その期限が到来しても何らかの事情により清算金の交付が出来ないとき、土地改良区の負債として認識し、「換地清算金未払金」として仕訳をします。 支払いができたときは負債である「換地清算金未払金」を解消する仕訳となります。 創設換地の取得予定者から、換地処分前の土地利用と引き替えに創設換地取得清算金相当額の前納がされたときです。「換地清算金仮受金」として、負債での仕訳となります。 (次頁を現す操作) (借)換地清算金未払金 100 (貸)現金及び預金 100 換地処分前に創設換地取得予定者から 土地代の前納を受けたとき 創設換地取得予定者から、換地処分前の土地利用のため、清算金予定額の前納が行われるケース。返還可能性あり負債勘定に仕訳する。 (借)現金及び預金 300 (貸)換地清算金仮受金 300
2-3 換地清算金に係る勘定科目の設定 ③-1 清算期限に地権者から換地清算 金を徴収 2-3 換地清算金に係る勘定科目の設定 ③-1 清算期限に地権者から換地清算 金を徴収 地権者から換地清算金の徴収をする。 (借)現金及び預金 1000 (貸)換地清算金徴収金収入 1000 ③-2 地権者から換地清算金を徴収した が、一部の地権者から徴収できないとき 清算期限を経過し、一部の地権者から徴収ができないとき、未収金債権として仕訳する。 (借)現金及び預金 900 (貸)換地清算金徴収金収入 1000 (借)換地清算金未収金 100 (徴収ができたとき) (借)現金及び預金 100 (貸)換地清算金未収金 100 次の③-1の紹介になります。 土地改良区が地権者から清算金を徴収する場合です。貸方には収入科目として、「換地清算金徴収金収入」を用いて仕訳するものとなります。 次に③-2です。 土地改良区として、一部地権者から県営換地清算金の徴収ができない場合、「換地清算金未収金」を用いた仕訳とします。 後に、徴収ができたときは、「換地清算金未収金」を解消する仕訳を立てます。 ④です。土地改良区が県に換地清算金を納付する時の勘定科目となります。借方に用いる勘定科目は、「換地清算金納付金支出」です。 (次頁を現す操作) ④ 県に換地清算金を納付したとき 徴収した換地清算金を県に納付する。 (借)換地清算金納付金支出 1000 (貸)現金及び預金 1000
3-1 維持管理適正化事業拠出金等の会計処理 工事年度 事業拠出金関係 第一年度 第二年度 第三年度 第四年度 第五年度 適正化事業拠出金 3-1 維持管理適正化事業拠出金等の会計処理 工事年度 事業拠出金関係 第一年度 第二年度 第三年度 第四年度 第五年度 適正化事業拠出金 適正化事業拠出金 適正化事業拠出金 適正化事業拠出金未払金 適正化事業拠出金未払金 ① 資産 ② 資産 ③ 資産 ⑦ 負債 ⑧ 負債 工事実施年度までの拠出金は「資産」と観念 第三年度に事業実施したため、四年度以降の拠出金を「負債」と観念 ④ ⑤ 事業費の9割相当 交付金額から資産額、負債額の控除 維持管理適正化事業は、土地改良区として5年の拠出金拠出期間の間で拠出金の支出を続けるが、工事実施年までは「資産」、翌年度以降分を拠出義務を負う「負債」と観念する。 交付金 維持管理適正化事業の拠出金に係る仕訳を紹介するスライドとなります。 維持管理適正化事業へ加入した土地改良区は、5年間、一定額の拠出金を県土連を介して全土連に納入することとなります。 この拠出金についてですが、当該土地改良区の事業実施年までの拠出金を資産としてとらえ、事業実施年からそれ以降の期間の拠出金額を負債としてとらえる という考え方で会計処理を想定しております。 このスライドにおいては、適正化事業拠出金の3年目に当たる年度に事業が行われた場合として紹介をしております。 ①から⑧に至るまでの各時点の仕訳について説明します。 (次頁を現す操作) 適正化事業費 ⑥ 支出
3-2 維持管理適正化事業拠出金等の会計処理 ① 第一年度分の拠出金を支払ったとき ② 第二年度分の拠出金を支払ったとき 3-2 維持管理適正化事業拠出金等の会計処理 ① 第一年度分の拠出金を支払ったとき 工事年度は第三年度であり、この第一年度の拠出金は資産となる。 (借)適正化事業拠出金 (貸)現金及び預金 60 60 ② 第二年度分の拠出金を支払ったとき 工事年度は第三年度であり、この第二年度の拠出金も資産となる。 (借)適正化事業拠出金 60 (貸)現金及び預金 60 ③ 第三年度分の拠出金を支払ったとき 工事年度は第三年度後半であり、この第三年度の拠出金も含めて資産となる。 (借)適正化事業拠出金 60 (貸)現金及び預金 60 ④ 適正化事業費交付金を受け取ったとき まず①についてです。 この年は、この土地改良区としては適正化事業を行う年ではなく、単に拠出金を出すだけの年です。 借方には資産に属する勘定科目である「適正化事業拠出金」を用います。なぜ拠出金を資産とするのか。次期に引き継がれる資金であり、仮に、この土地改良区が 適正化事業の枠組みから離脱するとなれば土地改良区に戻ってくる金である、という理解からです。 次の②です。 第2年度の拠出金が支払われる時の仕訳であり、拠出金資産残高は120となります。 次の③です。 交付金を得て取り組む適正化事業の実施年ですが、拠出金の支払いが先であり、この支払い時点で残高は180となりました。 そして④です。 この土地改良区の適正化事業実施の年ですから交付金が入金されました。貸方に「適正化事業交付金収入」として、全体事業費1000のうち、900を収入した際の仕訳となります。 (次頁を現す操作) (借)現金及び預金 900 (貸)適正化事業交付金収入 900 工事実施年に当たり、全土連から事業費の9割相当額の交付を受けた。
3-3 維持管理適正化事業拠出金等の会計処理 ⑤ 交付金額と資産・負債額の振替 ⑥ 工事の完成によって所要額を支払ったとき 3-3 維持管理適正化事業拠出金等の会計処理 ⑤ 交付金額と資産・負債額の振替 900の交付金のうち、300は土地改良区の負担すべき額であり、資産としてきた拠出金額180を充当すると共に、第四年度以降拠出すべき額を負債120として仕訳した。 (借)適正化事業交付金収入 300 (貸)適正化事業拠出金 180 (貸)適正化事業拠出金未払金 120 ⑥ 工事の完成によって所要額を支払ったとき 適正化事業費の工事費支出。交付金収入900と1000との差、100は土地改良区が工事年に負担すべき額。 (借)適正化事業費支出 1000 (貸)現金及び預金 1000 ⑦ 第四年度分の拠出金を支払ったとき 第四年度分の拠出金の納入により、なお残存する負債額を60とする。 (借)適正化事業拠出金 未払金 60 (貸)現金及び預金 60 ⑧ 第五年度分の拠出金を支払ったとき 次の⑤の仕訳です。 これが適正化事業関係の仕訳のポイントとなるものです。 先に④の仕訳の通り900が土地改良区に交付されてきましたが、この900のうち本来、土地改良区が負担すべきボリュームとしては300となるところです。それが 900のうちに既に含まれた形で交付されてきたわけです。一方、土地改良区は300の負担に備えて拠出金を資産として180計上してきているところであり、それを反映させることと、第4年度拠出金60、第5年度拠出金60相当額を交付金の形で先払いされたことを負債として認識した仕訳となります。 仮に、④の仕訳において、交付金収入を土地改良区の負担分の300を除いて 600として仕訳をする考え方については、900と表示されている入金帳票類との齟齬が生ずる取り扱いとなるところから採用していません。 ⑥についてです。 適正化事業費1000の支出となります。交付金収入は900でした。差の100は土地改良区が工事実施年に負担した額となります。 ⑦、⑧についてです。 第4年度、第5年度の両年度は、適正化工事が終わっているこの土地改良区が拠出金を単に払い続けるのみの年度であり、毎年の支払時に借方に「適正化事業拠出金未払金」と仕訳し、負債を減少させていくものとなります。第5年度の支払時に未払い金残高が0となります。 (次頁を現す操作) 第五年度分の拠出金の納入により、残存負債額がゼロとなる。 (借)適正化事業拠出金 未払金 60 (貸)現金及び預金 60
4-1 会計細則規定と小口現金の処理手法 会計細則例(複式・抄) ① 支出命令による小口現金の存置 ② 会計主任による毎月月末の内部報告 4-1 会計細則規定と小口現金の処理手法 会計細則例(複式・抄) (小口現金) 第30条 会計主任は、少額の経費の支払に充てるため,あらかじめ支出命令を受けて小口現金をおくことができる。 2 小口現金の保有限度額は○万円以内とし、その受払及び保管は会計主任がこれに当たることとする。小口現金は,金庫に保管し、その他の金銭と区別して管理しなければならない。 3 会計主任は小口現金の受払を小口現金出納帳に記帳し、日々の小口現金出納帳の出納の都度、現金残高と帳簿残高の照合をしなければならない。 4 会計主任は、毎月末日に小口現金出納帳を締切り、支払に関する書類を 添付した振替命令により処理を行うものとする。 ① 支出命令による小口現金の存置 ② 会計主任による毎月月末の内部報告 ③ 小口現金の補充措置 国の会計細則例には小口現金の取り扱いに関する規定が置かれています。 これまで、一部の土地改良区において、会計細則に規定をおかないまま、実態として小口現金を会計主任が取り扱っている例があったようです。 土地改良区検査の際には指摘をうけるおそれがあります。 そこで、23年通知の国の会計細則例においては、この30条の例が示されました。 これによると、会計主任が小口現金出納帳により管理するものとされています。 支出命令による小口現金の出金、月末における使用状況の報告、月初めの小口現金の補充、というサイクルを繰り返すものとなっています。 (次頁を現す操作) 補充方式と洗替方式
4-2 会計細則規定と小口現金の処理手法 会計主任による小口現金の出納イメージ 小口現金出納帳 総勘定元帳 総勘定元帳 4-2 会計細則規定と小口現金の処理手法 会計主任による小口現金の出納イメージ (補充方式による) 会計主任は、理事長から支出命令決裁を受けて、小口現金10万円を金庫に保管 様式23 小口現金出納帳 年月日 摘要 入金額 説明種目 支出額計 残高 消耗品費 燃料費 会計主任は、各月末日に小口現金出納帳を締め切り、振替命令により出納内容を報告措置 26.4.1 4月分 100,000 100,000 4.15 ○○商店 10,000 90,000 4.20 ×燃油店 50,000 40,000 4.30 月末残高 60,000 40,000 26.5.1 5月分補充 60,000 100,000 会計主任は、次月冒頭に、支出命令決裁により6万円を補充 4月から5月にかけての、会計主任による小口現金の出納イメージです。 4月1日に、支出命令により現金10万円が会計主任の管理下に移されました。この現金は、普段、金庫で保管されるわけですが、他の現金類とは区別され管理されるものとなります。 会計主任は、4月15日に○○商店へ消耗品費の支払い、さらに20日、燃料店に灯油代の支払いを行い、小口現金出納帳にそれぞれ記入しました。結局、4月中の支出額は6万円となりました。 月末日の30日において振替命令の決裁形式で理事長決裁を受けるものとなります。4月中の支出、運営事務費支出6万円の内容を報告します。 5月1日には、小口現金の保有現金高10万円に足りない6万円の補充を受けることとなります。 小口現金勘定、運営事務費支出勘定の記帳イメージとしてはごらんのとおりとなります。 (次頁を現す操作) 総勘定元帳 総勘定元帳 (小口現金) (運営事務費支出) 月日 摘要 借方 貸方 残高 月日 摘要 借方 貸方 残高 4.1 現金及び 100,000 100,000 預金 4.30 運営事務費 60,000 40,000` 支出 5.1 現金及び 60,000 100,000 預金 4.30 小口現金 60,000 60,000
4-3 会計細則規定と小口現金の処理手法 土地改良区会計(本体) 小口現金出納(会計主任管理) 4-3 会計細則規定と小口現金の処理手法 土地改良区会計(本体)と小口現金出納の経理処理イメージ (補充方式) 土地改良区会計(本体) 小口現金出納(会計主任管理) 年月日 適用 入金額 説明種目 支出額計 残高 ○○年 8.1 8月補充 100 100 8.15 新聞代 10 90 8.31 月末報告 10 90 9.1 9月補充 10 100 8月1日支出命令時 小口現金 100 現金及び預金 100 8月31日振替命令時 新聞代 10 小口現金 10 小口現金の補充方法については、各月末時、会計主任手持一定額水準に不足する額を次月当初時点で補充する「補充方式」と、各月末時の会計主任手持額をすべて返納させ、次月当初時点であらためて一定額を小口現金として支給する「洗替方式」とがあります。 このスライドでお示ししているのは補充方式の例です。 (仕訳の記載を読み上げ) (次頁を現す操作) 9月1日補充のための支出命令時 小口現金 10 現金及び預金 10
4-4 会計細則規定と小口現金の処理手法 土地改良区会計(本体) 小口現金出納(会計主任管理) 4-4 会計細則規定と小口現金の処理手法 土地改良区会計(本体)と小口現金出納の経理処理イメージ (洗替方式) 土地改良区会計(本体) 小口現金出納(会計主任管理) 8月1日支出命令時 年月日 適用 入金額 説明種目 支出額計 残高 ○○年 8.1 8月分 100 100 8.15 新聞代 10 90 8.31 月末報告 10 残額返納 90 0 9.1 9月補充 100 100 小口現金 100 現金及び預金 100 8月31日振替命令時 現金及び預金 90 小口現金 100 新聞代 10 洗替方式による例です。 (仕訳の記載を読み上げ) (次頁を現す操作) 9月1日あらためて小口現金の支給 小口現金 100 現金及び預金 100
以上の仕訳により、財務諸表は次の結果となる 5 引当金と積立金の取崩し時の仕訳 (引当金に関連した特定資産である積立金の取崩し) ①の仕訳 転用決済金引当金 転用決済金取崩収入 500 500 転用決済金の取崩しのため、借方に決済金勘定(残高5000のうち500)、貸方に取崩収入とする勘定科目を記す 補修費は、直に「現金及び預金」勘定からではなく、特定資産である転用決済金積立金から補修費を手当てするため、当該積立金(残高5000)のうち500を「現金」化する ②の仕訳 現金及び預金 転用決済金積立金 500 500 上により入手した現金を用いて補修費支出を行う仕訳となる ③の仕訳 維持管理費支出 現金及び預金 500 500 負債として引当金を設定しているところ、その一部を取崩し、引当金の設定目的に従った活用を使用とする場合ですが、特定資産として転用決済金積立金を引当金と同水準の確保があったときの仕訳です。 まず①の仕訳です。 「転用決済金引当金」を借方に置き、引当金のボリュームを減額します。借方には、 「転用決済金取崩収入」とします。 転用決済金積立金という特定資産を有していたこのケースでは、その資産が預貯金か有価証券か,そういうもので運用がされていたところでしょうが、解約等により現金化した上で、維持管理費として用いていくものとなります。この②と③の仕訳により,結局、「転用決済金積立金」が取崩されて減少し、それが「維持管理費支出」として利用されたものとなります。 (次頁を現す操作) 以上の仕訳により、財務諸表は次の結果となる 取崩前の貸借対照表 取崩後の貸借対照表 資産 負債 現金及び預金 転用決済金引当金 1200 4500 転用決済金積立金 4500 資産 負債 現金及び預金 転用決済金引当金 1200 5000 転用決済金積立金 5000
6 指定正味財産の受け入れ仕訳等 車両購入資金 受取寄付金 100 100 車両運搬具 車両購入資金 100 100 6 指定正味財産の受け入れ仕訳等 車両の購入を条件とする寄付金を受け入れた 資金全額を特定資産とした 車両購入資金 受取寄付金 100 100 使途を指定した寄付金は指定正味財産とし、使途限定のない一般正味財産と区別するものとなる。購入までの期間は、借方に特定資産「車両購入資金」として保全 ※ 指定正味財産増減の部 補助金等収入 ※ 特定資産 寄付条件に従って車両を購入した 車両運搬具 車両購入資金 100 100 ※ 有形固定資産 ※ 特定資産 寄付条件により購入した車両の減価償却をした 寄付金により購入し車両の減価償却においては、ひもつき関係にある受取寄付金も同時に減額する仕訳を行う 一般正味財産への 受取寄付金 20 振替額 20 土地改良区会計基準においては、公益法人会計基準と同様に、外部から提供があった資金で使途に条件、制約があるものは指定正味財産として区分し、その後の資金の使われ方、行方を明確にする仕組みを採用しています。 「車を買うために」、という限定が付いて寄付金を受けたとします。受け入れ時点の仕訳ですが、条件つけられた寄付者の意思を尊重し、寄付金を指定正味財産として位置づけ、同額を特定資産とします。使い道を特定した資産名とすることで管理が明確となります。 そして、後日、条件にしたがった車両購入時の仕訳は、この特定資産を用いて「車両運搬具」という資産を取得した、となります。この車両運搬具は、寄付金によって取得した、いわば「ひもつきの資産」であり、指定正味財産の「寄付金」100は依然残高として残っている状態です。 この車両運搬具も耐用年数の進行に従い減価償却をしていくこととなります。その減価償却に併せ、ひもつき関係にある指定正味財産の「寄付金」を減少させる仕訳をします。その際用いられる勘定科目が「一般正味財産への振替額」です。理事長など管理者は、この勘定科目が仕訳に登場した場合、指定正味財産に変更を及ぼすものであり、妥当かどうか吟味をするものとなります。 このスライドでは、車両の減価償却に伴う仕訳例を示しています。 (次頁を現す操作) ※ 一般正味財産の部 経常収入の部 ※ 振替勘定科目 車両運搬具減価 車両運搬具 20 償却費 20 ※ 資産勘定科目 ※ 支出勘定科目
① 車両の購入を条件とする寄付金を受入れた。 ② 後に、その寄付金により車両を購入した。 ① 車両の購入を条件とする寄付金を受入れた。 ② 後に、その寄付金により車両を購入した。 貸借対照表 資産 負債 一般正味財産 指定正味財産 車両購入資金 / 受取寄付金 100 100 ※ 特定資産 ※ 指定正味財産 車両購入資金 100 受取寄付金 100 ① 貸借対照表をイメージしたものを添えました。もう一度手順をみていきましょう。 ①車両の購入を条件とする寄付金を受けました。寄付者の車両購入のためという寄付条件を尊重して、「指定正味財産」として管理するものとなります。100という指定正味財産は相応する「車両購入資金」という特定資産でストックされました。 次に、寄付条件を満たす車両の取得段階となります。 ②の仕訳により車両購入資金をもって車両を取得しました。「車両購入資金」という特定資産は「車両運搬具」資産に成り代わりましたが、指定正味財産である受取寄付金との関連では、ひもつき状態が継続します。 車両運搬具 / 車両購入資金 100 100 ※ 固定資産 ※ 特定資産 車両運搬具 100 受取寄付金 100 ②
③ 車両の減価償却をするため、指定正味財産を減少させ、「経常収入の部」に振替えた。 ③ 車両の減価償却をするため、指定正味財産を減少させ、「経常収入の部」に振替えた。 ④ 車両の減価償却費を計上するとともに、車両価額を減少させた。 正味財産増減計算書 貸借対照表 支出 収入 資産 負債 一般正味財産 受取寄付金 車両運搬具減価償却費 指定正味財産からの振替額 20 20 指定正味財産 車両運搬具 残高80 受取寄付金 残高80 車両運搬具減価償却費 20 / 車両運搬具 ※ 支出勘定科目 20 ※資産勘定 ④ 車両運搬具 期末に至り「車両運搬具」資産について20の減価償却処理が必要となります。 受取寄付金とひも付き関係ですから、減価償却費20の計上に伴って受取寄付金も20減らす必要があります。寄付者の希望通り車両取得が実現しましたが、その車両は減価償却により年々車両価値として減少していくわけで、指定正味財産も歩を合わせて減少していくこととなります。 指定正味財産の減少に用いられる勘定科目が「一般正味財産への振替額」というものです。 ③の仕訳により受取寄付金を20減らし、同額を正味財産増減計算書上の受取寄付金とし、④による減価償却費支出処理の原資となります。 一般正味財産への振替額 20減少 20減少 一般正味財産への振替額 20 / 受取寄付金 ※ 振替勘定科目 ※ 正味財産増減計算書 20 経常収入の部 ③
7-1 所得税の源泉徴収と会計処理 総勘定元帳 支出命令 仕 訳 帳 総勘定元帳 支出整理簿 現金預金出納帳 給与支給時 (現金及び預金) 7-1 所得税の源泉徴収と会計処理 現金預金出納帳 給与支給時 総勘定元帳 (現金及び預金) ○ 発電事業従事職員給与支給 ○ 4月15日支給 ○ ×名総額 100万円 月日 科目 入金 出金 残高 月日 摘 要 追記 款発電事業費 項発電事業人件費 目給与 (略) 借方 貸方 残高 4.15 100 4.1 前期繰越 500 500 4.15発電事業 100 400 人件費 支出命令 月日 4月 15日 (略) 仕 訳 帳 伺い 一金 100万円也 (ただし、発電従事職員給与) 月日 摘 要 借方 貸方 総勘定元帳 (発電事業人件費) 追記 支出整理簿 4.15発電事業人 100 件費 現金及び預金 100 (4月職員給与) 月日 摘 要 借方 貸方 残高 まず最初の取引です。 発電事業従事職員に対する給与支給がありました。 4月15日支給となります。 支出命令の決裁を受けた後は、支出整理簿、現金預金出納帳に、100万円の出金事実を整理記入します。ここまでは単式簿記会計でも行われていたことと同じです。 (隠れている部分3カ所を現す操作) さて、次からが複式簿記会計の独自の部分となります。 仕訳帳において仕訳を記帳します。この場合、人件費支出の増、現金資産の減という結果です。総勘定元帳の「発電事業人件費」「現金及び預金」の2つの勘定科目頁に転記を行います。それぞれ100万円です。 (次頁への操作) 款 項 目 4.15現金及び預 100 金 (略) 発電事業費 発電事業人件費 給与 月日 摘 要 出金額 累計額 4.15 4月分職員 100 給与支給 (略)
7-2 所得税の源泉徴収と会計処理 総勘定元帳 収入命令 仕 訳 帳 総勘定元帳 収入整理簿 現金預金出納帳 源泉徴収時 (現金及び預金) 7-2 所得税の源泉徴収と会計処理 現金預金出納帳 源泉徴収時 総勘定元帳 ○ 職員給与から所得税の源泉徴収 ○ 4月15日収入 ○ 源泉徴収額 5万円 (現金及び預金) 月日 科目 入金 出金 残高 月日 摘 要 借方 貸方 4.15 5 款 項 職員給与所得税源泉徴収額 (略) 残高 (略) 4.15 預り金 5 収入命令 月日 4月 15日 (略) 仕 訳 帳 伺い 一金 5万円也 (ただし、職員所得税源泉徴収額) 月日 摘 要 借方 貸方 総勘定元帳 (預り金) 4.15現金及び預金 5 預り金 5 (所得税源泉 徴収額) 収入整理簿 月日 摘 要 借方 借方 借方 貸方 貸方 残高 次のスライドです。 さてこの取引ですが、前のスライドで給与の支払いがありました。 同日の処理で、この収入命令が登場するわけです。 職員の給与に関して税法上必要となる所得税の納付は、給与支給者が代行して税務署に納める仕組みがあり、源泉徴収制度と呼ばれています。 このスライドでは5万円としておりますが、支給した職員給与の中からその一部である5万円を給与支給者が預かるという形となります。 しかし、支出命令をして、それから預かるために収入命令、というのは形式的すぎて、ぎくしゃくした感じを受けると思います。何とかならないのかと。 最初の支出命令で、95万円の額で支出決裁を取れば1回、1枚の決裁で足りるのではないか、そういうお考えもありましょう。 (次頁への操作) 4.15現金及び預 5 5 金 款 項 目 月日 累計額 摘 要 収入額 (記載なし)
7-3 所得税の源泉徴収と会計処理 仕訳帳 収入命令、収入整理簿、現金預金出納帳、収支決算書と関連していく記帳フロー 総勘定元帳 貸借対照表 7-3 所得税の源泉徴収と会計処理 収入命令、収入整理簿、現金預金出納帳、収支決算書と関連していく記帳フロー (支出の場合は、支出命令、支出整理簿、現金預金出納帳、収支決算書と関連) 総勘定元帳 貸借対照表 仕訳帳 正味財産増減 計算書 収入命令 (支出命令) 収入整理簿 (支出整理簿) 財産目録 収支決算書 現金預金 出納帳 記帳、転記 ここで土地改良区会計事務についての原則的なことを紹介しておきます。 そもそも土地改良区の会計事務の基本としてこのような仕組みとなっています。 収入命令の決裁と施行、収入整理簿への記帳、現金預金出納帳への記帳、そしてその記帳内容が収支決算書につながります。 前のスライドに関して例えれば、 手取額分の95万円の支出命令のみとし、5万円の収入命令は起こさないという処理案や、支出命令は100万円とするが、伺い文の中に5万円の源泉徴収額を記す等により、やはり5万円の収入命令は起こさない、等の処理がされている例があるようです。 しかし、土地改良区から見て所得税額も含めて支給した100万円が人件費であり、 会計に記録されるべき額です。支出整理簿の記帳記録から収支決算書を作成するルールとしているところから、95万円の支出命令という形は誤りであり、土地改良区にとって土地改良事業関係以外の所得税法上の義務である所得税の預かりについて、なんらの内部意思決定を経ないで、預り金として収入命令の会計記録を経ない手法も誤りと考えます。よって、前頁の処理が必要と考えているわけです。 収入命令により取り置かれた5万円は、現金預金出納帳に記帳はされますが、収入整理簿には載りません。所得税の預り金は、土地改良区の予算に登場するものではなく収支計算外出納であり、収支決算書に直結している収入整理簿の記載範囲ではないためです。 (次を現す操作) 所得税の源泉徴収金など、予算書に登載がない、いわゆる収支計算外出納においても、上記による記帳と転記による事務手順を経るもの。 したがって、100万円の給与(うち所得税源泉徴収金5万円)の支払いに関する事務手順は次となる。 ① 支出命令において100万円とする。収支決算書においても100万円の記録結果となる。 ② 収入命令において源泉徴収金5万円とする。次いで支出命令で5万円を税務署に納付する。 (結局、源泉徴収金の残高はゼロとなる。また収支計算外出納であるため決算書に載ることはない。)
8-1 消費税の記帳と納税 (日々の仕訳) (期末整理) 税抜き 記帳方式 税込み 記帳方式 収入となる取引の場合の仕訳 8-1 消費税の記帳と納税 (日々の仕訳) (期末整理) 収入となる取引の場合の仕訳 税抜き 記帳方式 ○○事業収入 仮受消費税 仮払消費税 仮受消費税 (残高) (残高) 仮受消費税 仮払消費税 (残高) (残高) 未払消費税 現金及び預金 ※発電事業においては、通常、仮受消費税残高が多い。仮払消費税残高と仮受消費税残高を打ち消すとともに、未払消費税額を求める仕訳を行う。 支出となる取引の場合の仕訳 3.31決算で確定した 未払消費税額について、5.31までに納税する。 ○○事業事務費 仮払消費税 現金及び預金 税込み 記帳方式 収入となる取引の場合の仕訳 収入取引における消費税額の積上げ作業 現金及び預金 ○○事業収入 公租公課 未払消費税 消費税を含む取引の記帳方法としては2つの方式があります。 上の方は税抜き記帳方式、下は、税込み記帳方式です。 発電事業を進めていく中で、土地改良区は消費税を含む課税収入、課税支出を行うことになりますが、決算において、収入した消費税と、支出した消費税の差額を明らかにし、その差額を、定められた期限までに納税することとなります。 この二つの記帳手法の違いは、取引の都度、仕訳で消費税額を区分して累積させていくか、それとも期末において一気に1年間分の仕分け作業を敢行するか、という違いです。 どちらも面倒な感じがしますが、税抜き記帳方式の方は会計ソフトの活用が便利ということで、どちらかといえば、より使われている方式とされています。本テキストも それによっております。 (表の内容説明) (次頁を現す操作) 消費税収支差額の判明 支出となる取引の場合の仕訳 3.31決算で確定した 未払消費税額について、 5.31までに納税する。 支出取引における消費税額の積上げ作業 ○○事業事務費 現金及び預金
8-2 消費税の中間納付ルールのあらまし (日々の仕訳) (期末整理) 税抜き記帳方式 中間納付制度 中間納付を反映した期末整理 8-2 消費税の中間納付ルールのあらまし (日々の仕訳) (期末整理) 収入となる取引の場合の仕訳 ○○事業収入 仮受消費税 仮払消費税 仮受消費税 (残高) (残高) 現金及び預金 仮受消費税 仮払消費税 (残高) (残高) 未払消費税 税抜き記帳方式 ※発電事業においては、通常、仮受消費税残高が多い。仮払消費税残高と仮受消費税残高を打ち消すとともに、未払消費税額を求める仕訳を行う。 支出となる取引の場合の仕訳 3.31決算で確定した 未払消費税額について、 5.31までに納税する。 ○○事業事務費 仮払消費税 現金及び預金 中間納付を反映した期末整理 消費税の中間納付 (前年度納税額60万円以上~ 500万円未満の場合) このスライドは、消費税の中間納付について説明するものです。 ここで示している消費税の中間納付というのは、前年度に納付消費税額が60万円から500万円の水準だった課税事業者に求められる仕組みであり、国にとって重要な税源である消費税を、早期に確実に収入するためのものです。4月から始まった事業年度の半分を経過した時から2月以内が納付期限であり、前年度納付消費税額の半分を納める必要があります。 このスライドの下段をご覧ください。 4月からの事業年度の半分を経過した日(9月末)から、2月以内ですから11月末までが納期限ですが、矢印のようにここで納税をします。勘定科目は「仮払金」です。 そして期末に至り、その事業年度の仮受消費税、仮払消費税、仮払金額を反映させて、未払消費税額を負債として確定する決算となります。この未払消費税額は翌期の5月31日までに税務署に納付すべき額となります。 なお、前年度納付消費税額が60万円未満である場合は、3月31日の会計期間が閉じた後の5月31日までに納付することとなります。500万円を超えている場合にあっては、中間納付は1回だけでなく、複数回の納付が義務となっています。 (次頁を現す操作) 中間納付制度 (事業年度の半分を経過して、その2ヶ月以内に納付する) 仮払金 現金及び預金 仮受消費税 仮払消費税 (残高) (残高) 仮払金 未払消費税 ※前年の納付消費税額が500万円以上の場合は、さらに複数回の納付回数となる制度となっている。
8-3 期末決算における消費税の未払額の確定 中間納付額を反映した期末整理 事業期間内の 消費税収支結果 未払税額=400-150 8-3 期末決算における消費税の未払額の確定 中間納付額を反映した期末整理 事業期間内の 消費税収支結果 未払税額=400-150 =250万円 仮払消費税 仮受消費税 (残高) (残高) 150 400 (未払額 250) 仮受消費税 仮払消費税 (残高) (残高) 400 150 仮払金 200 未払消費税 50 納税額に占める 中間納付額(200) の反映 未払消費税=250-200 =50万円 仮払金 現金及び預金 200 200 仮受消費税、仮払消費税は期中において一時的に使われる残高把握のための仮勘定であり、期末整理において、残高を打ち消すための反対仕訳を行うとともに、未払消費税を負債として計上する。 このスライドは消費税の期末整理を表すものとなります。 売電に伴い収入となる電力会社からの支払額には消費税が含まれており、その総額が 400となりました。 一方、土地改良区が小水力発電事業のために消費税を含めて諸費用として支出してきましたが、その総額が150となりました。その差し引き結果は250となり、土地改良区が税務署に納めるべき消費税の納付額となるところです。しかし、消費税は11月に中間納付している200がありましたので、その額を反映させれば仮払消費税は350となります。あらためて差を求めれば400-350ですから、50を税務署に納めればよいということになります。 期末整理の仕訳においては、仮受消費税が借方に、仮払消費税が貸方になっていますが、これまでとは逆の反対仕訳をすることにより、この二つの仮勘定の残高を打ち消すためです。仮払金も貸方に仕訳されており、残高はゼロとなります。 未払消費税の50のみが貸借対照表の負債欄に登載されます。 (次のスライドを現す操作)
9 旅費の概算払いと精算 精算時 概算払い時 旅費の 概算払いと精算 出張計画とおり 出張の 延長あり 職員に 13.5万円の支給 出張の 9 旅費の概算払いと精算 精算時 出張計画とおり 発電事業事務 仮払金 費支出 27万円 25万円 仮払消費税 2万円 概算払い時 旅費の 概算払いと精算 仮払金 現金及び預金 27万円 27万円 出張の 延長あり 13.5万円不足 発電事業事務 仮払金 27万円 費支出 37.5万円 現金及び預金 仮払消費税 13.5万円 3万円 職員に 13.5万円の支給 旅費の支給において精算払いではなく、概算払いの場合は、概算払いの決裁を受けて支給します。説明上、概算旅費を消費税を含む27万円とします。 概算払い時ーー仕訳帳には借方「仮払金27万円」、貸方「現金及び預金27万円」です。 職員は、出張から帰庁後に精算をします。 旅費精算時(精算額がない場合)ーー借方「発電事業事務費支出25万円」「仮払消費税2万円」、貸方「仮払金27万円」 (出張が延長となり、13.5万円の旅費不足があった場合)ーー借方「発電事業事務費支出37.5万円」「仮払消費税3万円」、貸方「仮払金27万円」、「現金及び預金 13.5万円」とし、職員に13.5万円を追加支給します。 (出張が短縮となり、旅費に13.5万円の残余がある場合)ーー借方「現金及び預金13.5万円」、「発電事業事務費支出 12.5万円」「仮払消費税1万円」、貸方「仮払金 27万円」とし、職員から13.5万円の返金を受けます。 (次頁を現す操作) 出張の 短縮有り 13.5万円余り 現金及び預金 仮払金 13.5万円 27万円 発電事業事務 費支出 12.5万円 仮払消費税 1万円 職員から 13.5万円の返還
10 期末決算整理と書簿記帳 総勘定元帳 (発電専用建物) 精算表により決算整理を行い、「修正記入」がされた事項について仕訳と総勘定元帳への転記がなされ、1期の記帳が完結する。 右は、発電専用建物と減価償却費の記帳状況である。 一重の合計線と二重の締切り線により記帳内容が締められ、総勘定元帳の各科目の記帳が完結する。 資産,負債に属する勘定科目にあっては、次期の会計年度の冒頭4月1日に「前期繰越」として前期末の額を掲げ、記帳が再スタートする。(収入、支出に属する勘定科目にあっては残高はなく、0スタートとなる。) 月日 摘 要 借方 貸方 残高 4.1 前期繰越 5,250 5,250 3.31発電専用建物 250 5,000 減価償却費 5,250 250 3.31貸借対照表へ 5,000 4.1 前期繰越 5,000 5,000 総勘定元帳 (発電専用建物減価償却費) 月日 摘 要 借方貸方 残高 次のスライドです。 (スライドの左欄を読み上げ、説明) (次のスライドへの操作) 3.31発電専用 250 250 建物 3.31正味財産 250 増減計算書へ
11 発電事業会計の剰余金の繰出と予算統制 ×1年度 ×2年度 一般会計 収入 貸借対照表 支出 発電事業会計 収入 貸借対照表 支出 収入 11 発電事業会計の剰余金の繰出と予算統制 ①×1年3月定期総代会における×1年度予算案の議決 ×1年度 ×2年度 ②×1年度末において発電事業の成果がほぼ判明(正味財産高) ×1年度で発電事業会計に生じた一般正味財産(剰余金)については、 ×2年度予算において、会計間で、剰余金を繰出し繰入れする予定額を組み込んで予算案とし、総代会議決を受け、次年度の早い段階で当該剰余金を一般会計に繰入れ、有効活用する手法であり、剰余金の活用は常に次年度となる 一般会計 収入 (借方) (借方) (貸方) 貸借対照表 ○○積立金 50万円 ◇◇引当金 60万円 各種積立金の積立措置は、予算議決額の範囲内で積立を実施できる。一方、引当金についてはそれぞれの計上基準により計上を強制されるものであり、予算案による統制の範疇ではない 支出 一般正味財産 ○○積立金 50万円 発電事業会計 収入 貸借対照表 (借方) (貸方) ◇◇引当金 50万円 支出 ××積立金 40万円 一般正味 財産 100万円 ××積立金 40万円 3月期定期総代会において操出し、繰入れ額を盛り込んだ予算案承認を受ける手法であり、5月期に臨時総代会の開催を要しない ③×2年3月定期総代会における×2年度予算案の議決 ④×2年5月期(決算の確定)に繰出し、繰入れ 貸借対照表 正味財産増減計算書 収入 発電の予想成果を予算案に取込む (借方) (貸方) (借方) (貸方) ×1年度成果の100万円を、発電事業会計から繰入れし、維持管理事業に活用する 発電事業会計からの繰入金 100万円 発電事業会計からの繰入金 100万円 現金及び預金 100万円 発電事業会計で生じた剰余金(一般正味財産)について、維持管理事業会計である一般会計へシフトする手法の説明となります。 絵にふっています ① ② ③ ④ の順で措置することで、総代会の開催時期が基本的に3月の1回だけだとしても、土地改良区の理事会・事務局の考える予算執行の道筋が描けるものと思います。 今期で生じた剰余金は、次期に入った5月頃の決算確定時に一般会計にシフトでき、維持管理のために有効活用が可能となります。 ただ、次期の予算案に、発電事業会計からのシフト額を、適切な額で収入予算額に盛り込むことが必要です。予算で定めた額以上に、シフトできる剰余金が生じたときはもったいないことになりますので、3月期の売電額を想定して検討すべきでしょう。 なお、発電事業会計の内部に負債の形で保留する引当金については、引当金の設定ルールにより行えばよく、次年度予算案による額統制からは外れるものと考えられます。 (次頁を現す操作) 支出 ○○積立金 50万円 ×1年度成果の100万円を、一般会計に繰出し、発電事業会計の一般正味財産残高はゼロとなるが、その後、×2年度の進行に伴い再び事業成果が積み上がっていく 貸借対照表 正味財産増減計算書 ×1年度成果として見込まれる 100万円を、発電事業会計から繰出しをするため、次年度予算案に繰出金額を盛り込む 収入 (借方) (貸方) (借方) (貸方) 現金及び預金 100万円 一般会計への操出金 100万円 ××積立金 40万円 支出 一般会計への操出金 100万円
価額不明資産の貸借対照表価額漸進的計上と 「財務諸表に対する注記」の表記について A 価額不明資産の貸借対照表価額漸進的計上と 「財務諸表に対する注記」の表記について 貸借対照表には土地改良施設の価額評価をして登載をしていくことになりますが、 土地改良区には多くの資産があって、評価作業もかなり時間を要するという実情もあるのではないでしょうか。 そうした場合、全ての評価作業が終わらなければ複式簿記会計がスタートできないか、という疑問に対する対応となります。
造成主体別土地改良施設と価額評価 この表は、貸借対照表に計上する、評価額の「登載価額原則」や「財務諸表に対する注記」を整理したものです。 このように、土地改良施設の資産科目としては、 「所有土地改良施設」「受託土地改良施設使用収益権」の2種です。
財務諸表に対する注記 ◆土地改良区会計細則例第9条の備考の2 ◆ 土地改良区会計基準(抜すい) 様式7(抜すい) 第5 財務諸表に対する注記 ◆ 土地改良区会計基準(抜すい) 第5 財務諸表に対する注記 1 財務諸表には、次の事項を注記しなけ ればならない。(注1-4) (1)資産の評価基準及び評価方法、固 定資産の減価償却方法、引当金の計 上基準等財務諸表の作成に関する重 要な会計方針 (2)重要な会計方針を変更したときは、そ の旨、変更の理由及び当該変更による 影響額 (3)基本財産及び特定資産の増減額並 びにその残高。 (13)・・・・ ◆土地改良区会計細則例第9条の備考の2 様式7(抜すい) 財務諸表に対する注記 1 重要な会計方針 (1)資産の評価基準及び評価方法 (2)有価証券の評価基準及び評価方法 (3)棚卸資産の評価基準及び評価方法 (4)固定資産の減価償却の方法 ① 土地改良施設等の減価償却の方法 ② その他固定資産の減価償却の方法 土地改良区会計基準第5に定められた「財務諸表に関する注記」について紹介します。 財務諸表については、土地改良区会計細則例に基づき会計細則を定めた場合、第9条第2項においてその様式を定め、用いていくことになりますが、「財務諸表に対する注記」は貸借対照表、正味財産増減計算書の記載内容を補説するものです。 ここには当該土地改良区の会計内容に関する重要情報が記載され、組合員や関係者は貸借対照表、正味財産増減計算書と、この注記を併せ読み土地改良区の会計内容全体を理解するものとなります。 いろいろと細かなことが書かれる会計情報のかたまりで、つい読み飛ばしするきらいがありますが、実は、注意すべき点がたくさんあります。
財務諸表に対する注記(例:有形固定資産について) ◆ 対象となる固定資産の取得価額が判明し ない場合 ① 「○○水路については、取得価額が不明 のため、国の価額推計手法によった。」 ② 「○○支線水路については、価額推計に おいて情報不足(取得年度不明)のため、 当面、推計対象外とした。」 <数年後> ② 「○○支線水路に付いては、取得年度が 判明したことから、価額推計において平成 元年取得資産として①同様に資産推計し た。 注記例(抜すい) 様式7 1 重要な会計方針 (1)資産の評価基準及び評価方法 取得価格が不明な一部資産の評価に当 たっては次による。 ① 宅地及びその従物:平成24年度 固定資産税課税評価額を参考にする。 ② 所有土地改良施設:類似施設価格 による。 ③ 土地改良施設用地等:平成24年度固 定資産税課税評価額を参考にする。 または、路線価格、または、標準宅地価 ×地積×10% による。 (2)・・・・・ (3)・・・・・ (4)固定資産の減価償却の方法 新減価償却制度を採用し、定額法による減 価償却を平成25年度より実施している。過年 度分について経過期間に応じた減価償却累 計額を求めている。 なお、貸借対照表価額は直接法による。 「財務諸表に対する注記」の中の、1の(1)が資産の評価基準及び評価方法について、(4)が固定資産の減価償却の方法について記載するものとなります。 土地改良区で実際に作成された財務諸表の注記例を示しました。 右の例は、対象となる固定資産の取得価額が判明しない場合について例示しました。 数年後の時点で、評価を行ったときには、例示のように記載することになります。 このように、資産評価は、必ずしも対象となる施設全部について完了している必要はなく、確認できた施設から計上し、他の施設については、後年の判明時点で追加計上する手法があります。 「財務諸表に対する注記」にそうした取り扱いを明記して、閲覧者に財務諸表に対する読み取り、分析に注意を促すものとなります。 財務諸表の読み手に対し「注記」を通して誠実に注意を促しているわけであり、会計原則でいう「真実性の原則」に反しないものと考えられます。
土地改良施設価額が一部不明の場合の財務諸表構成イメージ 価額等判明財産 貸借対照表 ○○土地改良区 財務諸表 (×1年度) 所有土地改良施設 受託土地改良施設使用収益権 所有土地改良施設 受託土地改良施設使用収益権 資産価額として 登載 価額等不明財産 数量不明 造成年次不明 耐用年数不明 受委託関係不明 その他不明事由 財務諸表に対する注記 所有土地改良施設 受託土地改良施設 使用収益権 資産の不計上に関する情報を注記として掲記 この図解のように、価額の判明した財産は貸借対照表に登載するものとなります。 一方、資産評価すべき対象ではあるけれども諸要因から、現在、評価作業が完結していないものがあるとします。 造成年次が不明、正確な数量が不明、いろいろ要因があろうと思います。 その場合は、一部の施設について貸借対照表価額には織り込めないわけですが、「財務諸表に対する注記」を用いて資産価額の不計上状況を注記することとなります。
貸借対照表価額の追加登載と「注記」表示イメージ ×2年度財務諸表における 貸借対照表等 ×1年度財務諸表における 貸借対照表等 貸借対照表 財務諸表に対する注記 貸借対照表 財務諸表に対する注記 当年度 前年度 当年度 前年度 ○○水路の資産価額は、造成年次の判定未了のため未計上。判定作業遂行後に追加登載予定。 造成年次が未判明であった○○水路の資産価額を判定し、追加登載した。 所有土地 1,000 100 改良施設 所有土地 100 100 改良施設 従前から、事情により一部資産が不計上であったため、貸借対照表、財務諸表に対する注記でこのようなことわりを続けてきたところですが、×2年度において資産の追加登載を果たしたというものです。 貸借対照表の「所有土地改良施設」の資産額は、前年度の100から1,000に跳ね上がっている。この貸借対照表を見た限りで跳ね上がりの疑問はもちますが、 原因は判読できません。 そこで注記に目を通すと、○○水路資産について評価価額が判明したため追加登載があったと知れるわけです。数字が跳ね上がった原因、理由が見つかるわけです。 この×2年度の注記内容はこの年度限りです。×3年度は資産額1,000がベースとなって推移していくわけで、注記が必要な状況からは抜け出すものとなります。
所有土地改良施設価額の判明経過と追加登載に係る「注記」イメージ ×1年度 ×2年度 ×3年度 不明財産量イメージ 貸借対照表価額未登載 C水路関係 B水路関係 C水路関係 A水路関係 B水路関係 C水路関係 財務諸表に対する注記 イメージ 財務諸表に対する注記 イメージ C水路の資産価額は、造成年次の判定未了のため未計上。判定作業遂行後に追加登載予定。 造成年次が未判明であった B水路の資産価額を判定し、追加登載した。 財務諸表に対する注記イメージ B、Cの各水路の資産価額は、造成年次の判定未了のため未計上。判定作業遂行後に追加登載予定。 造成年次が未判明であった A水路の資産価額を判定し、追加登載した。 ある土地改良区の資産評価実務の推移が漸進的に進んだ場合のイメージです。 ×1年度ではA水路、B水路、C水路の3系統の資産評価が出来ていない状況下であり、注記においては未計上を記しておりました。 そして、一年の内に、A水路の評価作業が終わり資産価額が判明した。判明した価額をもとに貸借対照表に価額が追加されていきます。 ×2年度の注記にはB水路、C水路の未計上の旨が記されます。 ×3年度では、未計上はC水路のみの状況となります。 この土地改良区は、結局、一定の期間を用いて、逐次、資産評価をし貸借対照表への資産追加登載を行っています。 漸進的ですが、「財務諸表に対する注記」への適切な情報記載により早期の複式簿記方式への転換が可能な対応となります。 A、B、Cの各水路の資産価額は、造成年次の判定未了のため未計上。判定作業遂行後に追加登載予定。
日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の 異同について B 日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の 異同について 土地改良区の会計を複式簿記化し財務諸表を作成する一方、土地改良法で義務付けられている収支決算書の作成も必要です。 このため、「財務諸表の中の正味財産増減計算書と収支決算書は数値的に一致するものではないか、一致していない場合どのような理由からか。」という疑問への対応について説明します。
このように双方の性格的違い、会計手法の違いから、個々の取引において記帳結果から見て一致する場合と、一致しない場合が生ずることがある。 収支決算書は、議決を得た予算額と決算額を対比させた形で、活動成果を組合員に報告するものであり、決算内容が予算承認の範囲内にあるかどうかが検証される。 一方、複式簿記会計による財務諸表(貸借対照表、正味財産増減計算書)は、発生主義による会計記帳により会計主体の財務状況を示し、土地改良区の実像をつまびらかにする資料であり、組合員に対する公表を前提とする。 このように双方の性格的違い、会計手法の違いから、個々の取引において記帳結果から見て一致する場合と、一致しない場合が生ずることがある。 本資料はその違いの認識を得る目的で、いくつかの例をとって示したものである。 土地改良区保有の○○資産から△△資産に資金移動したとき 通常の経費支払いのとき 賦課金の賦課をしたとき 賦課金の収入があったとき 適正化事業拠出金を支払ったとき 適正化事業の交付金収入があったときと、同日の整理仕訳 期末に○○引当金を計上したとき 期末に所有土地改良施設の減価償却を行ったとき この資料の作成目的を記しました。 収支決算書は総会(総代会)で議決を受けた予算額と1年間の支出額を対比させた形で現金主義でまとめられ、総会(総代会)で組合員等に報告されるものです。 一方、財務諸表は発生主義により会計主体の財務状況をまとめたもので、関係者、関係機関への公表を前提とします。 双方の間の目的、会計手法の違いから、記帳結果は一致する場合と相違する場合が生じてきます。 いくつかの取引について処理例を見ながら紹介していきます。
日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 取引 土地改良区会計内の資金移動 ○月○日、決裁を得て、土地改良区の△△資産から○○資産に資金移動した。 収支決算書への反映状況 仕訳帳の記帳 貸借対照表 正味財産増減計算書 収入 支出 予算 決算 予算 決算 借方 貸方 借方 貸方 (資産の増加) (負債の増加) 借方 貸方 (支出の増加) (収入の増加) ○○ △△ 資産 資産 200万円 200万円 ○○資産 200万円 (△△資産残高が 200万円減少) 違い 土地改良区が保有する資産を内部移動したケースについてです。 △△資産から○○資産へのシフトとなり、貸借対照表においては各資産の増減が あらわれますが、収支決算書の決算額に影響はありません。 (説明)収支予算、決算は、土地改良区と外部との関係において収入・支出状況を現すものであり、内部資金移動結果は現れない。 (説明)土地改良区の○○資金を200万円増額するとともに、△△資金残高を200万円減額させた。
日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 取引 通常の経費支払い例 ○月○日、土地改良区事務所の1年間借料として、200万円を支払った。 収支決算書への反映状況 仕訳帳の記帳 貸借対照表 正味財産増減計算書 収入 支出 予算 決算 予算 決算 借方 貸方 借方 貸方 (資産の増加) (負債の増加) 借方 貸方 (支出の増加) (収入の増加) 建物 現金及び 使用料 預金 200万円 200万円 (「現金及び預金」残高が200万円減少) 建物使用料 200万円 建物使用料 200万円 200万円 一致 土地改良区事務所の借料支払いのケースです。 200万円という額は予算額とおりの建物使用料の支払いです。 収支決算書、正味財産増減計算書の双方とも借料200万円が現れるものとなります。 (説明)土地改良区事務所の年間借料として200万円の予算を計上していたが予算額通りの決算となった。 (説明)土地改良区の正味財産を減少させる支出として建物使用料200万円を計上した。この支払いのため、現金残高が200万円減少した。
日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 取引 組合員に賦課金の賦課をした。 ○月○日、経常賦課金賦課として、総額2000万円の賦課通知書を発した。 収支決算書への反映状況 仕訳帳の記帳 貸借対照表 正味財産増減計算書 収入 支出 予算 決算 予算 決算 借方 貸方 借方 貸方 (資産の増加) (負債の増加) 借方 貸方 (支出の増加) (収入の増加) 未収賦 賦課金 課金等 収入 2000万円 2000万円 未収賦課金等 2000万円 賦課金収入 2000万円 経常賦課金 2000万円 違い これは○月○日に賦課金の賦課をした時点の収支決算書と財務諸表の状況を比較しているものです。 組合員への賦課金は納期限までに次々と納まってくる予定であり、会計期間内の納付結果が収支決算書としてまとめられますが、賦課通知書の交付時点では決算欄への計上額はありません。 一方で、正味財産増減計算書には賦課した時点で「賦課金収入」とし、同時に貸借対照表において「未収賦課金等」と記帳されます。 ある時点でとらえればこのような違いが現れることになります。 (説明)経常賦課金の賦課令書は発されたが、納付前であり、計上額はない状況。 (説明)土地改良区組合員への賦課金を賦課した時点で収入額とする。ただしこの時点では未収状態であるため、「未収賦課金等」という土地改良区債権資産が生じたものとする。
日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 取引 経常賦課金の納付があったが、一部が未納。 期末日に、経常賦課金の納付として、総額1800万円を収入したが、一部が未納。 収支決算書への反映状況 仕訳帳の記帳 貸借対照表 正味財産増減計算書 収入 支出 予算 決算 予算 決算 借方 貸方 借方 貸方 (資産の増加) (負債の増加) 借方 貸方 (支出の増加) (収入の増加) 現金及び 未収賦 預金 課金等 1800万円 1800万円 現金及び預金 1800万円 未収賦課金等 200万円 賦課金収入 2000万円 経常賦課金 2000万円 1800万円 違い さて、これは前のスライドの続きとなります。 期末日の状況です。 組合員からの納付が1800万円に達しましたが、まだ200万円の未収が残ることになりました。収支決算書においては、予算額対比で結果が記されます。 予算額2000万円に差し引く1800万円から200万円の未収額を読み取ります。 財務諸表ですが、貸借対照表では勘定科目「未収賦課金等」として200万円が記帳されることになります。差し引き計算で未収額を求めるのではなく、直にその額が知れるわけです。 (説明)期末日の賦課金収入額が1800万円であったため、「未収賦課金等」という土地改良区債権資産が 1800万円減じ、200万円の残高となった。正味財産増減計算書の「賦課金収入2000万円」に変化はない。 (説明)経常賦課金の2000万円収入予算に対して、決算額は 1800万円にとどまった。
日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 取引 維持管理適正化事業拠出金の支出。 ○月○日、今年度拠出金とし、60万円を拠出した。事業実施年は3年目である。 (全体事業費1000万円、交付金900万円となる規模) 仕訳帳の記帳 貸借対照表 正味財産増減計算書 収支決算書への反映状況 収入 支出 予算 決算 予算 決算 借方 貸方 借方 貸方 (資産の増加) (負債の増加) 借方 貸方 (支出の増加) (収入の増加) 適正化事業 拠出金 60万円 (「現金及び預金」残高が60万円減少) 適正化 現金及び 事業 預金 拠出金 60万円 60万円 適正化事業 拠出金 60万円 60万円 維持管理適正化事業の土地改良区拠出金についてです。 財務諸表においては、適正化事業の工事が行われる年度までは、各年の土地改良区拠出金は支出ではなく、土地改良区の資産ととらえて会計処理がされます。今期の拠出金60万円は「適正化事業拠出金」という資産科目で貸借対照表に載ります。 一方、収支決算書は予算額通りの支出という結果で記載がされることになります。今期までにいくらの拠出金の累積があるのか、という情報は収支決算書からは得られません。 違い (説明)維持管理適正化事業の拠出金として60万円の予算を計上していたが予算額通りの決算となった。 (説明)適正化事業拠出金は土地改良区に返還の可能性がある資産と捉える。「現金及び預金」60万円が「適正化事業拠出金」資産に変化した。正味財産増減計算書への反映はない。
日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 取引 維持管理適正化事業交付金の収入。 ○月○日、事業実施順による適正化事業実施年、900万円の交付金を収入した。 仕訳帳の記帳 貸借対照表 正味財産増減計算書 収支決算書への反映状況 収入 支出 予算 決算 予算 決算 借方 貸方 借方 貸方 (資産の増加) (負債の増加) 借方 貸方 (支出の増加) (収入の増加) 現金及び 適正化 預金 事業交 付金収 入 900万円 900万円 現金及び預金 900万円 適正化事業 交付金収入 900万円 適正化事業 交付金 900万円 900万円 この処理段階では一致 前のスライドに続いて適正化事業の会計処理例となります。 適正化事業の工事が行われる年度において、適正化事業交付金が交付された場合の処理状況です。 収支決算書、正味財産増減計算書には同じ数字情報が現れることになります。 (説明)維持管理適正化事業の交付金として900万円の収入予算を計上していたが予算額通りの決算となった。 (説明)適正化事業交付金収入として現金入金が900万円あったところであり、まずそのとおりの仕訳が適正化事業交付金収入額として仕訳され、記帳整理された。次いで、同日に次頁の仕訳が続けられる。
日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 取引 維持管理適正化事業交付金の収入。 ○月○日、900万円の交付金について、資産・負債関係を整理仕訳した。 仕訳帳の記帳 貸借対照表 正味財産増減計算書 収支決算書への反映状況 収入 支出 予算 決算 予算 決算 借方 貸方 借方 貸方 (資産の増加) (負債の増加) 借方 貸方 (支出の増加) (収入の増加) 適正化 適正化 事業交 事業拠 付金収 出金 入 180万円 300万円 適正化事 業拠出金 未払金 120万円 (適正化事業 交付金収入 が300万円 減少となり、結局、600万円となる) (「適正化事業 適正化事業 拠出金」資産 拠出金未払 が180万円 金 減少となる) 120万円 財務諸表における維持管理適正化事業関係記帳の重要な場面となります。 ○月○日、900万円の交付金が交付され、交付金収入と記帳がされましたが、 維持管理適正化事業において900万円の3分の1相当である300万円は、本来、土地改良区の負担すべき額です。 これまで土地改良区拠出金を「資産」として累積し、土地改良区負担分に充てるため準備をしてきたわけで、○月○日の仕訳に反映させることになります。 拠出を3年間してきた土地改良区ですから、60万円の3年分180万円の資産額「適正化事業拠出金」をあて、残る120万円が「適正化事業拠出金未払金」となります。 維持管理適正化事業拠出金について資産、負債の観点で仕訳整理した結果と収支決算書の結果とでは相違点があります。 違い (説明)特に整理がされるものはなく、前頁の通り900万円収入の決算となる。 (説明)適正化事業交付金収入900万円の内には、土地改良区の拠出金資産が含まれているため、それを減額し、事業実施年以降の拠出義務がある2年分の拠出金額について、負債として仕訳した。
日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 取引 職員退職給付引当金の計上 期末に、当期分の職員退職給付引当金を計上した。 仕訳帳の記帳 貸借対照表 正味財産増減計算書 収支決算書への反映状況 収入 支出 予算 決算 予算 決算 借方 貸方 借方 貸方 (資産の増加) (負債の増加) 借方 貸方 (支出の増加) (収入の増加) 職員退職 職員退職 給付引当 給付引 金繰入 当金 50万円 50万円 職員退職給 付引当金 50万円 職員退職給付引当金繰入 50万円 違い 引当金については収支決算書に現れません。現金支出を伴う外部への支払い関係ではないためです。 一方、財務諸表においては、貸借対照表において引当金の加算計上と正味財産増減計算書における支出計上「職員退職給付引当金繰入」が行われます。 (説明) 引当金は現金を伴う外部への支出ではないため、予算措置はとられない。収支決算書に現れない。 (説明) 将来の職員退職時の支払いに備えて退職給付引当金について当期分の加算を行った。繰入額の正味財産増減計算書への計上により正味財産が縮小となる。
日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 日々取引結果の収支決算書及び複式簿記関係書簿への反映の異同 取引 土地改良施設の減価償却費の計上 期末に、所有土地改良施設について減価償却費を計上した。 仕訳帳の記帳 収支決算書への反映状況 貸借対照表 正味財産増減計算書 収入 支出 予算 決算 予算 決算 借方 貸方 借方 貸方 (資産の増加) (負債の増加) 借方 貸方 (支出の増加) (収入の増加) 所有土地 所有土地 改良施設 改良施設 減価償却 1000万円 費 1000万円 (「所有土地 改良施設」 資産が1000 万円減額となる) 所有土地改 良施設減価 償却費 1000万円 違い 最後の事例紹介です。 会計の期末に行う減価償却費の処理です。 収支決算書ではこの扱いは全く現れませんが、財務諸表の整理においては減価償却費の処理は期末処理事項の代表格となります。 正味財産増減計算書に当期分の減価償却費を記し、同額を土地改良施設の価額から縮小を図ることになります。 要すれば、このように減価償却費等計上の差異もあり、収支決算書の支出合計額と正味財産増減計算書の借方(収入)合計額とは相違する結果となります。 (説明) 減価償却費は現金を伴う外部への支出ではないため、予算措置はとられない。収支決算書に現れない。 (説明) 「所有土地改良施設」資産について、今期分の減価償却費を計上するとともに、資産額を減額する仕訳を行った。減価償却費の正味財産増減計算書への計上により正味財産が縮小となる。
C いわゆる負の正味財産の発生について 土地改良区の会計方式を複式簿記会計化するとして、土地改良施設価額を貸借対照表に記帳し、毎期、資産の減価償却をしていく場合、当該資産の減価償却費相当分を、毎期、費用化することとなるため、単式簿記方式に比べて支出が増えるような見かけとなります。 このため、「これまでは土地改良区の収支はぎりぎりで運営してきたところだが、減価償却により、今後土地改良区の会計はどうなってしまうのか。」という疑問への対応について説明します。
正味財産増減計算書において収入が支出を上回る場合 ○貸借対照表 ○正味財産増減計算書 資 産 負 債 当期正味 財産増減額 収 入 支 出 (減価償却費 を含む。) 正味財産 当期正味 財産(増額) ※土地改良区の「財政状況」を表すもの ・事業年度における全ての資産、 負債及び正味財産の状況を表示 ・正味財産=資産-負債 ※土地改良区の「運営状況」を表すもの ・一事業年度における正味財産の 全ての増減状況を表示 ・公益法人会計基準の参照により、 損益計算書ではなく、正味財産増減 計算書を用いる このイメージ図においては、収入規模が減価償却費を含む支出規模を上回っており、正味財産が生じている状況を示しています。
正味財産増減計算書において支出が収入を上回る場合 ○貸借対照表 ○正味財産増減計算書 資 産 負 債 減価償却費 支 出 当期正味 財産増減額 収 入 正味財産 当期正味 財産(減額) ↑(減小) ※1 減価償却費相当額の事前積立は行って いない。 ※2 正味財産増減計算書で支出が収入を 上回った分、正味財産が減小する。 ※3 資産についても減価償却費分の価値が 下がることで減小する。 このスライドは、前のそれと違い、減価償却額を含む支出額が収入額を上回っている状況を示しています。減価償却分がそのまま支出超過の姿です。 正味財産は負となります。 ※1 支出(減価償却費を含む。)が収入を 上回る。 ※2 収入 = 支出(減価償却費を除く。) ※3 減価償却費分が支出超過
減価償却相当額の事前積立がない会計で、当期分の減価償却をした場合、収入額を超える支出額となる状況イメージ (① 当期の期首の状態) ○貸借対照表 ○正味財産増減計算書 資 産 負 債 ※ 期首時点では「取引」がないため、実質の作成内容がない状態 正味財産 ※前期から繰越した資産等、期首日現在の貸借状況イメージ 減価償却費相当額の事前積立は行っていない。 時間軸を意識しながら、もう一度事態の変化を振り返ってみます。 複式簿記会計開始期首の姿はこのようでした。貸借対照表では一定の正味財産も保有しています。 なお、この土地改良区においては減価償却のための特別な積立は行っていないという前提です。
減価償却相当額の事前積立がない会計で、当期分の減価償却をした場合、収入額を超える支出額となる状況イメージ (② 当期の期末日時点、ただし減価償却措置前) ○貸借対照表 ○正味財産増減計算書 資 産 負 債 支 出 収 入 正味財産 1年の会計期間が経過して期末における正味財産増減計算書の整理状況は収支とんとんであったとしています。この時点で減価償却措置はとられていません。 そして、3月31日付けで行う決算整理事項の減価償却処理に取り組むことになります。 ※ 1年間の活動として収入に応じた支出を 実施してきた(収入額、支出額は同額) ※ 収入と支出の差額である正味財産増減額は生じていない ※ 期首における正味財産高と期末日の正味財産高は同額(増減はない)
減価償却相当額の事前積立がない会計で、当期分の減価償却をした場合、収入額を超える支出額となる状況イメージ (③ 当期期末日状態、決算整理として減価償却額を計上後) ○貸借対照表 ○正味財産増減計算書 負 債 支 出 収 入 支 出 収 入 資 産 資 産 負 債 正味財産 正味財産 ※ 減価償却費の支出計上により収入額を上回ることとなる ※ 貸方に負の正味財産増減額が生ずる(いわゆる赤字決算となる) 減価償却費 負の正味財産額増減額 減価償却額分資産が減少 左と連動し減少 ※ 正味財産増減計算書で支出額が収入額を上回った分、正味財産額が減小する。 ※ 資産についても減価償却費分の価値が 下がることで減小する。 減価償却処理後のイメージです。貸借対照表、正味財産増減計算書のそれぞれの対比を行っています。左側が期末決算整理前直前の姿、矢印の右が整理後の姿となります。 貸借対照表では、正味財産増減計算書に減価償却費の計上がされた分資産価額の減額に作用するため、絵の白い部分が縮んだものと表現しました。これに伴い正味財産も減少しています。貸借対照表の全体ボリュームが縮むイメージです。 正味財産増減計算書ですが、期末決算整理前と比べ減価償却費の計上分支出額が増えます。しかし、対応する収入がない状況であり、収入総額と支出総額の差は 負の正味財産、いわゆる赤字となったことを示しています。
負の正味財産(いわゆる赤字決算)について 負の正味財産(いわゆる赤字決算)について 負の正味財産ですが、減価償却措置が原因となるものについては、土地改良区が第三者に対して直ちに対外的な金銭負担を負っているということではありません。 一方で、組合員の将来負担を想定した場合には、土地改良区会計として将来に備えた積立措置が不十分であることを示しているものといえます。 永続可能な農業を確保する上で途切れのない水利施設の維持管理を念頭に置けば、減価償却費相当額の積立は必要な措置(コスト)と考えられます。 団体運営として、会計経理も含めて安定的な望ましい形を追求する上で、赤字会計の放置はできるものではないでしょう。 赤字決算を踏まえた会計の転換案・改善策を添え、組合員の理解を得るための説明がなされていくことが重要であると考えます。 (テキストの読み上げ) (終了)