◎ 本章 化学ポテンシャルという概念の導入 ・部分モル量という種類の性質の一つ ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか 基本原理 平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学 互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う ⇒ 互いに混ざる物質を扱うために,これまで学んだ事柄の一般化が必要 ・化学反応(7章)を扱うための最初の段階 本章 互いに反応しない物質の混合物だけを考察 主として2元混合 xA + xB = 1 ( xA, xB は物質A, Bのモル分率)
混合物の熱力学的な記述 ・混合気体 1成分の全圧力への寄与: 分圧で表現 ・熱力学的にさらに一般化 ⇒ 分圧に類似した他の“部分の性質” (部分モル)を導入する必要 5・1 部分モル量 部分モルの性質のうちで最もわかりやすいもの: 部分モル体積 試料の全体積に対する混合物の1成分の寄与
(a) 部分モル体積 純水のモル体積 18 cm3 mol-1 純エタノール中の水の部分モル体積 14 cm3 mol-1 ・体積の増加量の違い 与えられた数の水分子が占める体積は,それを取囲む分子の種類によって異なるため H2O 1mol 体積増加: 18 cm3 25℃, 大量のH2O H2O 1mol 体積増加: 14 cm3 25℃, 大量のC2H5OH
部分モル体積 大量の混合物に加えた物質の1モル当たりの体積変化 ◎ 混合物中の成分の部分モル体積 それぞれのタイプの分子の環境が, 純粋なAから純粋なBへ組成が 変化するにつれて変わる ⇒ 組成によって変化 ◎ 混合物の熱力学的性質 組成の変化とともに変化する 分子が置かれた環境が変化 ⇒ 分子間の力が変化するため
◎ 物質Jの部分モル体積の定義 ・圧力,温度,他の成分の量をすべて一定にして Jの量を変化させるときの全体積のグラフの勾配 ・組成に依存 ◎ 混合物の全体積変化 A をdnA ,B を dnB 追加したときの変化量 組成が一定に保たれる ⇒ 最終体積は積分によって計算可能 積分の領域内で組成がずっと一定 ⇒ 部分モル体積は一定
・部分モル体積の測定法の一例 体積が組成によってどう変わるかを測定 ⇒ 物質量の関数として表す 任意の組成のところで微分して得られる勾配が部分モル体積 ・モル体積は常に正 ⇔ 部分モル体積は正であるとは限らない (例) 水溶液中のMgSO4の極限部分モル体積: -1.4 cm3 mol-1 (濃度が 0 の極限における部分モル体積) 1 mol のMgSO4 を大量の水に加えると体積が1.4 cm3 減少する イオンが水和するとき塩が水のあき間の多い構造を壊すので, 少しつぶれるために起こる.
課題 1 ⇒ V = VW nW + VE nE 溶液の体積を 1000 cm3 とすると、 溶液の質量は? 水、エタノールの物質量は?
課題 2 (P. 174 演習)
(b) 部分モルギブズエネルギー ◎部分モル量: 示量性の状態関数ならばどれにでも拡張可能 ◎混合物の中の物質の化学ポテンシャル: 部分モルギブズエネルギー 圧力、温度、他の成分の量を一定 成分 J の量に対してギブズエネルギーを プロットしたときの勾配 ・純物質 ⇒ μJ = GJ, m 物質のモルギブズエネルギーと同じ
◎ 2成分混合物の全ギブスエネルギー ・部分モル体積と同様に μA, μB : その混合物組成での化学ポテンシャル ・化学ポテンシャル 温度、圧力、組成により変化 ⇒ 混合物のギブスエネルギーもこれらの変数により変化 ◎ 化学熱力学の基本式 成分がA, B, …の系: ⇒ 温度、圧力一定 ⇒ (c) イヒ学ポテンシャルのさらに広い意義 (省略)