◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
熱流体力学 第4章 番外編 熱力学的系 状態方程式 熱力学で扱う偏微分公式 熱力学の第一法則(工学系と物理系)
Advertisements

22 ・ 3 積分形速度式 ◎ 速度式: 微分方程式 ⇒ 濃度を時間の関数として得るためには積分が必要 # 複雑な速度式 数値積分 (コンピューターシミュ レーション) # 単純な場合 解析的な解(積分形速度式) (a)1 次反応 1次の速度式 の積分形 [A] 0 は A の初濃度 (t = 0 の濃度.
1 今後の予定 8 日目 11 月 17 日(金) 1 回目口頭報告課題答あわせ, 第 5 章 9 日目 12 月 1 日(金) 第 5 章の続き,第 6 章 10 日目 12 月 8 日(金) 第 6 章の続き 11 日目 12 月 15 日(金), 16 日(土) 2 回目口頭報告 12 日目 12.
FUT 原 道寛 名列___ 氏名_______
4・6 相境界の位置 ◎ 2相が平衡: 化学ポテンシャルが等しい     ⇒ 2相が共存できる圧力と温度を精密に規定     ・相 α と β が平衡
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
1.ボイルの法則・シャルルの法則 2.ボイル・シャルルの法則 3.気体の状態方程式・実在気体
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
医薬品素材学 I 1 物理量と単位 2 気体の性質 1-1 物理量と単位 1-2 SI 誘導単位の成り立ち 1-3 エネルギーの単位
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
医薬品素材学 I 3 熱力学 3-1 エネルギー 3-2 熱化学 3-3 エントロピー 3-4 ギブズエネルギー 平成28年5月13日.
医薬品素材学 Ⅰ 相平衡と相律 (1) 1成分系の相平衡 相律 クラペイロン・クラウジウスの式 (2) 2成分系の相平衡 液相―気相平衡
化学反応式 化学反応:ある物質が別の物質に変化 反応物 → 生成物 例:酸素と水素が反応して水ができる 反応物:酸素と水素 生成物:水
シラバス説明(重要事項のみ) 到達度目標 授業計画 1.溶液中の酸化還元反応を理解し、反応式を自由に書くことができる(基礎能力)
x: 質量モル濃度を mol kg-1 単位で   表した時の数値部分 上の式は実験(近似)式であり、 ½乗に物理的な意味はない。
金箔にα線を照射して 通過するα線の軌跡を調べた ラザフォードの実験 ほとんどのα線は通過 小さい確率ながら跳ね返ったり、
生体分子解析学 2017/3/ /3/16 機器分析 分光学 X線結晶構造解析 質量分析 熱分析 その他機器分析.
医薬品素材学 I 4 物質の状態 4-1 溶液の蒸気圧 4-2 溶液の束一的性質 平成28年5月20日.
薬学物理化学Ⅲ 平成28年 4月15日~.
課題 1.
一成分、二相共存系での平衡 一成分 固液共存系    氷-水.
反応性流体力学特論  -燃焼流れの力学- 燃焼の流体力学 4/22,13 燃焼の熱力学 5/13.
◎熱力学の最も単純な化学への応用   純物質の相転移
10mMの酢酸が完全に電離している時のpHは?
(b) 定常状態の近似 ◎ 反応機構が2ステップを越える ⇒ 数学的な複雑さが相当程度 ◎ 多数のステップを含む反応機構
22・5 反応速度の温度依存性 ◎ たいていの反応 温度が上がると速度が増加 # 多くの溶液内反応
10. 積分 積分・・確率モデルと動学モデルで使われる この章は計算方法の紹介 積分の定義から
科学的方法 1) 実験と観察を重ね多くの事実を知る 2) これらの事実に共通の事柄を記述する→法則 体積と圧力が反比例→ボイルの法則
速度式と速度定数 ◎ 反応速度 しばしば反応原系の濃度のべき乗に比例 # 速度が2種の原系物質 A と B のモル濃度に比例 ⇐ 速度式
物理化学III F 原道寛.
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
緩衝液-buffer solution-.
1. イントロダクション:溶液中における構造不均一性の形成と拡散
課題 1 P. 188.
課題 1 ⇒ V = VW nW + VE nE 溶液の体積を 1000 cm3 とすると、 溶液の質量は?                        水、エタノールの物質量は?
課題 1.
(d) ギブズ - デュエムの式 2成分混合物の全ギブスエネルギー: 化学ポテンシャルは組成に依存
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
課題 熱力学関数 U, H, S, A, G の名称と定義を書け dS, dGの意味を書け ⊿U, ⊿H, ⊿G の意味を書け.
課題 熱力学関数 U, H, S, A, G の名称と定義を書け dS, dGの意味を書け ⊿U, ⊿H, ⊿G の意味を書け.
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
連続体とは 連続体(continuum) 密度*が連続関数として定義できる場合
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
課題 1 P. 188.
(d) ギブズ - デュエムの式 2成分混合物の全ギブスエネルギー: 化学ポテンシャルは組成に依存
低温物体が得た熱 高温物体が失った熱 = 得熱量=失熱量 これもエネルギー保存の法則.
課題 1.
◎熱力学の最も単純な化学への応用   純物質の相転移
◎ 本章  化学ポテンシャルの概念の拡張           ⇒ 化学反応の平衡組成の説明に応用   ・平衡組成       ギブズエネルギーを反応進行度に対してプロットしたときの極小に対応      この極小の位置の確定         ⇒ 平衡定数と標準反応ギブズエネルギーとの関係   ・熱力学的な式による記述.
今後の予定 (日程変更あり!) 5日目 10月21日(木) 小テスト 4日目までの内容 小テスト答え合わせ 質問への回答・前回の復習
22・3 積分形速度式 ◎ 速度式: 微分方程式 ⇒ 濃度を時間の関数として得るためには積分が必要
モル(mol)は、原子・分子の世界と 日常世界(daily life)をむすぶ秤(はかり)
近代化学の始まり ダルトンの原子論 ゲイリュサックの気体反応の法則 アボガドロの分子論 原子の実在証明.
22・3 積分形速度式 ◎ 速度式: 微分方程式 ⇒ 濃度を時間の関数として得るためには積分が必要
今後の予定 8日目 11月13日 口頭報告答あわせ,講義(5章) 9日目 11月27日 3・4章についての小テスト,講義(5章続き)
今後の予定 7日目 11月12日 レポート押印 1回目口頭報告についての説明 講義(4章~5章),班で討論
熱量 Q:熱量 [ cal ] or [J] m:質量 [g] or [kg] c:比熱 [cal/(g・K)] or [J/(kg・K)]
イミダゾリウム系イオン液体(3)ー分子性液体(2)混合溶液の二酸化炭素溶解度(1)
化学1 第11回講義 ・吸光度、ランベルト-ベールの法則 ・振動スペクトル ・核磁気共鳴スペクトル.
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
課題 1 ⇒ V = VW nW + VE nE 溶液の体積を 1000 cm3 とすると、 溶液の質量は?                        水、エタノールの物質量は?
電解質を添加したときの溶解度モデル – モル分率とモル濃度
V = VW nW + VE nE ヒント P142 自習問題5・1 溶液の体積を 1000 cm3 とすると、 溶液の質量は?
(昨年度のオープンコースウェア) 10/17 組み合わせと確率 10/24 確率変数と確率分布 10/31 代表的な確率分布
外部条件に対する平衡の応答 ◎ 平衡 圧力、温度、反応物と生成物の濃度に応じて変化する
K2 = [ln K] = ln K2 – ln K1 = K1.
課題 1.
固体→液体 液体→固体 ヒント P131  クラペイロンの式 左辺の微分式を有限値で近似すると?
ヒント.
Presentation transcript:

◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う      ⇒ 互いに混ざる物質を扱うために,これまで学んだ事柄の一般化が必要   ・化学反応(7章)を扱うための最初の段階         本章 互いに反応しない物質の混合物だけを考察         主として2元混合   xA + xB = 1 ( xA, xB は物質A, Bのモル分率)

混合物の熱力学的な記述  ・混合気体  1成分の全圧力への寄与: 分圧で表現  ・熱力学的にさらに一般化     ⇒ 分圧に類似した他の“部分の性質” (部分モル)を導入する必要 5・1 部分モル量 部分モルの性質のうちで最もわかりやすいもの:  部分モル体積       試料の全体積に対する混合物の1成分の寄与

(a) 部分モル体積                                純水のモル体積   18 cm3 mol-1                                  純エタノール中の水の部分モル体積                                        14 cm3 mol-1  ・体積の増加量の違い    与えられた数の水分子が占める体積は,それを取囲む分子の種類によって異なるため H2O 1mol 体積増加: 18 cm3 25℃, 大量のH2O H2O 1mol 体積増加: 14 cm3 25℃, 大量のC2H5OH

部分モル体積   大量の混合物に加えた物質の1モル当たりの体積変化  ◎ 混合物中の成分の部分モル体積      それぞれのタイプの分子の環境が,      純粋なAから純粋なBへ組成が      変化するにつれて変わる        ⇒ 組成によって変化  ◎ 混合物の熱力学的性質        組成の変化とともに変化する      分子が置かれた環境が変化      ⇒ 分子間の力が変化するため

◎ 物質Jの部分モル体積の定義   ・圧力,温度,他の成分の量をすべて一定にして    Jの量を変化させるときの全体積のグラフの勾配   ・組成に依存 ◎ 混合物の全体積変化     A をdnA ,B を dnB 追加したときの変化量     組成が一定に保たれる ⇒ 最終体積は積分によって計算可能     積分の領域内で組成がずっと一定 ⇒ 部分モル体積は一定

・部分モル体積の測定法の一例   体積が組成によってどう変わるかを測定    ⇒ 物質量の関数として表す   任意の組成のところで微分して得られる勾配が部分モル体積 ・モル体積は常に正  ⇔  部分モル体積は正であるとは限らない   (例) 水溶液中のMgSO4の極限部分モル体積: -1.4 cm3 mol-1      (濃度が 0 の極限における部分モル体積)      1 mol のMgSO4 を大量の水に加えると体積が1.4 cm3 減少する      イオンが水和するとき塩が水のあき間の多い構造を壊すので,      少しつぶれるために起こる.

課題 1 ⇒ V = VW nW + VE nE 溶液の体積を 1000 cm3 とすると、 溶液の質量は?                        水、エタノールの物質量は?

課題 2 (P. 174 演習)

(b) 部分モルギブズエネルギー  ◎部分モル量: 示量性の状態関数ならばどれにでも拡張可能  ◎混合物の中の物質の化学ポテンシャル: 部分モルギブズエネルギー      圧力、温度、他の成分の量を一定      成分 J の量に対してギブズエネルギーを プロットしたときの勾配   ・純物質          ⇒  μJ = GJ, m 物質のモルギブズエネルギーと同じ

◎ 2成分混合物の全ギブスエネルギー   ・部分モル体積と同様に                      μA, μB : その混合物組成での化学ポテンシャル   ・化学ポテンシャル  温度、圧力、組成により変化      ⇒ 混合物のギブスエネルギーもこれらの変数により変化 ◎ 化学熱力学の基本式    成分がA, B, …の系:                 ⇒    温度、圧力一定  ⇒ (c) イヒ学ポテンシャルのさらに広い意義  (省略)