4・6 相境界の位置 ◎ 2相が平衡: 化学ポテンシャルが等しい ⇒ 2相が共存できる圧力と温度を精密に規定 ・相 α と β が平衡 (4・4) この式を,p と T で表す形 ⇒ 相境界の方程式
(a) 相境界線の勾配 ◎ 相境界の吟味 ⇒ dp/dT 相 α と β が平衡 無限小の変化時も平衡のまま ⇒ 化学ポテンシャルの変化も等しい dμα = dμβ (3・49) (p. 108) より、 各相に対して dμ = Vmdp-SmdT が成立 よって Vα, m dp-Sα, mdT = Vβ, m dp-Sβ, m dT Vα, m , Vβ, m : 各相のモル体積 Sα, m , S β, m : 各相のモルエントロピー すなわち 整理して (4・6) クラペイロンの式 (厳密な式) (ΔtrsS: 転移エントロピー、ΔtrsV: 転移体積)
(b) 固体一液体の相境界 ◎ ある温度 T における融解 モルエンタルピー変化: ΔfusH ⇒ 融解モルエントロピー: ΔfusS = ΔfusH / T クラペイロンの式 より、 (4・7) となる (ΔfusV: 融解時のモル体積) ΔfusH, ΔfusVが定数と仮定して積分 ( x << 1 のとき ln (1+x) ≈ x ) ≈ ≒ ≃ ∼
(c) 液体-蒸気の相境界 ◎ 温度 T における蒸発エントロピー : Δ Svap = ΔHvap / T 液体-蒸気の境界線に対するクラペイロンの式 ⇒ (4・10) ΔHvap > 0, ΔvapV > 0 より、dp/dT > 0 すなわち、温度の上昇と共に圧力(蒸気圧)が上昇 ◎ 固体-液体境界線と液体-蒸気境界線の比較 固体-液体境界線 液体-蒸気境界線 > エンタルピー変化: 融解熱 ΔHfus < 蒸発熱 ΔHvap (1~2桁) 体積変化: V(s) ≈ V(l) V(l) << V(g) 数十mL/mol (ΔVfus ≈ 0) 数十L/mol ⇒ 固体-液体境界 圧力が変化しても融点はあまり変わらない 液体-蒸気境界 圧力が変化すると沸点は大きく変化する
トルートンの規則 液体の標準蒸発エントロピーは約85 [J K-1 mol-1] であり、多くの液体で この経験則が成り立つ。
完全気体のモル体積 25℃, 1 atmの場合 pV=nRTより、 Vm = V/n = RT/p = 8.31[J K-1 mol-1]×298 [K] / (1.01×105[Pa]) = 2.45×10-2 [m3 mol-1] = 2.45×10-2 [(10[dm])3 mol-1] = 2.45×10 = 24.5 [dm3 mol-1] 3.4×103 [Pa K-1] = 3.4×103 {1/(1.01×105)} [atm K-1] = 0.034 [atm K-1]
課題 1
・ 例題4・2 より ・ 気体が完全気体とみなせると, p ΔvapH ⇒ = R T2 クラウジウス-クラペイロンの式 蒸気圧の温度変化表す近似式 を使って、 左辺 =
・ 例題4・2 より ・ 気体が完全気体とみなせると, p ΔvapH ⇒ = R T2 クラウジウス-クラペイロンの式 蒸気圧の温度変化表す近似式 変数分離して dp ΔvapH dT ΔvapH 1 1 = ln (p/p*) = - ( - ) p R T2 R T T* p* → p T* → T で両辺を積分 p ΔvapH 1 T (4・12) [ ln p ] p* = [ - ]T* R T
課題 2 (P. 136 演習)
(d) 固体-蒸気の相境界 液体-蒸気の境界層との違い 蒸発エンタルピー ΔvapH → 昇華エンタルピーΔsubH ΔsubH = ΔvusH + ΔvapH 昇華エンタルピー > 蒸発エンタルピー ⇒ 昇華曲線と蒸発曲線はそれが交差する 三重点付近の,同程度の温度では 昇華曲線の方が急峻な勾配 4・7 エーレンフェストによる相転移の分類 (省略 )