心理学概論Ⅱ 第1講 201年9月27日(火) 担当:岡田佳子
性格理解の方法 性格理解の方法大きく3つに分けられる 1.観察法 2.面接法 3.テスト法
1.観察法(Observation Method) できるだけ客観的にいろいろな条件のもとで、個人の性格をありのままに観察し記録する方法。 ①日常的観察法:純粋に日常生活を観察 例)育児日記・逸話記録など ②組織的観察法:目的を明確にし、観察場面を選択し、科学的記録法を用いて観察
組織的観察法の具体例 出典 本田(2001) 事前に 「何を観察するのか」 「観察した行動の程度や頻度をどのように記録するのか」 ・・・を明確に決めておく。
組織的観察法の具体例 事前に決めた視点と方法にのっとって、主観をいれず、客観的に記録していく。 出典 本田(2001)
観察法の長所と短所 観察法の長所 面接や検査が出来ない幼児等にも適用可能。 観察法の短所 観察者の主観や偏見が入りやすい。 例)幼稚園の先生が園児を観察する場合 ×偏見や推測が入った観察記録 「Aちゃんのわがままにはいつも手を焼いているが、このときもいつものわがままが出て、Bちゃんのおもちゃを強引に奪った」 ○客観的な観察記録 「Bちゃんが人形で遊んでいると、Aちゃんが近寄ってきて、なにも言わずにBちゃんの人形を手に取った」
観察を行う場合の注意点 (1)測定対象となる行動の基準を明確にする (2)測定した頻度や回数の正確な記録方法を工夫する (3)複数の観察者が独自に測定を行い一致率を確認しながらすすめる といった配慮が必要 無目的に、なんとなーく観察していても、なにも引き出すことはできません!!観察法は一見簡単そうだが、実はきわめて難しい。
2.面接法(Interview Method) 心理テストなどの「道具」を用いることなく、会話によって面接者が被面接者のパーソナリティを直接的に理解しようとする方法。 ①自由面接:質問項目が決まっていない。 ②標準化された面接: 質問項目が決まっている。
3.テスト法 ①質問紙法(questionnaire method) ②投影法(projective technique) ③作業検査法(work limit method) の3つに大別される。以下詳しく見てみる
①質問紙法(questionnaire method) 用意された質問文に本人が自発的に回答していく方法 例)「あなたは我慢強い方ですか」 はい・いいえ・どちらでもない 代表的なもの YG(矢田部・ギルフォード性格検査)、MMPI、MAS、CPI、MPI、EPPS、向性検査、CMI、など →各質問紙の詳細は別紙の表参照
「YG性格検査」(質問紙法) 「PFスタディ」(投影法) 「内田クレペリン検査」(作業検査法) 説明が終わったら、 の実物をまわします。 どんなものか参考程度に見てみてください。
これから各手法の代表的なものについて、簡単に紹介しますが、この授業ではそれぞれの具体的な内容や実施方法、採点方法まで覚える必要はなし。イメージがつかめればよい。 手法の種類や、特徴、長所短所などについて理解できればよい。 さらに詳しく勉強してみたい人は、2年生以降、プリントにあげた授業を受講し、実習を通して理解を深めてください。
YG性格検査 (矢田部ギルフォード性格検査) 日本でも最もポピュラーな質問紙法の性格検査。 12の性格特性をあらわす尺度について、それぞれ10の質問項目(合計120項目) 例)色々な人と知り合いになるのが楽しみである 「はい」、「いいえ」、「どちらでもない」のいずれかにチェック 主として集団で実施。自己採点が可能 適性検査としても利用(学校や入社試験など)
結果の整理と解釈 検査結果から、図のようなプロフィールを作成(特性論的) プロフィールより5つタイプにわける(類型論的)
②投影法(projective technique) あいまいな図形や文章を呈示して口頭あるいは文章で回答を求め,性格を測定・診断する方法 代表的なもの ロールシャッハ、PFスタディ、TAT、CAT、箱庭技法、SCT、描画法、バウムテスト、など →各質問紙の詳細は別紙の表参照
ロールシャッハ・テスト
実施と結果の整理 左右対称のインクのしみ図版10枚を一定の順序で提示し、何に見えるかを自由に述べさせる どのへんをみるか? ①反応領域(どの領域に反応したか。全体か?部分か?など) ②反応決定因(形か?色か?など) ③反応内容(何に見えたか。動物?人間?など) ④反応の質と反応数(平凡?独創的?など) 結果は総合的に解釈される。 実施には高度な知識とかなりの熟練を要する
その他の投影法性格検査 この授業では、紹介のみ。 1つ1つ細かく覚える必要なし。 イメージがつかめればよい。
文章完成法テスト (SCT,Sentence Completion Test) 文章の始まりをあらかじめ提示し、被検者が自由に文章を完成させる方法。 家族関係、交友関係、自己像、欲求、意欲、情緒など、幅広い領域の傾向が投影される。
PFスタディ (絵画-欲求不満検査/Picture-Frustration Study) 欲求不満場面に対してどのような反応を示すか。被検者は右の人にとってふさわしいと考える答えをふき出しに記入する 欲求不満や葛藤場面に対する反応の個人差は性格傾向の差と考え、分析。
TAT (主題統覚検査/Thematic Apperception Test) 「これから1枚1枚絵を見せますから、それについて物語を作ってください。今どうなっており、そこにいる人はなにを考えたり感じたりしているのか、これからどうなっていくのか、心に浮かんだままを、自由に話して下さい」 物語の中に被検者の願望や葛藤、対人関係のとらえかたや対人行動などが反映される。
バウムテスト(樹木画テスト) バウム=樹木(ドイツ語) 1枚のA4の画用紙と4Bの鉛筆を渡し、「実のなる木を描いてください」と依頼。 木を描くという表現を通して心の内面が描画に投影されると考える。
箱庭技法 砂の入った木箱とさまざまなミニチュアが用意され, 砂の上に自由にミニチュアを並べ,また砂で山を作るなどのイメージ表現を行う。非言語的な表現技法の1つ 児童や幼児でもできる 性格検査としてよりも、臨床で「箱庭療法」として使用されることが多い。 14号館711教室に実物があります。
③作業検査法(work limit method) きわめて単純な作業を一定時間課し,作業量の推移に着目して気質,性格を測定・診断する方法 代表的なもの 内田クレペリン精神検査、視覚記名検査、BGTなど →各質問紙の詳細は別紙の表参照
内田クレペリン検査
実施と結果の整理 隣り合う数を加算してその答えの1の位の数字のみを両数字の中間に書かせる。 1分ごとに「はい、つぎ」と号令をかけ、行をかえさせる。 前期15分作業→5分休憩→後期15分作業 各行の最後の数字を赤鉛筆で結び作業経過曲線を作る(図8-2参照)
結果の解釈 作業曲線を定型と非定型に分ける どのへんをみるか? 定型曲線は前期が「U字型」後期が「右下がり」になる -ある程度作業量があるか -初頭努力があるか -作業の経過につれて、極度の興奮がなく疲労があらわれるか -休憩後の効果があるか -終末努力があるか 定型曲線は前期が「U字型」後期が「右下がり」になる 性格の中でも作業場面に反映しやすいような、速さ、テンポ、注意力、持続力などの特性の把握に有効 ⇒工場作業員や運転手の事故に関して予測的妥当性が高い ⇒採用試験など、スクリーニング用によく利用される
質問紙法、投影法、作業検査法の 長所と短所
考えてみよう 演習:質問紙法、投影法、作業検査法にはそれぞれどのような長所や短所があるでしょうか。周りの人と相談して考えてみましょう。 考えるポイント 1.誰に対しても実施可能か? 2.実施者に必要なスキルは? 3.被検査者に目的がわかるか? 4.得られた結果を客観的に分析可能か? 5.性格のどのような側面をとらえられるか? 6.要する時間は? ・・・など
例)虚構尺度:「今までに一度も嘘をついたことがない」など 質問紙法 長所 実施者の力量に左右されないで簡単にでき、短時間に多くの資料を得ることができる。 検査結果の数量的処理が容易にでき、各個人間の比較が客観的にできる。 行動観察や第三者の評定ではとらえられない内面を知る質問項目を作成できる。 短所 自己を歪曲して報告しようとする場合がある (社会的望ましさ:social desirability→虚構尺度などの工夫が必要) 例)虚構尺度:「今までに一度も嘘をついたことがない」など 質問の意図を誤解してしまう可能性。 年少者などには実施が難しい。
投影法 長所 意識の表面に現れない人格の深層まで分析することができる。 自分の反応のもつ意味がわからないので、質問紙法のように社会的望ましさによる反応、事実を曲げて反応する歪みがさけられる。 短所 結果の解釈に、検査者の判断や洞察力(主観)に依存することが多い。 検査者にかなりの経験と知識が求められる。 検査者によって解釈が異なることも多く、結果にばらつきが生じやすい。
作業検査法 長所 作業条件が明確に規定され、検査が実験的な性格をもつ。 検査の目的が被検査者にわからないので、作業が意図的に歪められることが少ない。 言葉に障害のある人に対しても使用可能 短所 測定しているものが特定の場面の意志的な性格特性に限られ、幅広い性格の側面を見ることができない
近年の傾向 実施の手軽さや、統計的な分析にかけやすいことから、質問紙法つまり、「量的な」分析が多様されてきたが・・・ 面接や行動観察などによって質問紙ではとらえきれない、もっと「質的な」面に注目しようという動き→質的研究 量的研究VS質的研究?→不毛 目的に合わせて、選択、併用していくことこそ大切 例)質問紙調査で気になる生徒を何人か面接して詳しく調べてみる。 質問紙調査で得られた仮説を、面接や行動観察などで確かめてみる・・・など
心理テスト・検査についてもっと詳しく勉強したい人へ
どちらも、14号館7階の資料室にあります。(買うと高いです) 参考文献 どちらも、14号館7階の資料室にあります。(買うと高いです)