心理学概論Ⅱ 第11講 2011年12月13(火) 担当:岡田佳子
先週のプリントの続きから
2-2.有意味受容学習(meaningful reception learning) 「受容学習」と「発見学習」 発見学習とは対照的に、習得すべき知識を教師が直接提示するのが「受容学習」。 一斉授業を行う学校教育の中心となっている。 学習者は受動的な参加。
「機械的学習」と「有意味学習」 機械的学習 有意味学習 新しい知識が互いに関連づけられないまま(暗記学習) 新しい知識が互いに関連づけられないまま(暗記学習) 例)歴史の年号や英単語の暗記のまる暗記。 有意味学習 新しい知識を既存の認知構造に有意味に関連づけることによって、学習内容を意味あるものとして理解する学習
有意味受容学習を提唱 有意味受容学習 オースベル(Ausubel, D. P.) 「知識の内容が児童・生徒にとって意味のあるものとしてとり入れられると、その知識は児童・生徒のなかに定着し、生きた知識になる」 有意味受容学習を提唱
とは言え・・・ 学習者は受動的なので授業に集中しないことも ・・・講義形式の授業って一方的に教え込ませれているようでつまらないなぁ 授業の内容が分かりにくいと、暗記に動機づけられる ・・・「はじき」って覚えちゃうからもういいよ。 こうならないためにも 「受容されやすい情報の提示」が必要
先行オーガナイザー (advance organizer) オースベルが提唱。 教示の開始に先立って、授業内容をより抽象化してまとめた短文を提示することによって、授業の効果を高めようとする手続き。 後続する情報を体制化して取り込むための枠組みとなる。 例)教科書や講義で、はじめに内容の概略を述べる
先行オーガナイザーには2種類ある 説明オーガナイザー 比較オーガナイザー 説明オーガナイザー 学習内容をとりこみやすくするためにあらかじめ言語や図による解説を提示する 例)このプリントの一番はじめの図や説明 比較オーガナイザー 学習者がすでに持っている知識を利用し、新しい学習内容とその知識の異同を提示する 例)仏教に関する知識を教える際に、他の宗教との比較によって特質を明らかにする。バドミントンのルール説明。テニスのルールを引き合いにだして、違いを説明する。
2-3.プログラム学習 (programed learning) スキナー(B.F.Skinner)がオペラント条件づけ(道具的条件づけ)のパラダイムに基づいて考案。 4つの原則に従って学習コース(やさしい問題から徐々に難しい問題へと進む)を作成。 基本的に個別学習。 伝統的な一斉授業の問題点を解消する方法として思いついた。 ※オペラント条件づけ:刺激に対して自発された反応を強化することによってその反応を生じやすくする
有名なお話 スキナーがプログラム学習という個別指導の必要性に気づくようになったきっかけは 自分の子どもの授業参観 一斉授業は、理解度、学力が平均的な児童を基準に授業が進められる・・・余裕の子と、ついていけない子がいることに気づく 伝統的な一斉授業の問題点を解決する方法としてプログラム学習を思いつく
プログラム学習の4つの原理 1)スモール・ステップの原理 2)積極的反応の原理 3)即時確認(即時強化)の原理 4)自己ペースの原理
イメージがわくように 具体的に見てみましょう
プログラム学習の型(図1参照) 直線型(スキナー型) 分岐型 治療型 分岐型や治療型では、学習者の「誤り」にも意味があるという考え。誤りのパターンに応じて、それを訂正することでむしろ学習が促進されるという考え。 例)分数の足し算で分母もたしちゃう⇒通分が分かってない
実施方法 最近はコンピュータの普及によって、パソコンを使ったプログラム学習のソフトがたくさん出ている。 教習所に筆記の○×試験対策ようのソフトなかったですか?あんなイメージ。
CAI (computer-assisted instruction) その後コンピュータを導入してプログラム学習をより円滑に行おうとしたもの 教授 = 学習活動を支援するためのコンピュータ利用全体をさす場合もある。 (⇒スライドを使用した授業など) 近年のパソコンの普及で再び脚光をあびる。いろいろな教材が開発されている
注意 ティーチングマシンは、教育の機械化、自動化を目指したものではない 個別化の実現をめざしたもの。
最後に 今日3つの主要な教授方法について紹介しましたが、これが一番よい!っていうのは決められない。 なぜなら、生徒は一人ひとり違うから。生徒の個性に応じて、最適な教授方法も異なる ⇒ATI(適性処遇交互作用)の考え方が不可欠 来週につづく
考えてみましょう 小学生から中学・高校、塾や予備校、現在大学で受講している授業も含めて、あなたが分かりやすい、楽しい、好きだな、やる気が出るなどと感じる授業はどのような授業ですか?その授業ではどのような工夫がなされていました(す)か?考えてみましょう。
先週の感想・質問より さきほど、「よい授業とは?」について、意見を聞きましたが・・・
前回の復習 今日3つの主要な教授方法について紹介しましたが、これが一番よい!っていうのは決められない。 なぜなら、生徒は一人ひとり違うから。生徒の個性に応じて、最適な教授方法も異なる ⇒ATI(適性処遇交互作用)の考え方が不可欠 今週の内容につづく
第11講 教授法(2)ーATI:適性処遇交互作用ー 私の師匠である 並木博先生は、 日本における ATI研究の 第一人者です。 並木博先生と共に
例えば・・・ たとえば英語を教える場合 文法訳読式の教授法と会話主体の教授法どちらが優れている? ATIの立場 教授方法Aと教授方法Bのどちらが優れているという比較は無意味。なぜなら、生徒には様々な適性があるから
例えば・・・ 言語性知能という適性を考慮すると・・・ 言語性知能の高い学習者には文法訳読式の教授法の方が有効 言語性知能の低い学習者には会話主体のコミュニカティブな方法が効果的 生徒の適性(個性)抜きにして、教授方法Aと教授方法Bの優劣の比較をしても意味がない。
ATI:適性処遇交互作用 (Aptitude Treatment Interaction)
ATIを図で示すと・・・ 言語性知能 低い 高い 学習結果 文法訳読式 会話主体 適性 低い 高い 学習結果 処遇A 処遇B
ATIを図で示すと・・・ 処遇Aのような教授法 ⇒特恵的教授法(とっけい) 処遇Bのような教授法 ⇒補償的教授法 処遇A 処遇B 適性 高い 低い 高い 学習結果 処遇A 処遇B 処遇Aのような教授法 ⇒特恵的教授法(とっけい) 例)伝統的教授法など 処遇Bのような教授法 ⇒補償的教授法 例)プログラム学習など
A(Aptitude):適性 能力・適性などの認知的能力に限らず、学習成果に関連するあらゆる心理学的個人差を含む (性格特性、認知スタイル、動機づけ状態など) T(Treatment):処遇 狭義には「教授方法」。広義では教師の指導態度や評価方法、教室環境なども含む I(Interaction):交互作用 統計的な交互作用のこと。ある要因の効果の大きさが条件によってことなる。
交互作用とは(統計の復習をかねて) 主効果のみ 交互作用がある 処遇A 処遇A 処遇B 処遇B 適性 適性 高い 高い 低い 高い 学習結果 処遇A 処遇B 適性 低い 高い 学習結果 処遇A 処遇B 主効果のみ (=平均値の差のみ、交互作用がない) BよりAがよいと言える 交互作用がある